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ロスト・フェアリー  作者: とらつぐみ
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第13章 王の末裔5

 イーヴォールたちは3日後、隠里に帰還した。オーク達がすでに戻っていて、なにやら事件だというふうに人々が話し合っていた。



イーヴォール

「どうした? 何があった」


兵士

「イーヴォール様。お待ちしておりました。急いでください」



 ただちに兵が応じて、イーヴォールをオーク達がいる家へと案内した。


 その間に、兵士はおおよそのあらましを説明した。オークがダーンウィンの柄を握って無事であったという話を。


 オーク達のいる部屋に入ると、彼の忠臣達が集結していた。しかし訳のわからない事態に、みんな神妙な顔をしていた。



イーヴォール

「オーク。話は聞いた。本当か」



 オークは思考に沈んでいて、話しかけられてようやくイーヴォールの存在に気付いたというふうに席を立った。



オーク

「ダーンウィンは奥に保管しています。できれば、あなたの目で検分をお願いしたい」


イーヴォール

「もちろんだ」



 ダーンウィンが台座に置かれて運ばれてきた。盗まれないようにするためではなく、誤って柄を握らないようにするためであった。


 イーヴォールは聖剣を手に取ると、柄をじっくり眺めて、次に鍔を手に取り、慎重に鞘を抜いて、錵と刀のきめを、一つ一つ逃さず丹念に調べた。


 その後、かつてダーンウィンを見た経験のある者、一度でも城の保管室を訪ねたことのある者が集められ、順々に剣を検分した。


 その見解は、判を押したように同じものだった。



兵士

「この柄の彫りは、容易に贋作を作り出せるものではありません。それにこの刃に描かれたルーンの文字。刃のきめ細かさに、太古の霊力が残っております。それに斬った者に火を放つ特徴など、ダーンウィンにおいて他にありますまい。これを握られる者は王族だけ。――オーク殿、そなたは王家の血を引いております」



 しかしオークは、困惑した様子で頭を振った。



オーク

「どういうことです、イーヴォール」


イーヴォール

「私にも見当がつかない。ダーンウィンを握れる者はケルトの中でもたった1つの血筋の者だけだったはずだ。例外は絶対にない。それを握ったという事実が、それを明白に示している。――ただ……」


オーク

「なんですか?」


イーヴォール

「王城でお前と再び会った時、妙な感じを受けた。以前会った男とどこか違う。それにオークという名前……。オーク。いま再び聞こう。そなたに名を与えたという僧侶は、いったい誰なのだ」


オーク

「――それは、ソフィーです」



 部屋にいた全員がソフィーを振り返った。



イーヴォール

「そなたであったか!」


ソフィー

「わ、私は……」


オーク

「私は魔物にかつての名前を奪われ、それを切っ掛けに旅をしました。その最中、偶然出会ったのがソフィーです。ソフィーは名前のない私に、オークの名前を与えてくれました。確かにセシル様にはオークという名前の弟がいたそうです。しかし、私には母がいます。名前が同じなのは、何かの偶然としか……」


ソフィー

「…………」


イーヴォール

「しかし剣がそなたを選んだ。そなたが持つべき者であると。この剣は王の血筋しか持てぬ。どんな例外もない」


ソフィー

「…………」


オーク

「しかし……」



 オークに複雑な迷いが浮かんでいた。


 しかしそれが言葉にできずにいると、兵士が転がり込んできた。



兵士

「オーク様、大変です!」

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