24 前世 ( 5 )
解除の翌日、王子はリクに起こされた。
「おはようございます。王子、朝食を食べに行きましょう」
「リク、そろそろ名前で呼んでくれないか?」
「分かりましたよ。アレン様」
リクは王子を食堂に連れて行きながら、魔塔の事について教えてくれた。中庭にある花園の花は魔塔主が植え替えている事。夕食だけはできるだけみんなで揃って食べる事。魔法師の部屋は1階と2階にある事。色んな話を聞きながら食堂に着くと、遅すぎたのか他には誰も居なかった。
カウンターに置いてあるパンや果物をお皿に取って、大きなテーブルにリクと並んで座り食べ始めた時、突然、今までぼんやりしていた王子の頭の中に、抑え込まれていた記憶がなだれ込んで来た。
「ウワー!!!嘘だ!.....やめてくれ!….嘘だ!!……」
王子は頭を抱えて叫び出し、慌てて飛んで来た魔塔主によって眠らされると2階の王子の部屋に寝かされた。
リクは王子の部屋まで来ると心配そうに魔塔主に聞いた
「アレン様は大丈夫でしょうか?」
魔塔主はリクには王子に掛けられた魔法を解除する事は話していたが、それが操りの魔法だとは伝えていなかった。
「アレンはしばらくの間苦しむだろう。そのまま放っておくと心が壊れてしまうかもしれない。リクには申し訳ないが、しばらくの間、アレンの側に居てやってくれないか?
そしてアレンが先程のようになったら眠らせてやって欲しいんだ」
眠っている王子とそれを悲しそうに見つめる魔塔主を見ているとリクは自分に出来る事は何でもやろうと思った。
「分かりました。私も今日からこの部屋に移り、アレン様がおかしくなったら眠らせます」
「無理をさせてすまないがよろしく頼む」
そう言うと魔塔主は頭を深く下げた。
リクはその日から王子の部屋で仕事をし、王子に食事を食べさせ、王子の部屋で眠った。王子はその後も、苦しさのあまり暴れたり叫んだりしたが、その度にリクによって眠らされた。
魔法が解除されて10日過ぎた頃、王子はリクが自分の部屋にいる事に気付いたようで不思議そうに聞いてきた。
「リク、どうしてここにいるの?」
「ここが2人の部屋になったからですよ」
「そうか」
その会話があってから、王子は夕飯を皆と食堂で食べるようになったり、リクの仕事を少しだけ手伝うようになった。だが、まだぼんやりと遠くを見ている事が多かった。そして、
「リア...」
時々、涙を浮かべながら小さな声で呟くのだった。
今日は予定のない休日だったので、何話も投稿できました。
読んでくださり、ありがとうございました。