01.無残な死
『おいおい!もっと抵抗しないとそのまんま埋まっちまうぞ!』
『ギャハハハ!!両手両足が折れてんだから無茶言ってやんなよ!!』
※※※
突然だが僕、『石之 貴史』は埋められそうになっている。もともとクラスになじめずにいた僕は、いつも三人でつるんで不良みたいなことをしているクラスメートに目を付けられてしまった。
最初はすれ違いざまに口でなにか言うだけだったのが段々とエスカレートし、積極的に僕を探して家族の仕事や僕の特徴についてなど酷いことを言うようになり、人前でも小突いたり囃し立てるようになっていった。
お婆ちゃんっ子だった僕は尊敬するお婆ちゃんの言う通り相手にしないことを心がけていたが、彼らの悪意は強くなる一方で、さらに彼らの悪意には底が無かった。
僕を使って面白いことがしたい、ヤバいことをしてみたいという好奇心は強くなる一方で、今日は遂に命を奪う所まで悪意は育ってしまったようだ。
彼らの姿を見かけると逃げ出すようになっていた僕は人気のない裏山に逃げ込んだが、彼らは根気強く僕を探し出してリンチをした。
狩人の気分にでもなって気分が高揚したのかいつもよりも暴力は過激で、口には僕の下着を突っ込まれて声を出せなくさせられ、さらに両手両足を折られて身動きを取れなくされた。
『なあ…これ流石にヤバくねえか?』
『まあ、先公にバレても停学とかになるだけっしょ?余裕余裕』
『聞いた話だけど、こういうのってバレると親が慰謝料払わないといけないらしいぜ』
『げぇ…コイツのせいで金払わないといけないとかクソすぎんだろ』
『それにすっげえ怒られて慰謝料も肩代わりでバイトとかさせられるかもしんねえ』
『うっわ最悪だわ…うちのオヤジ滅多に帰ってこないけどすっげえ怖いんだよ…慰謝料払うことになったら俺殺されるかもしんねえ…』
『なあ…今誰も見てないしさ、コイツ埋めちゃえば万事解決じゃね?』
そう一人が洩らしたことで空気が緊張した。
『いやー……流石にそれは……ヤバすぎるだろ』
『でもよ、このままなのもマジでヤバいだろ?最悪少年院とかに入れられてマトモな仕事に就けなくなるかもだぜ』
『人としてステージが上がるっつーの?ハクが付いて一皮むけるってのはあるかもしれねーよな』
『お前ってたまにかなり面白いこと言うよな』
不良気取りのためヤバいことと悪さに興味のある彼らは、結局僕を埋めることを選択した。バレなければなにもお咎めなしであるというメリットと、僕が窒息で死ぬため直接手を下さずに済むということが安心感をあたえたのかもしれない。
僕はその間喋れないので涙を流しながら固唾を飲んで殺されないように願っていたが、結局殺されてしまうようだとわかり、身をよじって呻き声を上げて抵抗した。
『暴れんなよなー、もうどうにもならねえだろ』
『俺たちの未来のためにキッチリ埋まってくれや』
『お前の犠牲は無駄にはしないッ!ギャハハハ!!』
この期におよんでも僕を馬鹿にするようなことを言う彼ら。そうすることで己を奮い立たせ、罪の意識を紛らわせたかったのかもしれない。結局両手両足が折られていた僕は抵抗もむなしく埋められてしまう。
『木の枝で穴掘るのって難しいんだな…めっちゃ汗かいたし手が疲れてきちまったよ』
『スコップ取りに行く時間がねーからしゃーねーだろ?人が来るかもしれんしパパッと終わらせちまおうぜ』
『明日は乳酸地獄だなー、お前ら今日はしっかりストレッチして寝ろよ』
『なにその知識?お前体育教師?』
『うわっ、こいつクソ漏らしやがったぜ!クッセー!』
『いい土のために肥料を出してやったんだよなー?タカシくーん?』
『こいつ養分にして冬虫夏草みたいなレアな草生えるかもしんねーよな』
『なにそれ?お前植物学者?』
好き勝手なことを言いながら彼らは僕を埋めていく。僕は死にたくない恐怖で全身が震えて排泄までしてしまう。
何がいけなかったのだろう?彼らに抵抗しなかったこと?家族を信じたこと?それとも生まれてきたことだろうか?
土の臭いと重みが絶望を感じさせる。重みで動けなくなった体で視線をさまよわせていると、彼らの一人と目が合った。
その瞬間まで熱狂的で凄惨な笑顔を浮かべていた彼は、僕と目が合うと真っ青になり大きく震え、マイナスの思考を打ち消すように僕の顔に土を被せた。
――あまりにも強い絶望を感じながらも段々と意識が混濁し、そうして僕は死んだ。
習作です。よろしくお願いします。