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ロスト・フェアリー  作者: とらつぐみ
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第5章 蛮族の軍団2

 オークは王の書斎へと入っていった。王はごく僅かな臣下を従えるのみだった。王は老いと病気で衰弱が始まっていたが、それでもその姿に威風を漂わせていた。



「そなたがオークか」


オーク

「はい」


「もっと側へ。よく顔を見せろ」


オーク

「はい」



 オークは王の側へ進み、目線を下にしつつ、顔を上げた。



「そなたの名前は旅の僧侶から授かったと聞く。違いないか」


オーク

「はい。その通りです。かつての名前は邪な者に奪われました」


「その名はなんと?」


オーク

「……恐れながら、その名前はすでに失われています。申し上げたところで、何の意味もございません」


「構わん。言え」


オーク

「ミルディ。――ドル族のミルディです」



 口にしてみると、やはり違和感があった。もはや自分の名前ではなかった。



「それが生来の名か」


オーク

「はい」


「……そうか。我が国を混乱に陥れているゼーラ一族のことは知っておるな。南部に偵察を放ったところ、ゼーラ一族の軍団を見たという報告が入った。敵はケール・イズ街道を通って、この城を目指しておる。そこでお前に使命を与える。この城の南に、建設中の城壁がある。これを完成させ、この国の盾にせよ」


オーク

「御意」



 オークは深く頭を下げて、部屋を後にした。

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