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異世界召喚×魔族少女  作者: 古川一樹
変身と師匠
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狐耳の少女になりました

日が沈み始めた頃。

腕の機械式時計を見ると16時。

俺とエリルは野宿の準備を始めた。

夜の森は危険な魔物が多い。

だから日が沈む前に野宿の準備をするのが鉄則だそうだ。


エリルは魔法で火を焚き、料理を作る。

俺は寝床を確保するため布製のテントを広げ、四隅に杭を打つ。

テントは大人2人が寝る事のできるスペースがある。

今の俺と彼女が寝袋で寝たとしてもそこそこゆとりがあるはずだ。


普通であれば夜間は魔物が活発に行動するので見張りが必要だ。

だがこのテントは外に結界があるのだ。

テントを中心として半径30mと言ったところだろう。

結界の中なら安全との話だ。


一通り野宿の準備ができた。

日も沈み。森を闇が覆う。

少しずつ気温が下がってきたのか、肌寒くなってきた。

たき火を囲って、石を椅子の代わりにして向かいあって座る。

火ってのは偉大だな。


(あったけー)


=============================================================================


「今日は助けて頂き、ありがとうございます」


「気にしなくていいよ。人を助けるのは当然のことでしょう?」


彼女はローブを脱ぎ、近くの石に置いた。

改めて頭から足先まで見る。

かなり細身だった。胸はBカップといったところか。

白と茶色を基調とした。ワンピースのような服を着ている。

左腕は深紅の5cmくらいの幅のリボンが蝶々結びで結ばれていた。

風にリボンの端が揺れている。


エリルの方をみる。手で胸を隠し、ちょっと膨れ顔をしていた……


「申し訳ありません」と謝罪しながら思う。

やはり、白髪と赤い目が目立つ。

人によっては死をイメージするから不吉だと言う。

だが、俺には幻想的な色をした髪と強い意志を感じる瞳に見える。

何が言いたいかって? かわいいってことだよ!!


エリルは顔を赤らめながら、許してくれた。

ちょっと瞳がうるうるしてる気がするが、そんなに傷ついたのか!?

以後気を付けよう。本当に。


さて夕食だったな。

今日の夕飯は、ジビエという、うさぎの肉を火で炙り塩で味付けしたものだ。

味は牛肉っぽい感じ。美味しいぞ。

ただ、かなりパサパサしてる。口の水分が奪われる……


エリルは頻りにこちらを見ている。

さっきのセクハラか?それなら地面にデコをつけて謝るしかない。

社畜で鍛えられた。俺の土下座で。

それで許してくれなかったらどうしよう?

恐る恐る「どうしたの?」と聞くと、

少し慌て様子で気まずそうに「なんでもないよ」と笑って答えた。


これはあれか、彼女の意図を当てて返答しないと好感度上がらないやつか!


==選択肢1==

料理の味の感想を期待している。


==選択肢2==

やっぱりセクハラについて、土下座する。


==選択肢3==

とりあえず、スカートをめくる。


選択肢3はありえないだろう。選択肢2はさっき謝ったのをもう一度言うとくどい。

無言で食べてたからな、何か感想を言わないと。選択肢1だな。うん。


うさぎの肉をちょっと持ち上げて「美味しいよ」と伝えた。

短く「よかった」と言われた。

反応が鈍い。これは不正解だったようだ。

となると、あれか。スカートめくるしかないのか!!!!


「ねぇ、そろそろ、どうしてあんな場所にいたのか。教えてくれない?」


少し慌てた様子でエリルに話しかけられ思考を中断する。

そうだった。経緯を説明しなければ、ただの不審者だな。

テントに入り寝袋の支度をしながら、今までの経緯をかいつまんで説明した。


突拍子もない話だが彼女は真剣に聞いてくれた。

最初は鳩が豆鉄砲を食ったようだったが、


「異世界かー。にわかに信じられないけど君が嘘をついてないのはわかったよ」


と微笑みながら答えた。


(あれ、てっきりもっと疑われるかと思ったぞ?)


「学者としては、"どのように?"この世界に来たのか気になる」


そういえば、なんでこの世界に来たとか全然考えてなかったな。


「何か別の世界に行く方法はあるんですか?」


「いくつか仮説は立てられるけど確証がないから不確かなことは言えない」


てっきり答えがでるものではない、と思っていたが仮説はあるらしい。

タイムマシン的なもので世界間の移動ができるとか?


何にしても理解者を得たのはよかった。

特にメンタルが。ぼっちじゃないだけで漠然とした不安感はなくなる。

むしろ今はこの世界の事に好奇心がそそられる。

ほら、異世界トリップものって主人公が大概チート能力もってるじゃん?

俺も使えるならこの世界最高だろ!


とりあえず「メニュー」と念じてみた。

静寂。

あれ?手で操作する系?

手を上下左右に動かしてみるが何も起きなかった。


「何してるの?」


と不可解な面持ちでエリルが聞く。


「メニューがでないかな、と思いまして」


「めにゅー? 何それ?」


エリルは首を傾げている。


(あっ、メニューなんてこっちの世界に人に言ってもわかるわけないか)


「なんでもない」とごまかしたが、ちょっと変な人と思われてしまっただろうか。

外見・内面ともに紳士の俺とした事が厨二な展開に興奮してしまった。

まぁ異世界から来たとか話した時点で変人だがな……


そういえば、普通に会話してるけどこの世界にも日本語があるのか?


「エリルさん、この世界の言語は今話をしている言語以外にありますか?」


「エリルでいいよ?」とそれに敬語もいらないと言われた。

彼女の話によると、どうもこの世界には今話している言語(日本語?)以外ないらしい。


(なんだこの世界は日本語が共通語なんだ。てか、そんな世界あり得るのか?)


てっきり、魔法でどこかの猫型の機械タヌキの道具のように自動翻訳されてるのかと思ったが。

言語の壁がないようでほっとしたよ。この世界でも言語の勉強とかしくないわ!


そういえばイノシシを倒したあれ、間違いなくファンタジーな力ですよね?

「いやいや、ありえないだろー」と思いながらとりあえず聞いてみた。


「イノシシ、どうやって倒したの?」


「魔法だよ」


彼女は指先に炎を灯して見せてくれた。

俺は目をぱちくりさせて彼女を見る。


「君の世界では魔法はないの?」


俺が頷くと彼女もそんな世界があるのかと驚愕していた。


俺は彼女に元の世界に魔法はなく。科学技術で生活している事を話した。

エリルは終始寝袋から身を乗り出し聞いていた。


話しながら俺は思う。


(魔法があるのか。絶対学んでやるぞ。どうやらチートはなさそうだが、もしかしたらこの世界でも上位の魔法使いの素質があるかもしれない。そうでなくても元の世界に戻れば魔法使いは俺だけだ!!エリルは魔法使いみたいだし弟子にしてもらおう)


ある程度話題が尽きたところで本題に入る。

寝袋を出た俺はエリルの方を向き正座した。


「俺に魔法を教えてください」


「どうして?」


「この世界では魔法が普通なんですよね?けど俺は使えない。使えないままこの世界で生きるのは大変だとも思います」


寝袋から出たエリルはお母さん座りをしている。

真剣な面持ちで「ふん、ふん」と頷く。


「確かに魔法が使えない人は少ないよ。だから魔法は使えるに越したことがないね。でも使うにはきびしい修行をしないといけないよ。

特に君の世界では魔法も魔物もいないみたいだけど、この世界は魔法で魔物と戦うよ。戦ったことのない人を1から育てるわけだから血の滲むような努力が必要だよ。それでも学びぬく覚悟はある?」


そんなに大変なのか。

でも、このままだと誰かに守ってもらわないと何もできないだろう。

何もできないってことはこの社会でも底辺確定だろう。

絶対に嫌だ。

異世界に来てまで地獄なんて。


真っ直ぐと彼女を見つめ、頭を下げて言った。

土下座。俺が考える最上の誠意を示し、口を開く。


「それでも、魔法が使いたいです。修行をお願いします」




しばしの沈黙。

見定めるような視線を感じる。






「わかった、がんばろうね」


エリルは満面の笑みで手を差し伸べた。

俺は彼女の手を握り、「はい」と力強く答えた。


そんな俺に彼女は付け加えて言った。


「もし、君が修行しないって言ったらどうしようかと思ったよ。お金か戦う術を持ってないと、この世界では生きられないに等しいからね」


開いた口が塞がらない。もしかして俺のターニングポイントだった感じ?


そういえばと。「魔物とは何です?」と疑問をぶつけてみた。

要約すると、俺が襲われた巨大イノシシが魔物だそうだ。

元の世界の動物とは少し異なる姿にちょっと特殊な能力を持ているようだ。

もちろん、元の世界でいう普通の動物もいる。


ついでにあのイノシシが突進すると50mの幹の大木も粉々とか……

なぜそんな威力になるかと言うと、風の魔法で自身を強化しているとのこと。

そんな動物を一瞬で倒す魔法。末恐ろしいな。

なおさら学ばない理由はない。生きたいなら。


==================================================================================


この世界と元の世界の話をしている内に寝てしまったようだ。

寝袋はこちらの世界と同じようにふかふかしていた。

なんかの動物の毛と皮らしいが忘れた。

寝心地は最高だった。

ただ、少し背中が痛い。地面がゴツゴツしているからだろう。


寝袋を出て、横を見るとエリルが小さな寝息を立てている。

目を覚ますため、静かにテントを出た。

朝日が東の空から顔を出している。

今日も晴天だ。心地ちよい風が流れる。

目を閉じ、背筋を伸ばしながら深呼吸をした。


しばらくして、エリルが起きた。

軽くうさぎの干し肉を胃に詰めて、魔法の特訓は始まった。


「まず魔力操作を覚えよう」とエリル先生は言った。

座っている俺の背中に、彼女は手を当てて魔力を流している。

俺はそれを感じればいいらしい。


背中から暖かい感触が伝わってくる。


(こ、こっこれが女の子の感触かー。うへへ)


俺の雑念が伝わったのか。「集中しなさい」と怒られてしまった。


余計な思考を排除する。女の子のことなんか考えるな。

ただエリルの手に集中するんだ。このぷにぷにやわらかな手を!

目を閉じて集中だ。


1時間くらい経過した頃。

徐々にエリルの手から、手の温度とは異なる"暖かさ"が身体の芯に入ってくる。

そんな感覚に気が付いた。

そういえば、この世界に来た時も同じ感覚だったな。

そんなことを考えていると、エリルから「できたね」と嬉しそうに笑った。


もっと時間がかかると思ったが案外すぐにできた。


(てか、俺って才能ある?)


両手を挙げて喜んだ。


一旦休憩を挟む。

次に感じた魔力を操作する段階に入った。

魔力をどこかへ放出すればいいとのこと。

魔力を感じるのは鍛錬開始1時間くらいでできた。

この調子なら今日中に魔法が使えるかも?


(魔力操作も簡単かも?)


正直なめてました……

魔力が全然操れないのだ。

身体の芯にある"暖かさ"を身体のどこかへ移動させようとすると消えてしまう。

2時間くらいだろうか。経過したあたりでエリルが言った。


「おかしいな。普通は魔力を感じられたらすぐにできるんだけど。」


(えっ!?まじですか。俺全然できそうにないんですけど……)


かなり落ち込んだ。


(やっぱり才能ないのかな)


一旦休憩して、練習は再開した。

だが、身体の芯から少し離れると魔力が消えてしまう。

魔力が芯から身体の外へいかないぞ?

その事をエリルに相談すると、普通はそのまま魔力が放出されるらしい。


(なんでだろう?)


ちょっと飽きてきたので、身体の芯に集まっている魔力を芯の部分に集めまくってみた。

身体の芯の周囲なら動かせるみたいなので、まずはここで自由に動かしてみる。

徐々に身体の芯の部分に魔力が集まるのがわかる。

段々熱くなってきた。


(よし、このまま。魔力を集められるだけ集めて外に放出したら魔力が消失する前に外に出せるかも?)


ちょっとした思い付きだが試してみる価値はある。

何事も挑戦だと実行してみると。

エリルが慌てた様子で「ストップー」と大声で俺を叩いてきた。

そこで自身に異変が起こっていることに気が付く。

自分の周囲に光が集まっていたのだ。


(なんだ!? これ?)


魔力の操作を止める。

あれれ、光が徐々に強くなってるぞ?


「エリルーーーーーーーーーーー。光が止まらない」


俺は焦って叫んだ。

身体の芯にあった"暖かいもの"が自身の周囲を覆う。

このままだと、この光の熱で(火炙り状態になるのでは)と不安になる。


「落ち着いて。大丈夫だから。さっきみたいに魔力をゆっくり外に放出して!」


言われた通り、やってみる。

だが変化はなく、光は一段と強くなり俺の身体を包んだ。

その瞬間。






















光は収束した。


「ふぅー。なんとかおさまった」


何事もなかったように周囲の光は霧散し、俺は安堵する。

杞憂に終わって本当によかった。本当に。

エリルを見つめると、腰を抜かしていた。

ぺたんと地面に座っていた。


「どうしたんですか?」


(若干声高くなってね?)


確かに若返って少し声高くなったが、また一段と高くなった気が…


最後までお読みいただきありがとうございます!

よろしければ次回もご覧になってください。

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