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20 前世 ( 1 )

前世での話。


アリアローズが殺されてから2年経ち、王子はエミリアとの婚姻を控え、王太子になる為の準備をしていた。

エミリアの妃教育が進まなかったうえに、公爵令嬢が殺されるという恐ろしい事件も重なったため遅れていた行事がやっと進み始めたところだった。


忙しさのせいか、王子は2年前から頭痛に襲われるようになり、それは徐々に酷くなっていた。何人もの医者に見せたが原因は分からず、薬で何とか抑える事しか出来なかった。


その日、国王に呼ばれた時も頭痛が酷く、薬を飲んで王の執務室に向かった。


「アレン、度々薬を飲んでいると聞いているが、良くなる様子はないのか?」


「何とか薬で抑えてはいますが、最近は痛みが強くなってきているようです」


「王太子になる前に魔塔主への挨拶が必要な事はお前も知っているだろう。もう少し先でも良いかと思っていたんだが、実は王族が原因不明の病にかかった時も魔塔主に会いに行く決まりになっているんだ」


「魔塔主様は病気も治せるのでしょうか?」


「この世界が4つに分けられた時の話は知っているだろう?」


「勿論です」


「これは魔塔主と、王族とそれに連なる者にしか知られていない話なのだが、あの戦争は、ある国の王が魔法によって操られてしまった事が原因のひとつなのだ。

その王は操られているとは知らぬまま、魔法使いを従わせ、人々を殺し、多くの国を滅ぼした。

最初に魔塔を作った魔法使い達が、その王を殺す事でやっと戦争が終わったのが、本当の話なんだ」


「私のこの痛みは、魔法のせいかも知れないと、父上はお考えなのですか?」


「私にもそれは分からん。だが、もしも魔法のせいだとしたら、それを調べる事ができるのも、解除する事ができるのも魔法師だけなのだ。

国を統べる者に万が一の事があってはならない。もう2度と同じ過ちを犯さないための決まりだ。

既に魔塔主には連絡してあるから、呼び出しが来たらすぐにマーカスと行きなさい」


「かしこまりました」

王の部屋を出ると、王子の側近マーカスが待っていた。



その頃エミリアは男爵位から伯爵位へ陞爵したクルージュ家に戻り、婚姻の準備をしていた。



魔塔主からの呼び出しはすぐに届けられ、2人は魔塔に向かった。

王宮から馬車で2時間程走ると、木々に囲まれた大きな湖に着いた。湖の真ん中には島があり、その島に魔塔は建っている。魔塔はまさに巨大な塔で、窓はなく大きな門が 1つ付いているだけだった。


王子とマーカスが湖の縁に立ち、船も橋もない湖をどうやって渡ろうかと考えていると、突然目の前に白い橋が架かり、橋の向こうから馬が駆けて来るのが見えた。

2人の所まで来ると、馬から降りた魔法師は頭を下げて言った。


「魔法師のリクと申します。お迎えにまいりました」


リクの案内で橋を渡り、大きな扉の前に着いた。リクが何か呟くと、王子、マーカス、リクの3人はもう塔の中に入っていた。


「「いつの間に?」」

2人とも周りを見回す。


後ろには今入ってきたはずの扉があり、目の前には壁、左右にはそれぞれ緩やかに登っていく廊下が続いている。リクが手で左を指しながら言った。


「この廊下を登った1番上、突き当たりの部屋で魔塔主様がお待ちです」


2人は礼を言うと、塔の内壁沿いに続く長い廊下を登って行った。

登る途中、塔の中央側の壁沿いには幾つもの小さな扉があったが、誰にも会う事はなかった。


廊下の突き当たりには両開きの扉があり、王子が触れようとすると、待っていたかのように静かに開いた。


「よく来たな、アレン王子、そしてマーカス。中に入れるのは王子だけだ。すまないがマーカスは他の部屋で待っていてくれ」


魔塔主がそう言うと、目の前に扉が現れ、マーカスは吸い込まれるように入っていった。


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