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教室

教室に着くや否や、空気がどっと湧いた。ゲラゲラ笑う者、くすくす笑う者、ガン無視する者、まぁ反応に多少の違いがあれど概ね笑ってくれた。テスト直前で切り詰めていた(であろう)空気は和んでいる。正直無反応が一番辛いから反応があるのはありがたい、恥ずかしさが紛れる。でも恥ずかしいものは恥ずかしい。自分の格好が見えなくてよかったとつくづく思った。居心地が悪さに悶々としながらコハクは席へ向かった。ちょこんと座ると右隣の机からペンを1本拝借した。直後、隣から、「おい」と声がする。声の呼ぶ方を見ると男の子がコハクに左手を差し出してくる。コハクの格好に唯一無反応だった男の子だ。とりあえず、右手を彼の手に乗せようとすると勢いよく払い除けられた。

「返せ」

「レイヤ君。か〜して♡」

わかりやすく嫌そうな顔をするのは林道レイヤ。中性的な見た目をしているが男だ。ボサボサの黒髪を整えたらきっとイケメンになる。更にいつも学生2位をキープしている。目の上のたんこぶのような奴だ。嫌味の1つや2ついや、3つは言いたい。

「普通に傷ついた。こっちは朝から不幸のオンパレードなんだよ。少しは不幸のお裾分けしないとやってられないよ。」

自分でも逆ギレとわかっている。がここは譲れない。なんせコハクは筆記用具を持っていないから。と、ちょうどいいタイミングで先生が教室に入ってきた。「席ついて号令」と短く一言。レイヤは舌打ちをし正面を向く、席に着いてない数名が自分の席へそそくさと歩いた。全員が席に着くたことを確認すると学級委員長が号令をかける。

 コハクは今日だけ見るととても不真面目な生徒だが年間を通して見ると優等生だと思う。身だしなみはいつも整っているし、スカートの長さも校則通り膝下10センチを守っている、髪型もショートボブで染めてもいない。遅刻もしたことも今まではないし、授業中に寝たこともない。さらにテストは上位3位から落ちたこともない。(上がった事もないが)そのため今は現代文の解答欄を埋めるので忙しい。さくさく解いていると教科書に載ってない問題文が現れた。面倒だが読むしかない。タイトルは「鬼ノ館」とある。鬼ってなんやろ?と思いつつ、本文を読みし進めていく。

 

 まず皆さんには鬼について説明しましょう。皆さんは鬼とは何か知っていますか?ユニコーンの角に牛の頭、虎の皮でできた服を身に纏う人型の妖怪の事です。非科学的ではありますが、二百年前は存在すると広く信じられていたんですよ。平安の象徴の神と対を成す恐怖の象徴の鬼。その為か【鬼】は妖怪としての意味もありますが『     』といった意味の冠詞としても使われるようになります。私が学生の頃は鬼使われていたんですよ。今は死言になりつつあるので皆さんが知らないのも無理はないかもしれません。時代の流れは早いものですね。きっと今の子は『鬼ノ館』を知らないのでしょうね。

 私が学生だった頃です。この方北第一中等学校で知らない人はいない程有名な噂だったんです。。。

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 本文はもっと続いていたが具体例は読み飛ばす主義なので問いに移った。文字の読み方だったり、鬼を具体的に説明した文を選べだったりと簡単な問題だった。

 問① 以下の漢字は読みを片仮名で、片仮名は漢字でそれぞれ書きなさい。

 妖怪 『ヨウカイ』  ユニコーン 『一角獣』

 問② 問題文に漢字の誤用があります。それを以下に書き正しい漢字に書き直しなさい。

 ✖︎『対照』 ○『対象』

 問③[私が学生の頃は鬼使われていたんですよ]と文中にあるがここでの鬼はどのような意味で使われているか以下の四つから選び全て記号で答えなさい。

❶恐怖 ❷強さ ❸沢山 

『❸』

 問④「鬼」を冠詞としての意味で五十字以内の作文をしなさい。

 とある。少し悩んだが今日の出来事を書くことにした。

 『私は優等生ですが、今日は寝坊してしまい兄に馬鹿にされながら起きました。あの時の兄は鬼のようでした。』

 その後も適当に解いていくと時間が十分ほど時間を残して全て解き終わった。暇だったので問題の続きを読むことにする。

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 鬼ノ館。それは人喰い鬼が住む大きな家です。そこに住む鬼は夜になると館から出て人を襲い、館へ連れ帰り食べるそうです。そのため、鬼を見た人は沢山いますが、館に足を踏み入れて帰ってこられた者はいないそうです。そのため鬼の容姿については沢山の文献がありますが『鬼ノ館』については謎に包まれています。ですが、私は『鬼ノ館』を見たことがあります。

 あれは霧雨の降る十月三+一日のことです。友達と私は肝試しに森の中を歩いていました。すると立派なお館があったんです。これが『鬼ノ館』だったとは私はわかりませんでした。初めは感動したのです。大きさもさることながら、デザインもよく二階の中央に大きな窓ガラスは今まで見たもので一番美しかったです。が、事態は一変します。突如空が光ったんです。ちょうど二階の窓を見ている時でした。窓の奥にいたんです。鬼が。空が光った三秒後でしょうか、ゴロゴロと空が鳴き、たちまち暗くなって雨が強くなってきました。友達は館の中に入って行きました。私に何も言わず、吸い込まれるように。私はいきなり鳴った雷への恐怖のあまり館を背に走り出しました。友達に何も声をかけれずに、一目散に。私は後悔しています。友達に一声掛けていれば未来は変わっていたかもしれないのにと。雨が上がって再び森に行きましたが、いませんでした。ありませんでした。あの日から友達と『鬼ノ館』は行方不明です。

 チャイムが鳴る。チャイムが鳴る。「ペンを置けぇ〜解答用紙集めろぉー」先生の低い声が教室中に響く。コハクは解答用紙を裏にして前の席の生徒に渡す。後味の悪い文章を読んだせいだろうか、心がモヤモヤする。隣から声がする。おい…おい。と、横を向くとレイヤがいた。左手をコハクに差し出してくる。とりあえず、右手を彼の手に乗せようとすると勢いよく払い除けられた。「返せ」と一言。

「可愛い乙女が困ってるんだから、ペンの1本ぐらい貸してよ。」

「黙れ盗人。君にペンを貸して欲しいと頼まれてない。」

「そりゃ、そうでしょ。貸してなんて頼んでないし。」

「弁明の余地無しか。檻の中で1年ぐらい反省してろ」

「レイヤ君、モテないでしょ。」

「君のような盗人にモテることは重要なことか?」

「捻くれてるね。」

「変人から見た常人は変人に見えると言うし、捻くれた変人から見た常人はさぞ滑稽に見えるのだろうな。」

コハクはレイヤを無視して席を立ち上がる。決して逃げているわけではない。戦略的撤退だ。背中から「逃げるのか盗人」と聞こえたが無視だ。教室を出て保健室へ向かう。テストとテストの間は15分の小休憩がある。これを利用して。ジャージを借りに行く。流石に雨に濡れたパジャマでは体が冷え、風邪を引きそうだからだ。決してフラグなんかじゃない。たとえフラグだったとしても回収する気は微塵もないが。

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