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この世界には4つの国と1つの『魔塔』がある。『魔塔』はロイシエン王国にある大きな湖の真ん中に浮かぶ島の上に塔を建て、その島を唯一の領土とした。


昔、まだ世界に沢山の小さな国があった頃、国と国との争いは激しくなるばかりだった。

その内、力の強い魔法使いを持つ国が次々に他国をじゅうりんしていった。魔法による破壊の力は凄まじく、どの国も沢山の人が死に、悲しみと怒りが世界中に広がって行った。

世界中の人の数が半分に減った頃には、魔法使いもたった3人を残し、他は全員死んでしまっていた。

ここまで来て、やっと、残った4つの国の王と、3人の魔法使いが話し合い、世界は4つに分けられた。そして、魔法使いはどの国にも所属しない、独立した組織である『魔塔』に所属する事となった。

最初の魔塔主達は『魔塔法』を作り、魔法使いを『魔法師』とし、その権利と義務を確立した。魔法師はどの国からも何も強制される事はなくなった。が、依頼は多く、今では魔法師になると忙しさのあまり、最初の 3年は家に帰れない。と言われている程多忙な職業となっていた。



グレイ・ローウィンは魔法師になって10年。元は平民だったが、魔法師になり、縁あってロイシエン王国にあるローウィン子爵家の婿養子になった。


魔法師は『魔塔』からの指示によってのみ働く。

魔法師の仕事は大きく2種類に分けられ、1つ目は各国から依頼される仕事。日照り等の天災に関わることが最も多く、輸送、警護、犯罪者の捕縛等、様々な仕事がある。

2つ目は『魔塔』の仕事。組織を運営させるための仕事も多いが、最も大切なのは、魔力量の多いこどもが現れた時の対応だ。

その子が平民ならば親代わりとなる魔法師が1人選ばれ、教育し、見守る事になる。魔力量が多いこどもが『魔塔』に登録される7歳から学園に入る12歳までの約6年間、選ばれた魔法師はその子に付き添う。

魔法師は少なく、仕事は多い。グレイも各地を飛び回り、家に帰れるのは1年の半分にも満たなかった。

ところが 2年前、妻の妊娠が判明した。つわりで寝込むことも増え、不安そうな妻を見ていると、どうしても傍に居てやりたかった。そこでグレイは魔塔主の元へと向かった。


「魔塔主様、妻のビビアンに子が出来ました。無事に産まれるまで傍に居てやりたいのです」

「それはおめでとう。グレイのところは初めての子だったな。奥さんも不安だろう。仕事の事は希望に沿うようにするから心配するな。それよりも奥さんを大事にしろよ」


魔塔主のありがたい言葉にグレイは感謝し、魔塔主への新たな忠誠を誓った。


その頃『魔塔』にロイシエン王国バルトレイ公爵家の令息が水晶を青く光らせたという報告が入った。 「ユーリスか…」

魔塔主は呟いた。


公爵家からの依頼を受け、令息に魔法を指導するよう、グレイに指示が出された。

グレイは月に2度公爵家を訪れ、ユーリスに魔法を教えた。ユーリスは1度に多くの魔力を使うよりも、細く長く魔力を使うのが得意だった。


グレイは公爵家を訪れる度に、皆の温かさや優しさに触れ、この屋敷の人々が好きになっていった。

そしてグレイに娘が生まれ、1歳の誕生日を迎える頃には、バルトレイ公爵家とローウィン子爵家は家族ぐるみで付き合う仲になっていた。


そんな中、今度はアリアローズが水晶を紫に光らせ魔塔に登録された。

数日後、魔塔にバルトレイ公爵からアリアローズへの魔法師派遣の依頼が届いた。


(どういうことだ?どうして公爵令嬢が魔法を学ぶ必要があるんだ? 俺の他にも前世の記憶を持つ人間がバルトレイ家にいるという事なのか?)

魔塔主は驚いてしばらく考えた後にグレイを呼んだ。

「グレイです 」

「グレイ、ユーリス様の教育は順調か?」

「はい。ユーリス様は最初から魔法を繊細に操れる事ができた逸材です。将来は魔法師を凌ぐ探知の魔法が使えるようになると思われます」

「そうか、なかなか優秀だな。

ところで先日、令嬢の魔力測定が行われた事は知っているか?」

「はい。紫の光だったと聞いています」

「その令嬢にも魔法師派遣の依頼が来た」

「公爵令嬢にですか?」

「そうだ。初めての事だが断る理由もないしな。そこでユーリス様を指導しているグレイに令嬢もお願いしたいのだが、引き受けてくれるか?」

「はい。もちろんです」


グレイは迷う事なく引き受けた。

ユーリスだけでなく、アリアローズの指導ができる事がうれしくて仕方なかったのだ。


アリアローズを初めて指導する日、グレイは改めて挨拶した。

「今日からはリア様も指導させていただきます。魔法を使う事によって、これからのリア様の人生がより素晴らしいものになるようにお手伝い出来ればと思っています。一緒に頑張って行きましょう」

「 グレイ様に指導していただけるなんて、ほんとうに嬉しいです。これからは、グレイ先生とお呼びしますね。よろしくお願いします」


こうしてアリアローズの魔法の勉強が始まった。



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