第59話 大衆化するということ。男性と女性の選択肢の違いなど。小説投稿サイトを語る。その2
前回の続きになります。
□なろうなら異世界恋愛一強
丁度なろうが「異世界転生転移」を隔離した頃だと思いますが、あの時からなろうはいかに「女性ユーザーを取り込むか」という点を重視し始めたと思われます。こちら以前記しているので本エッセイをご覧下さい。最下部に該当話数を載せておきます。
小説の世界における最強の大衆、消費者とは誰か。
それは「女性」です。
異論はあるかもしれませんが、消費者として考えた時、男性は小説以外にお金を落とす傾向がある。あまり言い切るのもなんなんで「やや女性優位」としておきます。
さて、なろう以外の小説投稿サイトを見ると、女性ユーザー向けのものがかなり多い。トップページにBL特集とかコンテスト告知とかが掲載されてたりして、明らかに女性読者を意識したつくりになっている。
これには俺も苦笑い。
実際はドン引きです(笑)
体感ではありますが、以前どちらかと言えば「男性ユーザーが多かったなろう」は、女性読者獲得の為「よそのサイトが得意としていた分野」を全面に押し出す作戦に出たと思われます。
結果「小説家になろう、読もう」というサイトは「異世界恋愛一強時代」というふざけた状態になりました。ですが実はこれ、とても簡単な対策があるので正直どうでもいい。
とにもかくにも女性優位なのは「創作、小説」の世界においてはまあまあ当たり前の話だと私は考えます。
簡単に理由を説明します。
極端に男性向け、女性向けな「ご都合主義な作品」は双方まあ読まないので除外していい。中には面白い作品もありますが、とりあえず外します。
しかし「女性向けの作品を男性が読むか?」となったらあまり読まない。一方男性向け作品の場合、例えば「バトルもの」などは女性も読むでしょう。非常に単純な話なのですが、女性の方が選択肢が多いのです。
少年、青年マンガを楽しむ女性なんて珍しくないし、むしろターゲットだったりします。逆に女性向けな「少女マンガやレディースコミックを男性が読むか?」となれば、かなり限られた話になる。小説も同様で「あまりに女性視点」だと、男性読者はついていけない。
趣味などにどれだけ時間とお金を使うかはともかく、男性側はアクティブなスポーツなどの選択肢が多い。女性からすればファッション的なこと含め別な部分でお金がかかるので「無料で済むなら無料がいい」と割り切る方が多いのでは? と、私は考えています。
でないと小説投稿サイト、なろうの一番人気、というか「事実上の支配層」が「異世界恋愛」という、
「何そのマニアックなジャンル」
といったものになるはずがない。
小説というビジネス全体で見た時に「異世界恋愛が占める割合いくつだよ」と。なんかおかしなことになってねーか? と、まあ思うわけです。
ちなみになろうは「異世界恋愛一強」状態が長く続き明らか女性優位。カクヨムは男性ユーザー優位なのかな? という感じです。
私のような「万人向け」の書き手からするとあまり偏って欲しくはありませんが、実は特に問題ありません。大体仕方ないんです。ビジネスですし「古今東西恋愛が最強ジャンル」なのは事実なので。歴史に学ぶ必要性すらないぐらいな現実です。
□何を読んでも恋愛小説として受け取る読者さん
皆が皆というわけではもちろんありませんが、女性読者の特徴を一つ上げます。以前も記しましたが、ある有名な女性作家さんの言葉を紹介します。
「何を読んでも恋愛小説として読んでしまう」
一言一句同じではありませんがこんな感じのことを仰っていました。女性読者さんにはこういう方結構いるのではないでしょうか。それでいいし、我々にはどうしようもありません。我々書き手が何を書こうと「この作品は恋愛小説だ!」と仰るならそれでいいじゃないですか。読者さんの自由です(笑)
□情報化社会で大衆化するということ。ただし少子高齢化
小説投稿サイトは情報化社会の一面です。ネットワークの進化により誰でも簡単に作品を発表出来るようになった。
ーーそう、全て無料で。
結果、出版社は対応を余儀なくされました。
「アマチュアが作品をネット上に公開している……才能ある新人もいるだろうし、お金になるかもしれないのになんでそれを無料で……新人賞に応募してよ……」
と、嘆きたくもなったでしょうがとにかく対応せざるを得ない。しかしこれには二つのいい側面、特徴がある。
・育成の手間が省ける
「才能ある作家が自然と育つな。楽だ」
・見つけにくい作家がすぐ見つけられる
「普通埋もれそうな作家がなんか人気ユーザーになってる。ラッキー」
とまあ良く捉えればこんな感じ。
色々な出版社がなろうを始めとするWeb小説を書籍化しているのは、時代に対応しただけの話。そして今でも「非公開系のコンテスト」は普通に存在します。カクヨムさんなんかは自前でサイトを作ったケースですね。
KADOKAWAさんはなろう発の作品を普通に書籍化していますから、共存共栄という姿勢だと思います。
でまあアマチュアの書き手は「端からプロになる」なんて考えてなかったりしますよね。日記、ブログ、SNS、テキストサイトの延長で小説を書いてたりします。
要は「趣味」や「練習がてら」作品を公開し投稿している。気がついたら小説投稿サイトが主戦場になり、コンテストもこちらがメインになっちゃってる気がしないでもないですが(笑)
さて、多様な作品が公開されるのはいいとして、いかんせん作品数だけは時間と共に増えていく。
「読み手ユーザーが増えることはないのに」
その結果、テンプレ流行りお約束に人気が集まり、大半のユーザーは「空気化」する。これが現実です。
□大衆化することの本質
「なんで絵画を例に出したの?」
と、不思議に思われた方いるかもしれませんが、音楽でもなんでも大衆化するということの本質は変わりません。
「分かりやすく、伝わりやすく、読みやすい」
音楽なら3つ目は「聴きやすい」ですね。映像作品なら「観やすい」です。どんな芸術、ジャンルもこの三つの要素を満たしていないとそもそも大衆化しません。
分からないものは分からないので。
理解出来ないと話にならない。
絵画を例に出したのは説明しやすく伝わりやすいと判断したからです。
で、皆さん一体どんな作品を書いてますか。「分かりやすく、伝わりやすく、読みやすい」を満たしていますか。それで数字が伸びないなら、
「小説投稿サイトにいる読者が求めるものではない」
「そもそも見つかってない」
と、これまた当たり前の話になります。
実力なんてあまり関係ありません。
実力がないのは困りますが、実力があっても大して変わりません。人気作品には特殊な能力が必要なんです。
「小説投稿サイトのWebコンテンツ」≠「小説」
なので、別の能力が必要だったりします。まあ普通に作品がウケて人気出るケースもあるとは思いますが。
まだまだ実力不足な書き手ユーザーさんはともかく、実力があるのに「ない」と思い込む方がいるのは一人の「読む系企画者」として非常に困るのです。サイト内での人気と実力は別物なんですが勘違いしてるユーザーさんいるんです。
「いやあなた実力者ですよ?」ってなんで私が励まさないといけないんですか(笑)
私はプロの読者兼なろう推理文芸日間一位、総合ランキングから総なめにしたユーザーです。ノリだけでコンテストに参加した作品が、なぜか一次や中間選考通過してしまった私が言うんだから間違いないんですよ。たぶん(笑) 大丈夫です、普通に疑ってかかって問題ありません。
全部事実だけど。
ちなみにプロの読者は皆さんも同じです(笑) 図書館使ってようが関係ありません。
小説投稿サイトはスマホユーザーがとても増えました。今はもう半分越えてるでしょう。あの小さい情報端末で暇潰しに読む読者さんが結構いるわけです。もちろん本気で楽しんでる読者さんもいるでしょう。ですがスマホユーザーは多い。
で、書き手ユーザーなあなた、まさか「写実主義」とか「印象派」とか「抽象画」とか「前衛的」に該当するような作品書いてないでしょうね。読者に親切な作品書いてますか? 刺さる、分かりやすい、期待に応える作品書いてますか? 先に記した通り、
「ポスター」「イラスト」「広告」
例外はなんにでもありますが、Webや小説投稿サイトにおいてはこれが正解です。「タイトルやあらすじ、タグ」という「広告」を疎かにするということは、
「分かる奴にだけ分かればいい」
と開き直ってるのと変わりません。
それ私と同じスタンスです。
私はポスターやイラスト的なものは「基本」書きません。元が「お笑い、文芸勢」なので、そんな分かりやすい作品書けないんですよ。
ラノベとかWeb小説の文化とか全然分からない。
「楽なので小説投稿サイトを使っている」ということです。
私、前に「非公開系の公募にまともな作品書いて参加しろ」と記しています。ええ、これ自分に向けて言ってるんです(笑) 私以外にも当てはまるユーザーさんたくさんいそうだし(笑)
一方「片手間ランキング攻略」とも記しています。つまりやるってことですね。成功するかどうかは知りませんが。
□達人たちの大喜利大会。我々には基本関係ない
小説投稿サイトには「テンプレ流行りお約束」を「魔改造」する達人が揃っています。ただテンプレ流行りお約束書いてるわけではない。つまりこの手のユーザーさんは、
「ポスター、イラスト、広告」
という「小説投稿サイトという、一部の大衆向け」に特化された作品の達人です。他方、なろうの「異世界恋愛一強」という現実から見ても「文芸の達人」ではない。たぶん(笑)
あくまでも小説投稿サイトの読者ユーザーさんに対応する達人である。こういうことです。表面上はね。実際は色々書ける方多いと思います。
では、先に結論記してしまったので私の気持ちと見解記します。
・小説投稿サイトでウケる作品には偏りがある。我々には向いてない、諦めましょう
・つまり、あなたの作品の想定読者は小説投稿サイトにはいないと考えた方がいい
・なろうの異世界恋愛一強とかどういうことだ。昔は違ったぞ。変わりすぎだ!(笑)
・サイトの読者に合わせたランキング攻略は片手間でやれ
・腕に覚えがあるならコンテストで勝負しようよ
「小説投稿サイトの大衆は我々の作品を求めていない」と考えた方がいいでしょう。だったら他で勝負しません?
仮にジャンルが違っても、私はそこで勝負したい。あまりにジャンル的な隔たりがあると困りますが(笑)
一応片手間でランキング攻略はしますよ。ですがランキング攻略してハイスコア出す、それはゴールではない。
だって無料だし。
というのが私の考え。
ライトなWeb小説が更にライトなスマホ小説になり、それを真似したのか完全に迷走してるユーザーさんいましたが、スマホ小説には相応しい技術が必要です。小説投稿サイトの達人を舐めてはいけません。ただ手を抜いてるわけではない。下手に真似したら大怪我します。というか目先の利益を追いすぎてはいけません。
というわけで皆さん「上を見て戦うなら」しっかり準備して創作と向き合って下さい。
「好きに描かせろ、趣味でやってる」という方は、もちろん自由です。実は私も大して変わりません。
好きに描いて、戦いに挑む。
これが「表現者」なので。
□〆に
小説投稿サイトで人気ユーザーになるには、そのサイトに合った「ポスター、イラスト、広告」的な物を用意しなければならない。
言い換えますね。
「全力でサイトの読者に媚びろ」ということです。
人気ユーザーになりたいなら止めませんが、意味ありますかね? なんの為に小説書いてるんですか? サイトを攻略する為に小説書いてるんですか?
一度考えてみて下さい。
人気ユーザーになりたい気持ちは理解しますが、その為に小説を書き始めたわけではないですよね? いやもちろん皆さんのこと詳しくは知りませんが(笑) 繰り返しますが、私は片手間でしかランキング攻略しません。失敗しようが成功しようが、知ったことではない。
本質は「長編コンテスト用の作品を書く」なので。
とまあ長くなりましたがこんな話でした。
参考になれば幸い。
ではではまたの機会に。
・本エッセイの17~20話が、なろうが女性ユーザーを意識して取り込んだのではないかという話題になります。




