終章☆火山弾
「皆さんの計測した結果を元に地図を作成して、大学の研究所に依頼してこれができました」
数日後。
学校で災害時避難経路の地図が配られた。
「火山噴火時のものは、特に昔溶岩が流れた形跡を割り出して、今度またそういう場合に危険な箇所と避難場所を記してあります」
へえー。僕は自分がなんのために方位磁石を持ってうろついたのか、ここに至って合点がいった。
僕の家は幸い危険箇所には含まれておらず、ほっとした。
ぐらぐら。
「地震だ!」
「みんな、机の下に入って!」
先生の指示で生徒は自分の机の下に入った。
どーん!
爆発する音と地響きがした。
「本当に大丈夫なのか?」
みんな不安そうだった。
「今日は早めに帰ります」
みんな深刻な表情でそれぞれの家へ帰った。
「うわあ!!!」
僕は、家の離れがあった場所がめちゃくちゃに壊れてるのを見る羽目になった。
「おばちゃん!おばちゃん!」
返事がない。そんなのってないよ!
「おばちゃん!おば……」
「なんだい、公司」
僕の背後で声がした。
涙と鼻水でぐちゃぐちゃの顔で僕は振り向いた。
「あーあ。亡くなった久志さんが遺してくれた家が……」
おばちゃんはのほほんと呟いた。
「おばちゃん、無事だった!」
僕はおばちゃんに抱きついて、泣き続けた。
「こーし、鼻水拭きなさい。汚いよ」
「でもだって」
「いいから落ち着いて。公民館で災害時の心構えの講習があってて助かったよ」
2メートルもある火山弾がおばちゃんの部屋を直撃したんだ。
いつもおばちゃんが座って編み物していたロッキングチェアは跡形もなかった。
「命拾いしちゃった」
「そんなこと言って……」
「椅子はお気に入りだったけど、また買えばいいし、生きててなんぼだ」
「おばちゃん……」
「今日のなぞなぞ。通るときは閉まっていて、通らないときは開いているものなんだ?」
「今、それどころじゃないよ!」
「いいから、答えて!」
じゃなきゃ、おばちゃんも泣きそうだった。
「通るのは、人?乗り物?」
「いい線行ってるね。乗り物だよ」
「列車!列車が通る時踏切が閉まっていて、通らない時、踏切の遮断機が開いている!」
「正解。冴えてるね」
そこへ父さんと母さんが帰ってきた。
「姉さん、無事だった」
父さんはその場にへなへなと座り込んだ。
「すみ慣れた家と町だけど、他所へ引っ越ししようか?」
「……そうだね」
家族そろって決めた。
おばちゃんは亡くなった久志おじさんの遺族年金と、編み物の仕事で稼いだお金をちょっとづつ貯めていて、僕の両親も働いて得た収入を貯金していた。
「備えあれば憂いなし」
おばちゃんがそう言って、僕の頭を手でかき混ぜた。
僕らは朗らかに笑った。