第三章☆東西南北
方位磁針がくるくる回る。
「ここは磁場が狂っとるな」と理科の先生が言った。
「なぜですか?」と生徒が尋ねると、
「大昔火山活動が活発だった時に溶岩が流れて、その時磁場が狂ったんだと思われる」と答えた。
僕はこの前空振があった時にたたら山が噴火したことを思い浮かべながら、もし、溶岩が僕たちの住んでいる地域にまで流れてきたら怖いな、と思った。
理科の宿題は、手分けしていろんな場所の磁場を調べて、みんなで地図を作るというものだった。
僕は銀色の方位磁石を手に握りしめて帰宅した。
「ただいま、おばちゃん」
「おかえり」
僕のこと見ようともせずに一心不乱に編み物している。
僕は離れの部屋の方角を測った。
「いいもの持ってるね。今日のなぞなぞは、東西南北から集まってくるものはなあに?」
「えっ」
見てないようで見てるんだから。
「えっと、これ?」
方位磁石をおばちゃんの手の上に乗せる。
「違うよ。いいかい?英語で東西南北を考えてごらん」
「East west south north」
「頭文字は?」
「E W S N」
「並べ替えて単語を作って」
僕は方位磁石の文字盤のアルファベットをしばらく見つめた。
「News!」
「そう!ニュースだよ」
「そっかー」
「今日は学校で何があったね?」
「理科の授業でこの辺りに大昔火山活動があって溶岩が流れたらしいって習ったよ」
「そうかい。やっぱりね。今日は庭の花壇の水やりの時に灰色の粉が積もってたよ」
「たたら山の噴火のせい?」
「うん。火山灰だよ」
「怖いね」
「本当にね」
「おばちゃんの部屋は西向きなんだね?」
「いいや」
「えっ?」
「正しくは北西だよ。西向きだったら西日がひどいからね」
「ふうん」
「部屋のどこで測ったんだい?」
「窓枠のところ」
「そこは鉄骨の近くだから、そっちに磁石が引っ張られたんだね」
そうか、磁石だから鉄に引き寄せられるんだ。僕は改めて認識した。
「宿題してくるよ。あちこちで方向調べなきゃ」
「そうかい。頑張っといで」
僕は制服を着替えてから近所に出かけることにした。