表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/3

2 邪魔をしないで下さい

 マコトくんが消えた。

 姿だけじゃなくて、みんなの記憶からも。

 神隠しにあったみたいに存在自体が消えてしまった。


 そんなのってない!

 そんなのってないよ! 納得出来ないよ!!




「結論から言うぞ」


 マコトくんが消えた、と私が叫んだせいで授業は自習になった。

 先生は色々調べる為に出て行き、私は先生の教務準備室で待たされる事になった。

 それから1時間。短いような長いような待ち時間の後、先生が教務準備室へやってきた。


「あいつが墜ちたことは確認されたが、助けにいくのはなしだ」


 どうして。人が一人消えたのに。


「あいつはただ墜ちた訳じゃない」


 この世界は特殊で、時々穴が開く。その穴に吸い込まれて異世界に行ってしまう事を『墜ちる』という。

 カノ先生は、その『墜ちる』現象を研究するうちに異世界召喚のスペシャリストになった人だ。

 だからその言葉は重い。


「何か召喚に巻き込まれた疑いが強い」

「巻き込まれたんだとして、どうして助けに行ったらダメなんですか」

「あいつだけ力技で呼ばれた世界から引っこ抜くと、本来召喚された相手の帰還条件が崩れて、帰還出来なくなる恐れがある」


 それは、拙いだろ、とカノ先生は言った。

 消えたマコトの事を心配しているお前なら、その誰かを心配する誰かの気持ちも分かるだろ、と。

 感情だけで、誰かの人生をダメにする訳にはいかないだろ、と。


 そうだね。先生は正しい。でも。


「つまり、マコトくんだけじゃなく、召喚された人も助ければいいんですよね」


「それだけじゃない。この件はイレギュラーだ。下手に手を出すと異世界間のバランスを崩す恐れもある。いま調査チームを作って原因を調べているところだ」


 この件は俺が預かる、責任をもってあいつを連れ戻すと約束するから、と先生は言う。

 うん、そうだよね。先生の立場なら、そう言うしかないよね。


 例え、召喚に巻き込まれたマコトくんがひどく危険な立場にあるだろうと予想出来ても。

 マコトくんより、世界のバランスの方が大事。

 それはなにより『正しい』。


 でも。


 それは。


「あなた方の事情ですよね?」


 意識が切り替わる。クリアになる。ただの学生のマナじゃなくなる。『私』が出てくる。


「おい! 待て、マナ!!」


 不自然に風が渦巻き、身体を覆った。力が漲っている。


「おい! 待て待て待て待て!!! 誤解するな! 早まるな!!

あいつを見捨てるわけじゃない。話を聞け!!!!」


 慌てる先生に、にこりと笑いかける。


「マコトを無事に助けたら、私もあなた方に協力します」


 だから。


『邪魔をするな』と囁いて、マコトの墜ちた先へ飛んだ。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ