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02.白い世界

 ――次に目が覚めた時、僕は白い空間にいた。



 『……』



 なにもする気が起きなかった僕は、変化が起きるまでじっとその場に立ち尽くしていた。そうしてしばらくぼんやりと待っていると、目の前の空間?が開き女性が現れた。



 『…普通はこの空間に来た者はなにかしらアクションを起こすのだがな』



 現れた女性はそう言って無表情で僕を見る。こういう状況は前に熱心に見ていた小説のサイトで見たことがあるな。この人?は神かなにかだろうか。



 『怒りをあらわにして暴れたり、パニックを起こして泣き叫んだりな…お前は何を考えているんだ?』



 そう言って女性は僕の顔に無遠慮に手をかざす。いきなり失礼な人だな。碌に教育を受けていないのか、指摘する人がいなくて常識がなくなったのかどっちだろう?


 そう考えていると、僕の体は宙に1メートルほど浮き、そのまま地面に叩きつけられる。痛い。痛いが、自由に体を動かせる状況だし空間の見晴らしがいいからか特に感情は動かない。



 『痛いです』


 『無礼なことを考えるからだ』



 女性は変わらず無表情だが声に怒りだか不快感があらわれている。無礼とかブーメランかな?この人が無礼だからしょうがない。どんな酷いことをされても、なにを思われても仕方がないだろう。無礼さは罪なんだから。それに態度が偉そうだし僕よりもよっぽど悪い奴だ。



 『…お前の内面が私の想像以上に歪んでいることはわかった』


 『痛いです』



 見えない力で万力のように締め付けられながら僕は痛みを訴える。この人は心が読めるのだろうか?勝手に人の心を読んでおきながら勝手にストレス溜めて暴力を振るうとか当たり屋かな?まあ僕のいた世界の神話に登場する神も大概クズだったしそういうものなんだろう。


 そうして現状への認識と目の前の神?への理解を深めていると、一際強く握りしめられたあと解放された。メチャクチャ強い力で死ぬほど痛かったのに死んでいないところを見ると、この空間の法則は普通とは違うのかもしれない。



 『…察しのとおり私はこの空間と繋がっている世界の神だ、ここには強い無念を抱えて死亡した者の魂が集まるように私が設定している』



 尊大な態度で神が言う。どうやら僕の認識で間違いないらしい。僕の絶望の深さは自分で言うのもなんだが相当なものだったからな。しかし強い無念を抱えた者を集めるとはどういうことだろう?前世で苦しんだ分だけ苦しみのない第二の人生を生きろみたいな考えの、偉そうな態度や無礼さとは裏腹に実はいい人なんだろうか?



 『強い念を抱いて死亡した者は自我が強い、自我が強い人間は良くも悪くも私の世界で活躍してくれる』



 つまり苦しんで死んだ人間はその世界で善行や悪事を積極的に働いてくれるから集めてるってわけか。前言撤回、コイツは完璧に悪党だ。僕は僕の自由を奪い利用する奴が許せないのだ。


 僕の思考は死ぬ前よりも明らかに過激になっていた。死の恐怖を体感して、尊厳を穢されたことで自分の存在価値がわからなくなり、僕自身も含めて全てのものが信用できなくなったのだと思う。



 『…利用していることを否定はしない、だが自由を奪うようなことはしていない』


 『私の世界で意志を持った者に活躍して欲しいのは確かだが、どう生きるか選択するのは君たちだ』



 僕の思考を汲んだのか少し態度が軟化した。これで好印象に傾くのだから僕もちょろい奴だな。きっとその世界で人が文明を築いたり、新しいものを創造したり奪ったりすることで世界を回すエネルギー的なものが発生するのではないだろうか。



 『察しがいいな、そういうことだ』



 なぜそんなことをしているのかわからないが、いわゆるライフゲームという奴だろうか。もしかしたらこの人は研究者的な気質だったり、動物の観察とかが好きなのかもしれない。きっとそうだな。僕もそうだからわかる。



 『…まあ、そんなものだな』



 なんだか疲れたような調子で返す神。まあ、偏見だが神の考えることは普通の人の思考ではわからないのかもしれない。考えてみれば態度が偉そうとはいえプライベートな空間に招いて世界の説明をしてくれているのだから充分優しいよな。何の説明もなく転生させないだけ有情だ。



 『説明をしてくれてありがとうございます、一人一人にこうして面談みたいなことをしているんですか?』


 『急に話し出したな?まあそうだが、私は複数の空間に同時に現れる能力と、私の世界の意思ある者全ての思考に同時に存在する能力を持っている、だからそこまで苦でもないよ』


 『そうなんですか…?それでも、ありがとうございます…そういえば僕たち転生者にも異世界らしくなにか能力とかはあるんですか?』


 『うむ、転生者のほぼ全員が能力について聞くものだから最近実装したのだ…抱いた念によって能力が一つ手に入り、魔法の適性が決まるようになっている』



 まるでオンラインゲームのアップデートだな。転生者は神アプデキタコレとか言ってるんだろうか。しかしゲーム的でいかにも楽しそうだ。生きる意味がわからなくなった自分にとって人生は暇つぶしという感覚でしかない。第二の人生はそれなりに楽しめるかもだ。

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