表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ロスト・フェアリー  作者: とらつぐみ
170/196

第14章 最後の戦い2

 クロース軍の包囲網を抜けて、オークとソフィーは大パンテオンへと入っていった。そこは信じがたい光景だった。


 地面を埋め尽くさんばかりに死体が積み上げられていた。異界のレギオンのごとき屍体の塊になっていた。蹄で土を踏み付けると、吸いきれなかった血が溢れ出した。屍体は兵士だけではなく、町人や子供も交じっていた。


 木々には火が点けられ、今まさに崩れ落ちようとめりめりと音を立てている。真っ黒な煙が視界を遮っていて、どこか別世界に迷い込んだような幻惑が包んでいた。


 突然、何かが風を切った。馬が矢で射られたのだ。


 馬が大きく跳ね上がり、倒れた。オークとソフィーが地面に投げ出される。


 黒煙の向こうから、クロース兵士が飛び出してきた。その姿が、なぜか冥界の餓鬼に見えた。


 すぐに2人は身を起こした。右の兵士をオークが斬り、左の兵士をソフィーが魔法で跳ね飛ばした。


 クロースの兵士は次々と現れた。オークとソフィーは敵を振り切ってその向こうを目指した。黒煙の向こうに、石段が見えた。そこも、無数の兵士が待ち構えていた。戦闘の音があちこちから聞こえた。



ソフィー

「オーク様、こっちです!」



 ソフィーはオークを道案内した。


 後をクロースの兵士が追いすがった。オークは敵を斬り伏せながら、森の奥へと入っていった。


 敵の追跡はいつまでも続いた。刃が迫り、矢が飛んだ。それも、窪地を越えていくうちに遠ざかっていった。ソフィーは土地の者しか知らない秘密の道を潜り、山脈の三合目まで出てきた。


 そこにはまだ戦闘の手は及んでいなかった。ドルイド達が緊張した様子で、戦いの準備を進めていた。


 ソフィーはそこまで這い上がってきたところで、汚物を吐いた。目に涙を浮かべていた。



僧兵

「ソフィー様ではありませんか」


ソフィー

「みんなまだ無事ですか」


僧兵

「ええ、なんとか……」


ソフィー

「老師様は?」



 ソフィーは口元の汚物と目元を拭いながら訊ねた。


 僧兵達は、オークとソフィーを石段のさらに上へと案内した。その途上で、オークは先行した30人の騎士達と再会した。オークは仲間達としばし別れて、老師の許へ急いだ。


 石段を登っていくと、大きな広場になっていて、そこに参謀本部が置かれていた。偉大なるドルイドの老師達が討論を続けていた。老師達はソフィーに気付くと、議論を中断して迎えた。



ソフィー

「老師様!」



 ソフィーは涙を抑えず、老師に抱きついた。少女の気持ちが落ち着くには、少し時間が必要だった。



ソフィー

「お久しぶりです、老師様。よくご無事でした」



 改めてソフィーは老師達に挨拶した。



老師

「そちらこそよくぞ参られた。もはやこの大神殿も見捨てられたと思っていましたぞ。援軍感謝する。2人が加われば心強い。こちらでの状況は見ての通りだ。人々が不眠不休で異教徒と戦っている」



 広場から、眼下の戦場の様子全体が見渡せた。クロース軍はすでに1合目を制圧し、戦いの中心は2合目へと移ろうとしている。敵の数は圧倒的に多く、山脈全体を覆うように兵を散開させ、じわりじわりと浸食しているようだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ