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ロスト・フェアリー  作者: とらつぐみ
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第10章 クロースの軍団9

 オークはセシルの部屋を出て、廊下を歩く。その途上で少年が立っているのに気付いた。セシルの息子のカインだ。


 カインは本を読んでいたが、オークに気付くと、恭しく礼をして見送ろうとした。



オーク

「あなたでしたか。少し見ない間に、ずいぶん大人になりましたね」


カイン

「父を支えてやらねばなりません」


オーク

「……そうですね。セシル様に尽くしてください」



 オークはカインに敬意を込めた挨拶をすると、廊下を通り抜けていった。


 城の大階段を降りていくと、アステリクスが待ち受けていた。すでに出発の準備が整えられていた。



アステリクス

「どうでした?」


オーク

「状況はよくありません。しかしセシル様は信頼できるお方です。必ず兵を集め、国を守るために立ち上がってくれます。私たちはそれまで、敵を留めさせるのです」



 オークは言いながら、旅装束を脱ぎ捨てて、丈夫な鉄の鎧に着替えた。小姓が着替えるのを手伝った。



アステリクス

「まるで1年前を繰り返しておるようですな。しかも、状況はよりひどくなっている」


オーク

「仕方ありません。どんな状況であろうと、国を守るのが兵士の務めです」



 オークは馬に乗った。城の兵士達も準備を終えて待ち構えていた。


 出発の前に、オークは城を振り返る。大階段に、セシルが立っているのが見えた。



オーク

「戦ってください。セシル様」



 オークはセシルに向かって、手を振り上げた。


 セシルはオークに手を振って返した。


 オークは出発した。軍団を引き連れて城の前の坂道を降りていく。セシルは城の中へと入っていった。


 オーク達は列を作り、城下町を急ぎ足で進んだ。通りを街の住民達が取り囲んだ。



街の人達

「また戦争か!」


街の人達

「王の戦争好きに付き合わされる身にもなってみろ!」


街の人達

「俺達の税で好き勝手やりやがって!」


街の人達

「人殺し! 国から出て行け!」


街の人達

「お前らだけで人殺しをやっていろ! 俺達を巻き込むな!」



 街の住民達が兵団を取り囲み、罵倒とそのついでに物を投げつけた。だが兵達は毅然として街の住民達には何も応えず、真っ直ぐ大門を目指して進んだ。

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