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1 気づいちゃいました

 マコトくんはかっこいい。

 マコトくんは優しい。

 マコトくんはみんなの人気者だ。

 そんなマコトくんは私の幼馴染だ。

 引っ込み思案な私は教室の片隅で眺めるだけだけど、彼はいつもクラスの中心で笑っている。

 そんなマコトくんを眺めるのが、私の日課だ。



「おはよう、マナ」

「おはよう。もうすぐ試験だね〜」

「ゆううつ〜〜」

 冬の寒い日、親友の菜摘とストーブの前に陣取っておしゃべりする。

「カノ先生の課題、異世界転移でしょ?」

「疲れるしめんどくさい〜。接着ミスると性別変わっちゃうんだよね」

「うん。それに祝福足りないと転移先で偽物扱いされたりするし」

「こないだは、聖女の印がないからって処刑されそうになったよ」

「や、ばーん! そもそも、召喚魔法を使う世界って他力本願の癖に偉そうなんだよね!!」

「自浄作用のない世界は滅びればいいのに!」

「ほんとだよ。他人の力でダラダラ生き延びても発展しないのにさ。馬鹿だよね〜」

「馬鹿だよね〜」

 二人顔を合わせて笑いあうと、バン、バン、と教科書で頭を叩かれた。

「お前らはナニサマだ」

 いつのまに来たのか、呆れた顔のカノ先生が脇に立っていた。

 先生は異世界召喚の第一人者で異世界召喚魔法陣の造形美を愛していると言っても過言ではない。それだけに、蘊蓄が長いのだが。

「異世界召喚とは『勇者召喚』『聖女召喚』が有名だか、本来は古式ゆかしき…」

「わ〜!先生、大変!!授業始まっちゃうよ!!!」

「そうそう。遅れると、タケルのお小言で授業終わっちゃう!」

 最初の年、耳にタコができるくらい聞かされた蘊蓄を繰り返されるのはすでに拷問だと思う。

「まったく、お前らは。もうすぐ進級だというのに浮つきすぎだ。罰として、追加でレポートを提出するように」

「「は〜い」」

 先生は苦虫でも噛み潰したような渋い顔で、課題の入ったファイルからプリントを抜き出し、二人に押し付けた。

 いい先生なのだが、融通が利かないところが玉に瑕である。

 教卓に向かう先生の後ろ姿を追って席にもどり、教室の中心に目を向ける。日課の○×△*を堪能しなきゃ。


 あ・れ?


 首を傾げた。

 何かがオカシイ。

 有るべきはずのものが無いような違和感を感じる。

「昨日の実験レポートを返すから呼ばれた順に取りに来るように」

 教卓に陣取った先生が、成績順に名前を読んだ。

「タケル、猪瀬、ネオ、直樹、、、」

『マコト、タケル、猪瀬、、、』

 違和感の元を探して目を凝らす。

 分からない。

 いや。幻聴が聞こえる。

『またトップを取られたか』

『☆*€%〆♪○%』

 誰かが何かを言っている。いつも仏頂面のタケルが苦笑いを浮かべ、、、。



嗚呼。あゝ。唖々。

あああああああああああ!!!!!!!!



 目の前が真っ赤になり、頭が言葉で埋め尽くされる。



『よくおいで下さいました、勇者様』

『どうか、世界をお救い下さい』



また彼奴らがマコトくんをさらったんだ。

性懲りも無く。

生贄にする為に。



「先生!一大事です!!」


 机を叩いて立ち上がった私に周り中の注目が集まった。

 でもそんなのどうでもいい。


 殺される前にマコトくんを連れ戻さなきゃ!

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