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23 前世 ( 4 )

5日後、再び魔塔を訪れた王子は、馬車を帰らせるとリクに案内されて、塔の中へと入って行った。塔に入ってすぐ左側にある廊下を登ろうとすると、


「今日はこちらですよ」


リクに言われた方を見れば、正面に以前来た時は無かったはずの扉が現れていた。


中に入ると4, 5人の魔法師が忙しそうに働いている。中央には花園があり、吹き抜けの天井から入る優しい陽射しの中でたくさんの花を咲かせていた。


「中庭です。この花園が塔のちょうど真ん中になるんです。王子が前回登られた廊下は、お客様用なんです。魔塔は、この花園のある所から各階、各部屋に分かれ、廊下で繋がっているんです」


花園を取り囲む様に作られた長い廊下は、そのまま長い長い坂となって緩やかに登っていく。その廊下に沿ってカラフルな扉がいくつも並んでいた。

前回登った廊下と違い、明るく、開放感のあるようすに王子は思わず呟いた。


「これは凄いな」


思わず出てしまった言葉にリクはにっこり笑うと部屋に案内してくれた。


王子の部屋は2階だった。


「今日はここでお身体を休めてください。夕食もこちらにお持ちしますね。明日の朝食は魔塔主様と一緒と聞いていますのでそのつもりでお願いします」


色々考えてみても仕方なく思え、王子は夕飯を終えてしばらくすると、いつの間にか眠ってしまった。


次の日の朝早く目が覚めた王子の部屋にリクが迎えに来た。

3階にある中庭に面した部屋に案内されると、そこには魔塔主が座って待っていた。


「今日から魔法の解除を始める。食事をしながらで申し訳ないが説明をさせてくれ」


「構いません。よろしくお願いします」


「操りの魔法を解除する方法は今の所1つしかない。相手に深く眠ってもらい、身体の中の魔法の痕跡を辿りながら解除の魔法を掛ける。

解除できる自信はあるが、絶対とは言いきれない。1回では無理で2回目の解除も必要になるかもしれない。質問はあるか?」


「私は今日どれくらいの間眠るんでしょうか?」


「今日は夕方まで眠ってもらおうと思っている。状況によっては明日までになるかも知れない」


「分かりました。よろしくお願いします」


「では、部屋へ案内する」


魔塔主の案内で、入って来たのとは反対側の扉を開けると、そこには野花の咲く新緑の草原が広がっていた。


「春の草原にしてみました」


いつの間にかリクもそこに居て、楽しそうに笑っている。


(リクはいつ来たんだろう)

と思っていたら、草原の中に大きくて寝心地の良さそうな寝台が現れた。


「いつの間に……」


「さあ、ここで休んでくださいね」


リクに言われ横になった。

「どうですか?落ち着きますか?」


寝心地に不満はなかったし、草原の風は気持ち良いが、やはり、外は落ち着かない。


「部屋の中の方が良いみたいです」


「分かりました。開放的過ぎますもんね」


リクがそう言うと、草原は消え、室内になった。魔塔主が笑顔で言った。


「リク、アレンは草原で寝た事がないだろうからな。俺は草原のお陰で落ち着く事ができたよ。アレン、ここで解除を始める。1度始めたら俺は他の事が何も出来なくなるから、リクにはアレンが深く眠れるようにしてもらったり、何かあったら対処してもらう事になる。何か質問はあるかい?」


アレンは考えたが分からなかった

「ないと思います」


「じゃあ始めよう。最初にリクに眠る魔法を掛けてもらうから身体の力を抜いてぼんやりしてて欲しい」


リクがアレンのおでこに優しく手を置くと、アレンはすぐに眠ってしまった。

魔塔主は寝台のすぐ側に椅子を置いて座ると、アレンの左手を両手で包み込むように握り、祈る様に目を閉じた。


その後リクが部屋に灯りを付けるまで魔塔主は動かなかった。


「もうそんな時間か」


顔を上げ、リクを見ながら魔塔主が言った。リクが心配そうに聞く


「いかがでしたか?」


魔塔主は満足気に答えた


「上手く行った。解除できたよ」


「良かった。アレン様を起こしますか?」


「いや、自然に目覚めるのを待った方がいい」


王子が目を覚ますと、そこはまだ大きな寝台の中だった。頭元に1つだけ小さく明かりが灯り、すぐ側に水差しとコップとベルをのせた丸テーブルがおいてある。王子はゆっくり起き上がると、水差しの水を飲んだ。

そこにセシルが現れて言った


「アレン、気分はどうだ? どこか痛い所はあるか?」


「大丈夫みたいです。今は夜中ですか?」


「そう、夜中だが、お腹が空いているなら何か持ってくるが」


「大丈夫です。少し頭がぼんやりするので、このまま朝まで横になっています」


「分かった。何かあったらそこのベルを鳴らしてくれ」


(まだ眠った方がいいだろう)

魔塔主は部屋を出ながら王子にそっと眠りの魔法を掛けた。


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