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伊勢湾は異世界の内に入りませんよね、じゃあ伊勢海で。~妖怪ボラ女と釣り名人のすれ違いスタイリッシュ釣り竿スローライフミステリーグルメツアーはやっぱり釣り好き優遇システムでした~

作者: 八代 眉 /やしろまゆ
掲載日:2019/07/01

 とある岩場の磯辺に、男女二人の姿。

 蜜月の釣りデートにも見えたが、どうも事情が違う様だ。

 

「シーバス? 俺、スズキだけど」


「実はウチな、ミドルネーム、スズキなんよ!」

 女の瞳がぱっと見開き、輝き出した。


(鍵、釣ってくれはる人、やっと会えたに)



 伊勢湾の釣人達の間で密かに伝わる、都市伝説の女。

『魅惑の三重みえ弁オリエンタルミックスビューティー・

 お一人様シーバス釣客限定逆ナンパ一本釣り妖女』

 彼女はその人なのである。



 スズキを狙う釣客の、踊る疑似餌ルアーにまだ上客あたりは無いが、

 彼の口は対照的に、豊漁の宴の様であった。

 傍で膝を抱えて座り、彼の話に耳を傾ける、

 異国風の妖女スズキの顔も先程とは打って変わり、楽しげだ。

「いやぁマジ、ビビったよ。

 ハーフ美女の逆ナンってだけでも激レアなのに、

 スズキとシーバスなんて出来過ぎ……来たか? あれ?」


 若きシーバス釣り専門家スペシャリストでもある釣客は、違和感おおものに気づく。

 口は閉じ、一歩二歩、足場を確かめ後ずさる。

 その直後、彼の竿がまるで伸ばした輪ゴムに見える程の弧を描いた。


(デカ過ぎる! 遠浅のおかっぱりでこんな大物、ありえない!)


 釣客は今にも海に落とされん勢いを必死に堪えるも……

「うわ!」

 尻を強打した。




 釣糸が切れて安堵を憶えたのも、名人たる彼には初の事だった。

 逃がした大魚が海面から何度も跳ねて姿を見せる。

「二メートルのシーバス……見た事ない。しかも姿も見せず喰ってきた。

 どうなってんだ……うわ、眩し!」


 沖の真中に浮かぶ双子の岩の隙間を大魚が跳ねた時、

 岩間に大きな光の環が現れ、その中に大魚は消え去った。

 環の中は先の見えぬ闇だったが、徐々に目が慣れたら、

 得体の知れぬ渦を巻く虹色の波が見えてきた。


「おおきんな。おかげで扉が開いたんよ」

 笑顔で見守るだけだったスズキが、急に口を開いた。

「ウチは異世界観光ガイド、ボーラやに。

 一緒に伊勢海いせかい美食シーバスツアー、行こに!」


 彼女は妖女・シーバスガイドさんこと、ボーラ=スズキ=シーバス。

 そして彼女の最初か最後かいまだ謎の乗客ターゲット

 その男の名も未だ……





『……のちに二人はめでたく結ばれ、

 奥様の名は、鈴木 鱸鰡すずきぼーら に、なりましたとさ』

『えっ? イマダさん違うん?』

『そ、それは独創的過ぎるなぁ。彼より先に違和感(・・・)、気づかない?』

『……あっ、ココ? こんなん最初から気づくんは、釣り好きだけやん。

 なんなんコレ、後味わるう』

『まあまあ……ねえキミは、どこで気付いたの?』


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