第九十七姉「ほら、今の聞きましたノエルさん。さきねぇと同レベルですよ?」
評価を入れてくださった方が何人も。ありがとうございます。
きっと姉スキーの援護射撃ですね!同志たちの支援に感謝する!敬礼!ビシッ!
泣きそうな顔で俺を見るクリスくん。
どないせぇっちゅうんじゃ。
「は、話を聞いてくれ!」
「今から食事の時間だから無理。」
「しょ、食事とボクの話と、いったいどちらが大事だと「家族との食事に決まってるだろうが。バカなのかお前は。」
「・・・・・・な、なら食事が終わるまでここで待たせてもらう!」
一蹴するノエルさんに対し、玄関前で体育座りをしだすクリスくん。
「ヒイロ、ムラサキ、ご飯にするぞ。今日は珍しく海の魚を買ってきたぞ?」
「OH-!ディスイズザシーフィッシュ!刺身にして食べましょう!」
「サシミ?どんな食べ方なんだ?」
「刺身はね~」
きゃっきゃしながら食堂へ向かうさきねぇとノエルさん。
「あー・・・食べ終わったら、話だけでも聞いてもらえるようにノエルさんに頼んでみますよ。」
「!? ほ、本当か!?助かる!下々の民にもキミのような善人がいるのだな!頼んだぞ!」
「話を聞いてもらうようにお願いするだけですからね?弟子とかじゃなく。そこんとこヨロシク。」
「ああ。まずはそこからでいい!ボクの実力を見れば、『破軍炎剣』もボクを弟子にしたいと思うはずだ!」
「・・・はぁ。」
すげー自信だなおい。
こういうエリートっぽいやつって、マインド脆そうだよな。
ノエルさんにボロクソに言われて自殺でもしないといいが。
「じゃあ、また後で。」
「ああ、後で!」
なんか笑顔でめっちゃ手振ってるんだけど。懐かれた?
とりあえずご飯にするかと思い、食堂へ向かった。
結局、お昼は刺身ではなく焼き魚になった。
理由はわさびとしょうゆがなかったからだ。ちくしょう!
今度ノエルさんに王都に連れて行ってもらって探してこよう。
日本人としてわさびとしょうゆは譲れん!
和気藹々と昼食を食べ終わる。
「あのー、ノエルさん。外で体育座りしてる子なんですけど・・・」
「放置でいいだろう。」「放置でいいっしょ。」
「いやー、なんかかわいそうなんで、話だけでも聞いてあげてもらえませんか?」
俺達姉弟に甘いノエルさんにしては珍しく渋い表情で、顔に『えーめんどくさいーい・・・』と書いてある。
「いや、だって二回も鼻血ブーさせた上で気絶させてるんですよ?ほんと、ちょっとでいいんで。」
「鼻血ブーさせようと思ってやったんじゃなくて、向こうが勝手に鼻血ブーしただけじゃない。別によくない?」
「ほら、今の聞きましたノエルさん。さきねぇと同レベルですよ?」
「む・・・それは困るな。仕方ない、かわいいヒイロの頼みだ。軽く話だけは聞いてやるか。結果は『ノー!』だが。」
「ええ、別に弟子を取れなんていいませんから。ありがとうございます。さすがは俺の尊敬するノエルさん!」
「全く、困ったおと、んん。弟子だ。」
困ったといいつつ、ノエルさんは満面の笑みを浮かべてニヤニヤしていた。
この人、ほんと俺とさきねぇのこと大好きだな。
席を立ち、玄関に向かう。
外には相変わらず体育座りのままのイケメンがパンを齧っていた。
「クリスくーん、お茶飲み終わったらノエルさんが話だけは聞いてくれるって~。」
「!? ごほっごほっ!お、おお!本当か!協力感謝する!」
でたー、イケメンスマイル!このレベルのフェイスを持ってたら人生バラ色だろうな。
「とりあえず、クリフレッド家の歴史とか語りだすのはNGで。単刀直入に用件を言ってね。これ以上はかばいきれないからさ。」
「なるほど・・・心に留めておこう。もし王都にくることがあったらクリフレッド家を尋ねてくれ。家族がなんと言おうと、キミのような素性の知れない馬の骨でもボクは歓迎しよう!」
「・・・うん、ありがとう。」
悪気はないんだろうな、きっと。
ランチ後のティータイムが終わり、外に四人が集う。
ちなみにノエルさんが『他人、しかも貴族を家に入れたくない』との理由で屋外での話し合いになった。
「はじめまして。クリス・ウル・クリフレッドと申します。単刀直入に言います。あなたは天才であるこのボクを弟子にするべきです!」
なんなんだよこいつはぁぁぁぁぁぁ!空気読めやぁぁぁぁぁぁ!
俺があれだけ骨を折って話し合いの場を作ってやった意味、まるでなし!
ノエルさんの血管も絶賛ピクピク中だし、さきねぇは笑いを堪えてピクピク中だ。
「・・・な、なぜ私が貴様のような貴族のガキを弟子にしなければいけんのだ。魔法学校にでもいってろ。」
「私は既に魔法学校に在籍中です。ですが、学校のレベルの低さに嫌気がさしたのです。天才であるこのボクの相手が務まる者がいないため、『破軍炎剣』を家庭教師として雇おうを思い来ました!」
「・・・・・・」
ノエルさんは完全にシラケ顔だ。
さきねぇに至っては地面に穴を掘り、その中に向かって『王様の耳はロバの耳ー!』と叫んで大爆笑している。意味がわからん。
「わ、わたしは自慢ではないが生まれながらに魔法力C・魔法量Cだ!これからもまだまだ伸びる!弟子にして損はないはずだ!」
・・・なに?ナチュラルで総合魔力C?エルフ族の麒麟児といわれたノエルさんでも最初は魔法力B・魔法量Bだったはず。人間族で総合魔力Cということは、こいつ、マジで天才だったのか。
「ふむ・・・」
あれ?さっきまで『さっさと帰れクソガキ』って感じだったノエルさんが考え込んでるぞ?
「・・・よし。お前の弟子入り、考えてやらんでもない。」
「ほ、本当か!?」「えぇ!?」「はぁ?」
驚く俺たち姉弟。どうしちゃったんだ?Mウイルスにでも感染してしまったんだろうか。かゆうまなのか。
「ただし、条件がある。ここにいるヒイロと魔法で勝負しろ。ヒイロに勝てたら考えてやろう。」
「ちょ!?な!?ノエルさん!?!?」
「ほぅ、キミは召使ではなく弟子だったのか。」
無茶ぶりすぎ!こいつ総合魔力Cの天才エリート様だぞ!?
勝てるはずないじゃん!
「・・・ふふ、なるほどね。一番弟子より優秀な弟子をとってしまったら一番弟子の立場がないものな。勝負をすることでどちらが上かをはっきりさせよう、というわけですね。かまいませんよ。」
「決まりだ。勝負は今から裏の川原で行う。」
「今から!?作戦会議時間とか必要じゃないっすか!?」
「必要ないさ。さぁいくぞ!」
上機嫌なノエルさんに連れられて裏の川原へ向かう俺たち。
無理だよ・・・こんなのってないよ・・・。
川原に到着し、向かい合う俺とクリスくん。
「キミには悪いが、勝たせてもらうよ。大丈夫、貧血で倒れたボクを介抱してくれたり、毛布をかけてくれたり、『破軍炎剣』に口利きしてもらったりと恩がある。手加減はちゃんとしてあげるから心配しないでいいよ。ボクの優しさに感謝するといい。」
「はぁ・・・」
ため息しかでない。勝てっこねぇよ・・・
「ヒロー!気合いれてけー!無様な姿見せたら殺すわよー!そいつを!」
「ぼ、ボクを!?」
殺害予告をされ、キョドるクリスくん。
・・・仕方ない、やるしかないか。
赤い人だって言ってた。性能の違いが戦力の決定的差ではないって。
まぁ負けたけどな、あの人。
「ぼそっ(エルエル、ほんとに大丈夫なの?もしこれでヒロが大怪我でもしたらあいつを殺した上で、エルエルも許さないわよ。」)
「ぼそっ(まぁ見ていろ。面白いものが見れるはずだ。)」
さきねぇとノエルさんがひそひそ話をしているみたいだ。
表情から察するに、『もしあいつがヒロに怪我でもさせたら、あいつの全身の骨という骨を砕くわよ!』とでも言っているのだろう。
ノエルさんが腕を組み、俺とクリスくんを順に見る。
そして。
「制限時間は15分とする。では、両者、見合って。・・・始め!」
戦いの火蓋が切って落とされた!
ここまでお読みいただきありがとうございました。
ご意見、ご感想ありましたらよろしくお願いいたします。
まさかのヒロくんVS天才魔法使い!
このまま壮絶な魔法バトルに突入してしまうのか!?
まぁそこはあねおれなんでね。うん、まぁそんな感じですよ。




