どうきドキドキ
どうも最近、動悸が激しい
鼓動の脈鳴りが、ふと休んでいたりすると
自分の体を振動させるほど大きく感じるのだ
私は、一人の時、良くそんな妄想をするのだが
どうも最近、その妄想のような事を、周りの人間が起こしているような気がするのだ
大学の講堂で、私はいつも一人、本を読んで居る
大学に入学してからと言うもの、一度も講義を休んだ事は無く
教授から、ディナーに誘われても、私の帰り道が、変わる事は、無かった
そのせいか、三年になるころには、どの授業も、単位がたりてしまい
大抵、一時間ほど早く、講堂に居るのが、普通になっていた
友達と言う種類の人種はおらず
しいて言えば、研究室の同期であるが、彼らは、最初の2や3回で
私と言う人間を、ある程度理解してしまったようで
それ以外、あまり授業以外、話しかけてこなくなった
私はいつものように、一時間ほど前に、講堂に行くと
前の講義があったので、数人の生徒が、教授にノートのせい出をしていた
私は、一番後ろの席に座ると
肩下げの鞄
最近サコッシュと言うらしいことを
テレビで目にしたが
古着屋で見つけた、その一枚布で作られたような肩下げ鞄に
そんな名前がある事を、私は一人、大仰な事だとも思ったりもした
私はそのかばんの中から、一冊、本を取り出すと
それを開いて読みだした
題名を「金魚傘」と言い
昔の同人本だったのか
偉く難解なつづりで
時間つぶしにはいいのかも知れない
「サルお方の脳ミソを運んでいた、夜の事
私の家臣の一人、田中が私のいない隙に、奥方の花子に、抜き身で刺したと言うではないか
私は雨が降る夜の道を、一人提灯をさして
歩き出す
しかし、雨に濡れたろうそくは、次第にその炎を・・・・・・」
チャイムが鳴る
周りには、ぼつぼつと人がいる
この授業は、あまり人気が無く
研究室の仲間も参加していたが、難しいとかで、今は来ていなかった
教授は、いつものように、黒いう背広を着ており
一説には、いつもそのドラキュラのように黒い背広を着ており
春夏秋冬いつも、同じ厚さだと言うが、はた目からしたら分からないが
三年間通った授業で、服装が違った記憶は無い
「えーー」
濁ったナマズが、風邪を引いた蚯蚓を食べるような
そんな、引きずった声が、聞こえる
何とか、聞き取ろうと思っても
その話し方は、非常にか細く
絶対に、教鞭をとる態度ではない
それでも、この大学に居られるのは、彼の研究が、この大学で一番有名な功績をあげているからに違いは無い
得てして、そういうタイプの人間は、他者の気持ちがわからないと言う事が多いと言うが
教授の場合
黒板に書かれた文字は、実にわかりやすく
ほとんどの人間は、教授の方ではなく黒板を見ている
しかし、あきらかに彼が話している言葉の文字数と
黒板の文字は、違いがみられ
何を言っているのか、分析してみるのも、面白いと思いながら
あと一回出れば、この授業は、来る必要が無い
三年間とは、得てして、無意味に過ぎ去った気がする
特にやることも無く
同じような毎日の繰り返しだ
最近は、落語も聞かなくなった
どうも、この世の中で、一番眩しく映って見えてしまうのだ
私は、最後の一文字を、ノートに、書くと
耳を澄ませた
最後くらい、意味を見出しても良いではないか
私の聴覚は、目を閉じる事で
多少は鋭く音を拾う
「どんドン・・ドンどんどん・・どん」
何の音であろうか
教授の声と
何かを書く音
その間に沈み込んだような、その音は
一定のリズムを刻んで
私の耳元まで届いている
・・ナンダロウカ・・
私は、目を開けると
周りを、見渡す
机に目を落とし
息継ぎするかのように
顔をあげて黒板を見る数名の生徒が、周りにいるが
その音の根源を特定するには至らない
携帯機器のマナーモードにしては、
その音は、大きな振動に感じられる
子ネズミのような震えではなく
大きな動物の足音のような
私は、もう一度目を閉じた
「どんドンドン」
やはり聞こえる
どうもそれは、私の近くから聞こえているようで
更に方向を調べるために、耳を研ぎ澄ます
「ドンドンドン・・・ドクン」
その一定のリズムに
思い当たる節があった
それは、私の父親の上で、幼き頃寝ていたときに
何か聞こえてきたのを覚えている
そう、心音だ
後ろから聞こえてくるその音に、私は、あたりをつけて
振り向いた
そこには、ずいぶん前に居なくなった研究室の仲間が一番後ろの
壁にもたれかかるように、背中を傾け足を体育座りで、小さくまとめ
座っていた
「ドクン」
音が彼からする
授業の声が聞こえない
私は、大学生活
始めて授業中、席を立ち
彼のもとへ近寄る
肌は、成形色のように、白く
その服装は、確かいつも着ていた服のままだ
彼が、研究室に来なくなって早二年半
どうやら彼は、電池が切れたロボットのように
とある講堂の壁でずっと休んでいたらしかった




