表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ロスト・フェアリー  作者: とらつぐみ
38/196

第4章 王の宝6

 その後、オークは港の守備隊として働き続けた。毎日のように港のどこかで繰り広げられる抗争を鎮圧、外国から持ち込まれる禁制品の没収、違法な仕事や商品のやりとりの規制。事件は時と場所を選ばず。オークは休む間もなく駆りだされ、危険に放り込まれ、戦った。王の役人であるが、港の人達はその仕事を尊重しておらず、機会を狙っては反撃を目論んできた。街の中であるとはいえ、戦場と変わらないくらい危険な任務だった。


 そんな仕事も、やがて1週間目に入ろうとしていた。



 オークは守備隊本部の塔へと案内された。そこから、港全体の様子が俯瞰できる。


 夜が深く、辺りは暗く影を潜めている。静かな夜だった。法があってないような混沌としたこの街では、こんな静けさが不思議に思えるくらいだった。


 トリンは、ランタンをかざしながら、海を指差した。



トリン

「見えるか。あいつを監視しろ」



 トリンが差したはるか向こう、海の只中に、「点」が1つ置かれているのが見えた。



オーク

「あれは何ですか?」


トリン

「ブリテン島の軍艦さ。あの野郎、こっちの海域ぎりぎりのところにああやって軍艦を置いて、挑発していやがるのさ。ここ最近、あちらもやけに慌ただしく、警戒を強めていやがる」


オーク

「なぜですか」


トリン

「知らん。とにかく、これが王子からの密命だ。あれを厳重に警戒しろ……ってな」


オーク

「王子が……」


トリン

「何だかわからない命令だが、ちょっとした噂は聞いている。お宝があるって話だ。もうずっと前から、王はブリテン島に密偵を放ち、ある宝を探しているって話だ。それが、最近ついに見付かったそうだ」


オーク

「宝? それはどんな品ですか」


トリン

「さあ、そこまでは知らんよ。噂だからね。しかし王家の連中は長年そのお宝に執心だったようだ。港の警備にも力を入れているようだし、それにあんたも送り込んできた。きっともの凄いお宝に違いないぜ」


オーク

「…………」


トリン

「なあ、お宝が運ばれてきたら、いくらか貰ってしまわないか。なぁに、どうせ箱の中身が1つ2つなくなっていたところで、気付かれはしないよ」


オーク

「……それはなりません」


トリン

「そう言うと思ったぜ。つまらん奴だな」



 オークは無言で海の風景を眺めた。変化は何もない。静かに凪いだ海の上に、点はじっと留まっていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ