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「俺の尋問はこれで終わりだ。最後に言いたい事はあるか?」


グレイにそう言われてムーリャンは言った。


「ひとつ頼みがある。床下で見つけたロイの手帳。あれを返して欲しいんだ」


「やはり気付いていたのか。魔石が壊れる音がしたからそうだろうと思っていたよ。あの手帳は魔塔主様が持っているから直接聞くといい」


グレイがそう言うと、尋問室の扉が開いて入って来た魔塔主が、ムーリャンの前に座ると言った。


「ムーリャン、あの手帳に書かれた薬には素晴らしいものが沢山あって正直驚いたよ。ロイという男もお前も天才だな。こんな事になって残念だ。

これは俺からのお願いだ。あの手帳を俺にくれないか? もしも破っても良いならロイからの手紙はムーリャンに返せる。だが、薬の作り方はこれからの魔塔の課題にしたいんだ。

もちろん、どうしてもムーリャンが返せと言うならば返すしかない。ただし、違法な部分は削除させてもらうけどな」


ムーリャンは考えてから答えた。


「ロイの手紙のところだけ破って渡してくれればいい。残りは魔塔主にやるよ」


「ありがとう。感謝するよムーリャン」


魔塔主は手帳を取り出すと、ロイからの手紙の所だけ丁寧に破りムーリャンに渡した。



それからしばらくして、魔塔からの書簡が各国に届けられた。書簡には、操りの魔法の薬を作った者と使った者の 2名が処刑された事と、悪用しようとした者1名が修道院に送られた事が書かれていた。


ある日王子とアリアローズは魔塔主に呼ばれた。

魔塔主は2人を座らせると、ムーリャンとライエルが毒杯を飲んだ事。そしてエミリアが罪を犯した女ばかりが収容される修道院へ送られた事を話した。


「ローラ様はどうなったのですか?」


アリアローズの問いに王子が答えた。


「ローラは薬の事を気持ちを落ち着ける薬だと信じていたが、王族の紅茶に薬を入れた事は間違いのない事実。よってシークリット伯爵家は不問にし、ローラだけを貴族籍から除名し、王都への出入り禁止にする事になった」


「そうですか」


心配そうなアリアローズを見て、魔塔主が言った。


「そんなに心配しなくても大丈夫だ。ローラの事を世話したいという魔法師がいて、預かってくれる事になっているんだ。これからは平民になるが、ローラもその方が気が楽だと言って喜んでいたよ」


「それなら良かったです。何だかローラ様も被害者の様な気がしていたものですから」


魔塔主は、3人分の紅茶を淹れ直すと言った。


「これで前世で俺が時を巻き戻す原因となった事を潰す事が出来た。これからもその余波はあると思うが皆で力を合わせれば解決出来ると信じている。

アレン、そしてバルトレイ嬢、色々と助けてくれてありがとう」


するとアリアローズが少し恥ずかしそうに言った。


「魔塔主様、そろそろアリアローズと、いいえ、リアと呼んでください」


魔塔主は隣に座っている王子の方に目をやるとすぐにアリアローズの方を向いて笑いながら言った。


「くっくっ、ありがとう。でもまずはアリアローズと呼ばせてもらう事にするよ」


その横では王子が小さく頷いていた。



****


いよいよ学園では卒業式が終わり卒業パーティが開かれようとしていた。


セグルス王以来の王族の卒業パーティとあって、多くの貴族も集まり華やかな雰囲気の中、最後に入場した王子はアリアローズを優しく見つめながらエスコートしていた。


ダンスが終わると王子はアリアローズの前に跪き手を取った。


「アリアローズ、どうか私と結婚して欲しい。私が望むのはいつの世でもアリアローズだけだ。どんな事があっても一緒に生きていきたいんだ。どうかお願いだ、いつまでも君の傍に私をいさせてはくれないだろうか? 」


多くの貴族の前で懇願するようなプロポーズをする王子を皆が見守る中、アリアローズは答えた。


「アレン様、私こそアレン様のお傍にいつまでも置いてください」


その言葉を聞いて王子は嬉しさのあまり、アリアローズの手の甲に口付けを落とした。


その様子を見ていた皆が歓声をあげ、パーティは大いに盛り上がった。



それから1年。ロイシエン王国の大聖堂ではアレン王子とアリアローズの結婚式が行われていた。


真っ白い正装に身を包んだアレン王子の待つ祭壇へとアリアローズが父ダニエルに手を引かれてゆっくりと歩いていく。


アリアローズのウエディングドレスは金糸で刺繍された白い生地の上から光沢を放つ透き通るような絹で覆われた長袖のベルラインドレスで、歩く度に絹が虹色の光沢を放ち、その姿は息を呑む程に美しかった。


アレン王子の元まで進み、ダニエルからアリアローズの手を受け取ると2人は祭壇の前に並んだ。


誓いの言葉が終わると、司祭が2人の婚姻を認め、口付けを促した。


アレン王子がアリアローズのベールを持ち上げるとアリアローズは頬を赤く染めて恥ずかしそうに目を伏せた。


それを見た王子が蕩けるような笑顔で小さく「リア」と囁きながらアリアローズの両頬にそっと手を添えて口付けをした。


その場にいた皆は、自分達までこそばゆい、幸せな気持ちになり、両陛下も、アリアローズの家族も、魔法師達も皆、幸せそうな2人を見て喜んだが、何故魔塔主が泣くほど感動しているのかは誰にも分からなかった。


その後2人は国民にお披露目するためにパレードの馬車に乗り、街に出た。


人々の歓声を受けながら2人は手を振り、アレン王子は時々アリアローズの頬に口付けた。


口付ける度に巻き起こる声援の嵐に浮かれたアレン王子が、アリアローズの唇に長い口付けをして、集まり過ぎた人々によってしばらく馬車が動かなくなるという事もあったが、何とか披露宴も無事に終わった。


その後アレン王とアリアローズ王妃となった2人は、国民に愛され、3人の王子と、2人の王女と、多くの友人に恵まれて幸せに暮らした。




完結しました。

読んでくださり、ありがとうございました。

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― 新着の感想 ―
[良い点] あー、そうかぁ。ムーリャンに幸せになってほしかったけど、やっぱり無理だよね。 面白かったです。
[一言] 魔塔主様の号泣とアレン王子の浮かれ具合に泣き笑いです。 良かったねぇ( ; ; ) 楽しく読ませていただきありがとうございました。
[良い点] 王子の絶望感が痛々しかったけど、時間の巻き戻しにより、より幸福になれるところが物語の良い点ですね。 読後感が良かったです。一気に読みました。 [気になる点] ありません
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