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ロスト・フェアリー  作者: とらつぐみ
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第4章 王の宝4

 オークは城を後にした。城の前では、兵士たちが慌ただしく仕事をしている。馬の世話をしたり、鎧の手入れをしたりで忙しそうな様子だ。


 オークはそんな様子を珍しそうに見ながら、城の前を通り過ぎていこうとする。


 すると、オークを呼び止める声があった。



ゼイン

「おーい、待て待て! 1人で行くつもりか」



 オークが立ち止まって振り返る。大柄な鎧の男と、優男が駆けてくる。


 鎧の男は、古参兵らしく白い髭を垂らしていた。優男はずっと若く、肌の色の黒い、精悍な青年だった。



ゼイン

「わしはゼインだ」


ルテニー

「俺はルテニー」


オーク

「オークです。あなた達は?」


ゼイン

「王子の命令でな。お前さんとしばし旅を共にすることになった」


ルテニー

「見張り役だ。お前が間者ではない証拠もないからな」


ゼイン

「それから案内役だな。港、と言われても田舎から出てきたばかりで場所もわからんだろう。従いてこい。わしが連れて行ってやろう」



 オークたちは兵舎から馬を3頭預かると、王城を後にした。


 寄り道もせずに、王都を出て行く。


 城を出ると、草原が目の前に広がる。向こうの方に、森の影が黒く見えた。城壁は城下町だけではなく、その外にも長く続いていた。海外沿いの絶壁に沿って、堅牢な壁が延々続いている。要所要所に塔が建てられていて、兵士たちが警備しているのが見えた。


 草原に穏やかな風が吹いている。オークは馬を進めながら、壁を眺める。



オーク

「古い時代のものですね」


ゼイン

「ケール・イズ時代のものじゃな。ケール・イズ……話は聞いたことはあるだろ」


オーク

「ええ。しかしお伽話としか」


ゼイン

「カカカカカ……。ケール・イズの物語はお伽話ではない。実際の王の物語だ。森に入れば、いくらでも証拠は見付かる。かつて栄華を誇り、滅んでいった偉大なる一族の物語だ」


オーク

「へえ……」


ルテニー

「そこまでにしとけ。オーク、このオッサンに昔の話をさせるな。2時間は無駄になるぞ」


ゼイン

「ルテニーよ、昔話を軽んじてはならんぞ。昔話には人々が長く伝え、守ってきた心が眠っておる。土地が物語を生み、人と土地を結びつけるのが昔話だ。語り継いで守らねばならんものだぞ」


ルテニー

「ガキに聞かせる話に、そんな大層なものあるわけねぇだろ」


ゼイン

「若いもんはわかっておらぬのぉ。お前さんはどうだ、オーク」


オーク

「私も子供に聞かせる話なら、いくつか知っています」


ゼイン

「そうかそうか。それは良い。子供もお前さんに聞いた物語を、その子供に託すであろう。そうやってその土地が持っている心は守られていくんじゃ」


ルテニー

「また始まりやがった……」

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