アンバートンと三大禁呪 ★
【孝也視点】
最近自分の顔を見ると思う。
孝也の顔も徐々に中性的になっている気がする。
こんなに目大きかったっけ?
肌こんなにきめ細かかったっけ?
たぶん、今の俺なら女装してもバレないで行けるじゃないだろうか……
(俺本当にどうしちゃったんだろう?)
小鳥のさえずりが聞こえる。
もう朝だろうか。
重たい身体に鞭を打って寝袋からでる。
横の寝袋を見るとエリルは既に起きているようだ。
(朝食の準備手伝わないと、ふあああ)
盛大な欠伸をしながらテントを出る。
「あれエリルがいない?」
周囲の木々を見渡すが人影はない、森の中で姿を消した場合考えられる事は2つだ。
魔物に攫われたかトイレだ。
前者なら深刻な事態だ。魔物の中には人間の女性を捕まえて孕ませる奴もいるらしい。
末恐ろしい話だがそんなどこぞのゲームのような事が現実にあるみたいだ。
エリルは相当強いから余程の事がなければ遅れはとらないだろう。
「周囲に戦った痕跡はなさそうだな」
でも心配だ、いくら強いと言っても可能性はゼロじゃない。
居ても立ってもいられず、周囲を捜索する。
テントの周囲を1周回っていると、木々と動物たちの奏でる協奏曲の中にふとびちゃびちゃと水の音が耳につく。
「この水の音どこから聞こえるんだろう?
近くに水辺なんてあったっけ?」
俺は音のする方へ恐る恐る歩み寄る。
自身の背丈程ある茂みをゆっくりとかき分けるとそこには――――
「えっ!? だれ、って孝也。きゃーーーーーーーーーーーーーーーーーー」
森にエリルの絶叫が木霊する。
そう、水浴びをしていたのだ。
濡れた髪、濡れた肌。
水分が日に照らされて滴が煌めき、いつも隠されている部分が露わになっていた。
エリルは頬を赤く染め、胸と股の当たりを手で隠しつつ上目使いでこちらを見ている。
「ご、ごめん。覗くつもりじゃなかったんだ」
上擦った声で視線を逸らしながら謝罪した。
正直、現実の世界で女性の裸を見たのは始めてかもしれない。
童貞ですからね……
「見た?」
「うし…ろすがたを…すこし見ただけダヨ」
まぁもちろん俺は紳士ですから彼女の形の良い胸や乳首、毛が生えてない股なんかは見てないし、
今だって前かがみになってはいない。
「えっち!!!! へんたい!!!!」
頭から湯気がでそうな程顔を赤くしたエリルがそう言った。
心読まれてますね……
俺の名誉挽回は難しそうだ。
でも1つだけ思う。
「きれいだ」
ぼそっと心の声が漏れた。
「あぅ」
小さく呟いたエリルは俯いてもじもじする。
その後しばらく謝罪を続け、
朝食を済ませた頃にはエリルも少し落ち着いたようだ。
「どうして? 覗いてたの?」
「いや、覗きが目的ではなくて……」
魔物に犯されてないか心配で…… とは言えない……
顔を上げるとエリルがこちらをジト目で見ている。
「あ、あの、なんていうか、ごめんなさい」
「もー、いいわ。心配してくれたのはわかったし、嬉しかったよ。
ありがとう」
徐々に小声になっていくエリル、最後の方はよく聞き取れなかった。
「えっ? 何?」
「なんでもないよー」
いつもの満面の笑みでエリルに抱きしめられた。
【ルナ視点】
その夜、寝袋に入るも昼間の刺激的な光景が目に焼き付いて中々寝付けなかった。
覗き見た身体や羞恥に悶えるエリルの姿が頭から離れない。
(可愛かったなー)
俺はエリルの事を姉みたいな存在だと思っている。
姉なんていたことないけど……
でも時より彼女が俺の事を異性として好いてくれたら……、そんな淡い感情を抱いてしまう事がある。
いやいや、これじゃあまるで俺がエリルの事好きみたいじゃないか!
そう考えてみるとドキドキが止まらない。
24年も生きてれば恋の1つぐらいした事はある。
もちろん片思いで終わったが……
この感情が恋愛感情なのは無意識に自覚していた。
(俺、エリルの事が好きなのかな?)
でもエリルの方は俺の事どう思ってるのだろう?
好意的な関係なのは間違いない、
でもきっとそれは恋愛的な感情ではなく家族とかに向けるような愛情だ。
踏み出してみるべきなのだろうか。
好きですって伝えたら答えてくれるかな?
でも断られてあまつさえ距離を置かれたら耐えられない……
エリルのことを考えると息苦しいくらい頭が一杯になる。
横で寝ている彼女の背中を眺めていると。
寝返りざま薄目を開けたエリルがこちらを見ている、俺が起きている事に気が付いたようだ。
やさしい笑みを浮かべた彼女が柔らかい声で言った。
「どうしたの?」
「ちょっと寝付けなくて……」
変に意識したせいか少し震えながらどもってしまう。
「何か怖い夢でみたの? こっちにおいで、一緒に寝ると落ち着くよ」
俺の様子を見たエリルは勘違いをしたようだ。
「おいで」と手招きをしている。
(どうしよう? 誤解だって伝えないと。
でもエリルとくっつけるのは嬉しいな、えへへ)
「じゃあ、私がそっちに行ってあげるね」
返答に戸惑っていると、エリルの方から俺の寝袋にやってきた。
どうやら怖い夢を見たが、一緒に寝てくれとは恥ずかしくて言えないと思ったようだ。
この寝袋は孝也が1人入っても少し余裕のある大きさだ。
小柄な女性2人くらいなら余裕で入ることができる。
(自分を女性の数に入れてしまった…… 、)
エリルの顔を間近に見つめながら抱き合いながら頭を撫でられる。
彼女の体温に香りが五感を刺激し、心地よい安心感が身体を包み込む。
誰かに寄り添いながら寝たのはいつ以来だろう。
小さい頃は母さんにくっつきながらよく寝たな記憶がある。
そういえば、家族はどうしているのだろう?
うちは母子家庭で、母さんと妹と俺の3人暮らしだった。
皆元気にしているだろうか。
この世界に来てからもう1か月以上経っている。
家族は捜索願とかだして心配しているだろうな。
元の世界の家族の事を考えだしたら急に不安になった。
母さんなんかは息子が急にいなくなったら精神を病んでしまうかもしれない。
家族唯一の男として期待されている面もあったし……
妹も俺がいなくなったら心配するだろう。
(もう会えないのかな? せめて無事であることを伝えられないかな?)
漠然とした不安を堪えていると、ふと目尻から滴が垂れるのを感じた。
「あれ?」
多少不安だと言ってもいつもならこの程度の事で涙なんて流さない。
そもそも、最後に泣いたのは中学最後の年くらいだ。
あれ以来、どんなに辛くても泣いた事はなかった。
でも今は零れ落ちる涙を止める事ができない。
「このくらい全然何とも思ってないのに、ぐす、な"みだが、とまら、ない」
「いいんだよ。泣きたい時は思いっきり涙を流して」
エリルがぎゅっと抱きしめる、俺は胸に顔を押し付け泣きじゃくった。
彼女は背中を擦りながら、いつまでも俺の感情の吐露に耳を傾けてくれた。
(俺本当にどうしたんだ? 感情がうまくコントロールできない……)
いつしか泣き疲れた俺は眠りに落ちていた。
それから毎日一緒に寝るようなったり、「意外と寂しがり屋なんだね」とからかわれたりする事となった。
完璧に黒歴史だぁーーーーーー
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アンバートンに到着した。
この町を出れば次は目的地学園都市フォルトガだ。
着実に目的地に近づいている。
アンバートンという町は俺が思っていたよりもかなり大きな街で驚いた。
どうもこの町は交易で栄えた町らしく。
町の中はクワナ村で見た露店のようなお店が所せましと並んでいた。
さすがは商業の町だ、お店の大きさや物の豊かさがクワナ村の比ではない。
何よりもお祭りのように広場周辺では音楽が流れ人々はダンスをしている。
活気と笑顔の溢れる街だった。
今エリルは学園都市までの旅に必要な物資を購入している。
俺は今回荷物持ちだ。
人ごみが多くて大きな荷物を両手に持ったままエリルの傍には行けそうにないので、
見失わないように適度に距離を空けて追いかけている。
今だってあそこに――
「おい、嬢ちゃん、ぺっぴんさんだね~。
宝石の試着会に参加するモデルを探しているのだが君どうかね?」
皮脂まみれの小太りの平たい顔のおっさんが俺の愛しのエリルに話しかけていた。
よくよく見ると所々に金のネックレスにルビー、サファイアだろうか。
色とりどりの宝石を身に纏っていた。
「いえ、結構ですので」
エリルが無表情のままきっぱりと断る。
「いや~。あなた程おきれいな方でしたら是非と思ったのですが残念です。
王宮に使える貴族たちも出席する試着会なのですが……」
最初は褒めて籠絡を狙い、次は貴族と接点を持つチャンスと唆す。
なんかきなくさいな。
「いえ、そういのは遠慮いたします」
苦笑したエリルがそう答え、足早にその場を立ち去ろうとする。
急に後ろから男2人が現れ1人がエリルの両腕を押さえつけた。
すかさずもう1人がハンカチのような物を――
「ぐは」
俺はハンカチを持った男を気で強化した拳で殴る。
男は一瞬苦悶の表情を浮かべた後力が抜けて倒れた。
油まみれの男が近づいた段階でエリルの元へ向かっていたがいかんせん人が多い。
なかなか、前に進めず時間がかかってしまった。
でもギリギリセーフだったみたいで安堵する。
「お前、誰だ!!」
もう1人の男がエリルを抑えつつ狼狽して叫んだ。
男の意識が俺に向いた刹那の隙をついてエリルは脇腹を肘で突くと、男は静かに崩れ落ちた。
「ひぃぃ!!」
小太りの男は無様に尻餅をつく。
「この私が誰だかわかっているのか!!」
「さぁ? 誰?」
俺が首を傾げていると。
「わしは、アンバートン領主。ルーカス様だぞ」
腰に手を当てふんぞり返りながら言った。
領主? 確かこの世界だと国が大きな法律を作って、
細かいルールは領主が決めるとか言ってたな。
つまり、「俺がルールだ! 俺に楯突くな」って言いたいのかなこのデブ。
「ふーん」
「なんだその態度は!? 不敬罪で逮捕するぞ、いいのか!!!」
顔を赤くして激昂する男は唾を飛ばしながら怒鳴っている。
(めんどうな奴だなー)
「聞いているのか!!!!!!!」
俺の胸ぐらを掴み睨んでいる。
それでも動じない俺に領主を名乗る男は俺を殴った。
俺は気功で身体を常時強化しているので痛くもかゆくもない。
でもこんな奴に殴られた事、俺の大切なエリルが襲われそうになった事に憤りを感じていた。
そんな感情からか、気が付いたら軽く領主を左手で押しのけた。
すると領主はずしんと尻餅をついて一瞬震える。
そして無様に鳴きながらよろめきながらも必死に逃げていった。
「ぶひぃぃぃぃ」
気功には相手を"威嚇する気"を操る技もあった。
この"殺気"とでも言うものは誰しもが無意識にある程度使えるが、
気功を扱う者は意識的に自身の持てる全ての"殺気"を自在に操る事ができる。
つまり、普通の人より脅す技術があるって事だ。
俺は"殺気"を領主に向けて押しのけたのだので、ビビって逃げたというわけさ。
「エリル大丈夫?」
「うん、大丈夫だよ。ありがとう」
エリルは衣服を整えつつ周囲を見渡した。
群衆たちは我関せずとばかりそそくさと俺たちの周りから離れていた。
俺はふと道端に落ちた本に視線を向けた。
「なんだこれ?」
俺は小太りの男の落とし物を拾う。
『三大禁呪』というタイトルの分厚い革製の本だった。
「エリル、三大禁呪って何?」
そう俺が聞くと一瞬思案するような素振りをした。
要約すると三大禁呪とはその名の通り3つの禁術のことだ。
1. 神卸
生贄を用いて神を召喚し、贄の身体と神を融合する魔法。
2. 死者蘇生
死者を甦らせ使役する。
3. 存在消滅
不可避の存在消滅魔法。死の魔法とも呼ばれる。
三大禁呪に分類される魔法はエルフが用いた古代の魔法で現在は使える者がいないそうだ。
だが歴史から学ぶという意味で、例え三大禁呪でなくても似たような魔法を行使することは大罪として罰せられるそうだ。
三大禁呪について語りながら街頭を歩いていると。
「やぁ、そこのお若いの。さっきは災難だったねぇ」
地面に座り込んだ、服もボロボロのやせこけた浮浪者が話しかけてきた。
彼は続けて言った。
「はやく、この町を出なさい。あの領主ルーカスは奴隷商をやっていてな。
気に入った女性を攫っては己の欲望のはけ口にしたり、そのまま売ってしまうそうだ。
奴が狙った獲物をそう簡単に逃がすとは思えない……
だから早く逃げるのじゃ」
じいさんの話によると領主は気に入った娘を館に監禁し、性的な行為を行っているようだ。
しかも、ただ単に性欲発散の道具としか見ていないようで、歯向かった娘や気に入らない子は殺したり、奴隷として売って利益を上げているようだ。
ひどい話になると身ごもった女性は子供をおろさせて奴隷として売り出すような事もする外道らしい。
「ええ、ご忠告ありがとうございます。私たちは旅人なのですぐにこの町を出るつもりです」
エリルがそう答えると、俺1つ疑問が浮かんだ。
「なぁじいさん、どうして俺たちにこんな事を教えてくれるんだ?」
「実はな。わしの娘も奴に奪われたのじゃ、当時のわしはまぁまぁの地位もあったのだがな。
奴に嵌められて娘は奴隷として売られ、わしは地位も名誉も失ったわい。
もうわしと同じように大切なものを失う人を増やしたくない……」
じいさんは顔を曇らせ震えた声で言った。
「じいさん、ごめん」
踏み込んではいけない話題だったようだ。
「気にせんでいい、それよりも早く町を出るのだ。急げ!」
じいさんに一礼をしてから俺たちは急ぎ足で町の外へ向かう。
目立った追っ手もなく門が目の前まで迫る。
その時だった。
「そこの者止まれ!!」
甲冑を来た男2人に行く手を阻まれた。
「領主様。こやつらですか、不敬を働く不届き者は」
その声に遅れて建物の陰から小太りの領主が現れた。
「そ、そうだ。私の友にはあの高名な青薔薇騎士団がおるのだ。
私が声をかければ騎士団の者はこうやって私を助けてくれるのだ。
どうだ、私に逆らったこと今謝罪すれば許してやろう?」
最初は裏返った声だった領主は虎の威を借る狐のように青薔薇騎士団の隊員の後ろに隠れると、
突如威張ったような口調になり口元を歪めている。
(気持ち悪い笑みだなぁ……)
にしても、まずいな。俺たちは青薔薇騎士団に追われている。
こんな所で身元がばれるのはよくない。
どうしたものか。
「お前!! クワナで我らの仲間を殺した魔族の大罪人だな!!!!!」
騎士団の1人がはっと気が付いたようだ。大声で怒鳴る。
クワナの時もそうだがなんでバレるんだ?
少し気を込めて騎士団の2人をみると――――
どす黒い気だろうか、いや魔力? なんだこれ……
普通の人とは異なる力を持っているのがわかった。
これで俺たちを見分けたのか?
俺の思案を他所に状況は悪化の一途を辿る。
もう1人の団員が言う。
「そうだ、こいつらだ! とうとう見つけたぞ、お前たち。
団長もこの町に居られるのだ覚悟しろ!」
さて、どうするか。横にいるエリルと目を合わせる。
(右側の騎士団は俺がやる、左はお願いできる?)
心でそう考える、これでエリルには伝わるはずだ。
アビリティは有効活用しないとな。
こくんとエリルが頷くと同時に、俺は右側の男の懐へ移動する。
縮地と呼ばれる、高速移動術だ。
普通は魔法で使うらしいが俺は気で行っている。
目の前の男は俺を排除すべく身体の前面から魔力を放出する。
おそらく魔力で相手を吹き飛ばすような技だろう。
縮地で回避しながら右に回りこむ。相手の背後を取ろうとするが、この男右手に持った剣を移動する俺に合わせて追撃してきた。
このままだと背中からもろに剣を受けてしまう。
男の視線を見ると俺の刀を見ていた。おそらくこの状況を回避すべく俺が武器を使うと思っているようだ。
ならば俺は背後を取ることをあきらめ、男の真横あたりから肘を使って腹のあたりの防具のない部分を狙って攻撃した。
腰につけている武器を使わず攻撃されるとは思わなかったようで一瞬よろめく。
その隙に追撃を与える。
「気功破」
気を纏った拳を男の横腹に叩き込んだ。
例え防具越しでもダメージは伝わるはずだ。
特にこの世界の防具は素材の強固さは俺の世界と変わらないが、
魔法攻撃に耐性のある装備が多いようだ。
でも俺の気功には魔法攻撃に対する防御力など関係ない。
「ぐ・・・・が・・」
膝をつき倒れまいと堪えているようだが、ダメージが大きかったようですぐに崩れ落ちた。
よし、こっちは大丈夫そうだ、エリルの方を見るとすでに男は吐しゃ物をまき散らしながら気絶していた。
何したんだよ……
「孝也、行くよ」
「お、おう」
俺はエリルの後を追ってアンバートンを後にした。
しばらく森を駆け抜けた。数刻が数時間に感じるほど走り続けた。
おそらくうまく撒いただろうと俺たちは足を止める。
「やっと、撒いたみたいだね、はぁ、はぁ」
俺は息も絶え絶えに一息つく。
エリルも同様に近くの木に腰かけ木製の水筒で水を飲んでいる。
「そうだね」
エリルは水筒を鞄にしまうとはっとしたような顔をして座っていた木から飛びずさった。
すると直前まで腰かけていた木は音を立てて崩れ落ちた。
「孝也ごめん、見つかったみたい……」
「仕方ないさ、それよりもどうしようか?」
俺たちの周りには5人の甲冑を着た剣と盾を持つ騎士たちに囲まれていた。
前方の茂みの奥からは2人の男が現れた。
右側の男はクワナ村で演説をしていた青薔薇騎士団隊長の"ハンス"だった。
彼はかなりの大男で自身の背丈ほどある剣を片手で持ち上げ、もう片方の手で盾を構えている。
左側にいる男はクワナで見た黒いローブを着た顔面がしわくちゃな男だった。
以前と変わらない、いや以前よりも濃厚で邪悪なオーラを纏った怪物は杖を構えて俺たちを凝視している。
「お前たち、魔族とそれに組する悪党を殺せ!!」
ハンスは大声を出し、険しい顔で部下たちに指示する。
5人の部下たちは揃って俺たちと相対し、臨戦態勢となる。
「エリル、まずは5人だけみたいだ。どうする?」
小声で作戦を話し合おうと声をかけてみたが反応がない。
どうしたのかと横を見ると、エリルはこわばった表情で少し震えていた。
今はやさしく励ます時じゃない、彼女の肩に手を置きつつ少し張りのある声で言う。
「エリル!」