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ロスト・フェアリー  作者: とらつぐみ
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第4章 王の宝9

 セシルは宝箱を地下まで運び、エクスカリバーが保管庫に置かれるのを確認すると、階段を戻った。


 そこに、待ち構えている男がいた。



ブラン

「浮かない顔をしておるな、友よ」


セシル

「ブランか。来ていたのか」



 セシルとブランが抱擁する。


 ブランは、ブリタニアの使者だった。ガラティアとブリタニアの関係は希薄だったが、ブランの一族とは親しい付き合いにあった。



ブラン

「ついに見付けたらしいな」


セシル

「ああ、我が国の宝だ」


ブラン

「しかし、あちらも同じように言っておる。宝を返せ、でなければ国を寄越せ」


セシル

「宝だと言いつつ、泉の底で腐らせていた連中が何を言うか。あれはそもそも我らの一族が鍛えし剣だ」


ブラン

「お宝の奪還なんぞ、奴らにとってはただの口実に過ぎん。ブリテンが欲しいのは、ガラティアの土地そのものだ。挑発に乗るなよ。挑発に乗れば、奴らの思う壺だ」


セシル

「わかっている」


ブラン

「気をつけるんだぞ。ブリテンのヘンリー王は強欲でしかも狡猾だ。気を許せば何でも掠め取っていく。特に海上では連中は無敵だ。海の上では決して戦うなよ」


セシル

「承知しておる」


ブラン

「とりあえず、我々はお前たちの味方のつく。ブリタニア政府も同様だろう。俺達とお前は、似たもの同士だからな。違うところもあるようだが」


セシル

「お前たちは気障だ。そこが違う」


ブラン

「否定はしないよ。我々が最も大事にしているのは力でも権力でもなく、美しい貴婦人と腰の剣だからな」


セシル

「おまけに下品だ」


ブラン

「それも否定しない。我々にとっての誇りだからな。――そちらは内戦続きで戦力不足だ。ブリテンとの戦いなら我々が引き受けよう」


セシル

「すまない」


ブラン

「ブリテンが大陸を手に入れれば、我々とて無事に済まない。我々の連合がブリテンを包囲しているが、そのいずれかが崩されれば、大陸は一気にブリテンに奪われる。礼には及ばんよ。さらば友よ。そちらの戦いも無事に終わることを祈っておるぞ」



 ブランはおどけたような挨拶を残して去って行った。

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