最強転入生とパラメータ比較
「ヒャッハー! 魔術学は爆発だァー!!」
「ヒャッハー! 錬金術も爆発だァー!!」
「ヒャッハー! 召喚術も爆発だァー!!」
校庭でまた不良達が馬鹿騒ぎしている。
落ち着いて弁当も食べていられない。
「私が行こう」
イチジクは木刀を片手に、窓から校庭へと飛び降りた。6階だし、無傷で済むだろう。
風紀委員会結成から一週間。
計画は、予想以上に前途多難だ。
風紀委員会のバックアップにいるのは、美化委員の女子とイチジクの部下達。彼女のカリスマに魅了された一部の不良が、そのまま味方になった。
だが、味方が増えただけでは意味が無い。
「うわァー! 鬼神のイチジクだァー!!」
「誰が鬼神だ」
抑圧されると反発する。
分かりやすいが、線引きが難しい。
どこまで耐えられてどこから無理なのか。
ともかく分かるのは、過剰すぎる暴力の抑圧は反発が強くなるだけだ。つまり、このままではいけない。
「飛ぶ斬撃だァー!!!」
「大丈夫だ。真剣じゃないから死なん」
……一応、やっておくか。
* * * * * * * * * *
「パラメータ開示、ですか?」
生徒会室を間借りした一角。
そこが俺たち、風紀委員会の拠点だ。
「暴力は最終手段ではなかったのか?」
「最終手段案件多すぎだろ?」
「……万里ある」
というわけで、風紀委員のパラメータ情報を書き出すことにした。
理由は二つ。
一つは適材適所。
俺はともかく、バナーニャとイチジクは長所と短所の差が激しい。よく手配に困る。
二つ目は威嚇だ。
現在、俺がイチジクに勝ったという情報は意図的に隠蔽している。先程も不良が叫んでいたように、イチジクはその強さが知られているからだ。
「つまり、私の強度をあえて密偵に流し、牽制をかけるのだな」
「そのとおり」
「な、なるほど……?」
たぶんバナーニャはわかっていない。
大小様々な情報を、暴力勢力に流す者。
それが密偵だ。
イチジクが俺の情報を知ったのも、その密偵を利用したかららしい。あえてそれを利用する。
「まずはバナーニャ、お前からだ」
「はい……ちょっと恥ずかしいですけど。ステータス・オープン」
青い光と共に、空中に文字が浮かぶ。
「筋力B。結構高いなお前」
「はい! エルフの割に力持ちもウリなので!」
エルフという種族もあって魔力もB。しかし防御耐久がE-。低すぎる。
「よくこれであの不良の前に立てたな」
「正義感ってパラメータがあったらきっとSSSです!」
……心配になってきた。
知識C-。
魔術知識D。
運C。
その他全てがE。
残りのステータスはこんな感じだ。
平均値がCなので、やはり低水準だ。
「……体重とかは見ませんでしたよね?」
「見てない見てない」
37なんてそんな数字知らない。
身長の割に少し重めだ、とか思ってない。
「次は俺でいいか?」
二人に確かめ、ステータスを開示する。
ここ10日でやらかしたことを含め、改めてパラメータは改ざんしてある。
「魔力A+と知能A……すごいです」
「ふふん、そうだろ」
すまないバナーニャ。それすら嘘なんだ。
「貴様、この値は正常か?」
「あぁ、別に弄ったりはしてない」
「当然だ。能力値は操作などできない」
ごめんイチジク。できるんだ
「では、何故あの時私は……」
やはりイチジクは、俺のパラメータに少々不満があるようだ。一方的にやららた割にはこの程度か、という感じだろうか。
しかしSクラス以上にするとそれだけで騒ぎになりかねない。これが絶妙な改ざん値なのだ。
本当の数値を出した時にはどうなるか。
「あ、でも筋力Cです!」
「そうなんだよなぁ」
「モヤシじゃないですか。プークスクス」
……よーしいつか腕相撲してやる。
「私だな。能力値開示」
違う詠唱をしたが表示自体は変わらない。
「……感想を述べろ」
「極端か」
「すっごい極端ですね……」
筋力A。速度B。防御耐久がB+。
知能がD-。
残り、全部E-。
これは人間より、どちらかというと上級オークとかオーガに近い数値である。
「さすが鬼神」
「誰が鬼神だ……」
ステータスを閉じると同時に、珍しくイチジクが露骨に凹んだ。
「……貴様、胸の大きさは見たか?」
「見てない見てない」
73とかAとかそんなの知らない。
だいたい、胸は大きさじゃないんだ。
戦闘系パラメータがあれば牽制にはなる。
この情報から適材を割り出して、詳細は今度改めてまとめよう。
* * * * * * * * * *
「私のパラメータが見たい、っスか?」
「ああ。モモのパラメータもまとめようと思ってな」
風紀委員ではないが、一応聞いてみる。
同じ部屋にいるしほぼお互いの仕事を協力しているし、まとめて損はないだろう。
「私、開示魔術使えないんすよ」
「……は?」
「ステータス・オープン! ……ほら、何も出てこないんっスよ。ごめんなさいっス!」
……こんなこともあるのか。世界は広い。
開示魔術なんて基礎中の基礎だぞ。
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