表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
38/45

38


「お兄様、アレン様に魔法の薬を飲ませたってどういう事なの?」


突然入って来たエミリアに驚いていると、エミリアは怒り始めた。


「なんで黙っているの?私は確かにお兄様が王子に薬を飲ませて、私と婚約するように囁いた話を聞いていたのよ」


ライエルはそんなはずはないと思った。


「この部屋は絶対に音が漏れないように作られているんだ。それなのにどうして…」


エミリアは呆れたように言った。


「お兄様は何も知らないのね。以前お母様が帰って来ないお父様の浮気を疑って、この部屋の音が聞けるように隣の部屋の壁に穴を開けたのよ。

私はこどもの頃にお母様の後をこっそりつけて、お母様が隣の部屋でここの様子を聞いているのを見た事があるの。

お兄様、私は学園長から謹慎を命じられてからずっとこの家に閉じ込められていたのよ。する事がなくて退屈だったから自分の部屋から出れるようになってからは、時々この部屋の隣でお兄様が誰と何を話しているか聞いていたの。

だからお兄様は私のお願いは何でも聞いてくれるはずよね」


(エミリアは何をどこまで知っているんだろう)


ライエルは驚いてしばらく動くことができなかった。


エミリアはソファーに腰掛けると、2人が話してくれないのなら本当のことかどうか王子に聞くと言い始め、ライエルとムーリャンは仕方なく薬の話をした。


するとエミリアは嬉しそうに言った。


「今度は私に試させてくれないかしら?

私がその薬をアレン様に飲ませて、効果があればお兄様が何か間違えていたという事になり、効果が無ければムーリャンさんの薬は駄目だという事になるでしょう?」


ムーリャンは、エミリアに薬を渡す気はなかったが、誰かに話されるのは困る。


「エミリア嬢、申し訳ないがあの薬は今は持っていないし、仕入れるのも難しいんだ」


ライエルもムーリャンに味方して言った


「エミリア、ムーリャンさんがないと言うのだから無理を言ってはいけないよ。それに王子に飲ませるなんてエミリアには無理だろう」


「私に無理かどうかやってみなければ分からないでしょう?私を馬鹿にして除け者にする気なんでしょう? そんな事許さないわ。私に薬を渡さないなら、私はこれからすぐにお兄様達のやった事を手紙に書いてアレン様に渡すわ。それでもいいの?」


脅すように言うエミリアをムーリャンはジロリと睨んで言った。


「エミリア嬢、それでどうなるか分かって言ってるのか?それをすれば、ライエルは捕らえられて牢の中だ。そしてその家族が無事でいられるとでも思ってるのか?お前も一緒に捕らえられて首を刎ねられる事になるんだぞ!」


その迫力にエミリアは泣き出してしまった。慌てたライエルがエミリアの側に行き庇うようにしながら言った


「ムーリャンさん、すまないが今日はもう帰ってくれないか。エミリアも本当は分かってるんだ。私がちゃんと言い聞かせるから」


「分かったよ。そのお嬢ちゃんの事は頼んだぞ。勝手な事をすれば俺たち全員終わりなんだ」


ムーリャンはライエルにも腹が立ったがここに居ても仕方ないので宿に帰る事にした。



その夜からエミリアは操りの魔法の薬が欲しくてその事ばかり考えるようになった。


(操りの魔法の薬さえあればアレン様を私のものにできるはず。あのアリアローズなんかより、私の方がずっと綺麗でアレン様にふさわしいんだもの。何とかして手に入れる方法はないかしら)


考えた末にやはり兄に頼むしかないと思ったエミリアはライエルの執務室に押しかけて薬が欲しいと頼んだ。だがライエルは持っていない物はどうしようもないと言う。


するとエミリアは2人でムーリャンを脅して薬を仕入れさせようと言い始めた。


「アレン様に飲ませた薬をお兄様に渡したのはムーリャンさんなんでしょう? 薬はなんの効果もなかったんだもの、お兄様は何もしていないのと同じだわ。

でもムーリャンさんはお兄様に違法な薬を渡したのよ。脅されて困るのはムーリャンさんの方だわ」


ライエルは困った顔して言った。


「エミリア、私は確かに王子に薬を飲ませたが、何も起こらなかった。今はそれで良かったとホッとしてるんだよ。

やはり薬で誰かの心を捻じ曲げるのは良くない事だ。それに人を脅してなにかさせようとするのも良くない事だろ?

ムーリャンさんは私達兄妹の事を思って薬を譲ってくれただけで、飲ませたのは私なんだ。頼むからもうそんな事を考えるのはやめて欲しい。王子との結婚なんて所詮無理な事なんだ。

エミリア、王子にはバルトレイ公爵令嬢という婚約者もいるし、私たちは男爵家の人間なんだ。相手は王家、これ程の家格の違いはどうやったって埋める事は出来ないんだよ」


エミリアは自分の味方になってくれない兄に失望し、腹が立ったが兄ではもうダメなんだと分かった。


「分かったわ」


(お兄様はもう役に立たないわ。誰か他の人を探さなくては)


エミリアは執務室を出て行った。



宿に帰ったムーリャンはエミリアの事を考えていた。


(あの女に話を聞かれたのはまずかった。例え薬を分けてやったとしても上手くいくとは思えないし、あの女の事だから何かあればすぐにでも俺を裏切るだろう。

だったら裏切れないようにすればいいって事か? それなら何とかできるかもしれないな。だがエミリアに何かあればライエルが悲しむだろう……仕方ない、エミリアの事はライエルに任せよう。それよりもあの薬が効かなかった原因を考えないと)


近いうちに薬を使って効果を確かめようと思いながらムーリャンは眠りについた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ