百獣あらわる!
キーンコーンカーンコーン
授業開始のチャイムが鳴る。その瞬間
いつもは特になにも意識しないのだが、その日は
なぜか悪寒にも似たものを感じた。
(なんだ?なにが起こるんだ?)
背筋を伸ばし身構えていると、
ガラガラと教室のドアが開き担任に続いて
1人女子が入ってきた。
『はいみんな注目』
担任がそう言って黒板に名前を書き始める。
"潤羽 凛"と書かれた黒板を見て俺は思わず
某アメコミのヒーローを思い浮かべる。
女子が口を開く。
『今日から転校してきました潤羽 凛です。
よろしくお願いします。』
(やっぱり!)
ボクの読みが当たっていたことに驚いていると
彼女は話し続けていた。
なんでも、親の転勤で関東から
こちらに越してくることになったみたいだ。
前の学校ではバスケ部に所属していたらしい。
そういえば、背も大きく見える。
茶髪に少しウエーブのかかった様子は
まさに…獅
いや、初対面の相手に対してそれはさすがに
失礼だろうか?顔は…
などと思っていると。担任が…
『うーん…間宮の横空いてるじゃないか。潤羽とりあえずそこにいってくれ。』
(なんだよこの展開
漫画みたいにたまたま横が空いてるなんてあるのか?)
彼女が近づくほど緊張が増す。
うるはが隣の席に座り、ボクに自己紹介する。
『こんにちは。今日からよろしくね。』
なぜか硬直するボク
それは、ヘビに睨まれたカエルの心境と
同じだろうか?
『きみ名前なんていうの?』
ボクの硬直が解け答えた。
『え…間宮 海洋だけど』
うるはは答えを聞くと微かに笑って
『そーなんだ。なんか女の子みたいなかわいい名前だね』
ボクは一瞬遠い世界へ旅立ったような気分になった。
初対面の女の子に自分のコンプレックスを突かれることになるとは思っていなかったからだ。が、なんとか踏みとどまって
『……うるさいなかわいいとか言うなよ』
消えそうな声でなんとかそう返した。
『…ふーん 』
そう言うと黒板の方へ向き直った。
思えば、これがボクの地獄の扉
いや…運命の扉が開かれた瞬間だったかもしれない。