第九十五姉「玄関でお経唱えだした。」
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多くの方にブクマだけでなく評価もいただけて感無量であります。
ムラサキお姉ちゃんもノエルさん宅で、喜びの『敦盛~ATUMORI~(2014.ver)』を歌って踊り狂っておりました。
第十章のはじまりでございます。
一応全5話を予定しておりまして、第百姉でまた『よくわかるあねおれ2』でもやりたいなって(笑
完全に自己満足ですけどね!ヒャッホー!
今日は仕事にもいかず、家でまったりと優雅なティータイムを楽しんでいた。
まぁノエルさんが森の結界のメンテナンスででかけているため、お留守番なのだが。
すると。
コンコン
ドアをノックする音が聞こえたので返事をする。当たり前だ。
「はぁーーぃ・・・え?」
が、返事をしてから気がついた。
ここはノエルさんちだ。覚えている人はいないかもしれんが、周囲には二重に人払いの結界が張られている。
低レベルではこの家にたどり着くどころか、ノエルの森(仮称)にはいることすらできないはず。
にも関わらず、今ノックの音が聞こえた。
つまり、誰かが結界を抜けてここまできたということだ。
この世界に来て数ヶ月経つが、初めてのことだ。
さきねぇに目をやると、さきねぇも目をパチクリさせている。かわいい。
「ここに高名な『破軍炎剣』が住んでいると聞いて尋ねて来た!もし噂どおりの強さを持つならば、このボクが弟子になってやろう!」
そんな感じで、また新たな騒動が発生した。
「・・・留守か。まったく、このボクが足を運んでやったというのに。」
「あ、いまーす!いますよー!ちょっと待ってくださーい!」
なんか嫌な予感がするが、ノエルさんのお客様ということでドアを開ける。
そこには、やや幼さが残る顔立ちの中性的な金髪イケメンがいた。クソが。
「む、いるなら早く出ろ。玄関前でボクを待たせるとは失礼なやつだな。」
「はぁ、すいません。(ウザいなこいつ。)えっと、どちら様でしょうか?」
「ん?ふふん、聞きたいか?何を隠そう、ボクはあの由緒正しきクリフレッド家の誇る天才魔法使い!クリス・ウル・クリフレッドだ!」
「・・・はぁ。」
ずいぶんと態度でかいな。早くノエルさん帰ってこないかな。こいつ、めんどくさそう。
俺の返事にクリスくんはムッとしたようだ。
「キミ、まさか由緒正しきクリフレッド家の名を知らないわけではあるまいな?」
「はぁ、すいません。知らないです。」
「なんということだ・・・こんなド田舎に住んでいるとボクのような高貴な人間の名すら知りえないとは。いや、君を責めまい。悪いのは君ではなく、君の頭の中身だ。優しいボクに感謝してくれてもいいよ。」
めんどくせぇ!
しかも結局『俺の頭が悪い』っていってんじゃねぇか!
こういう頭がちょっとアレなやつには、同じようにアレな人をぶつけるに限る。
と思い、後ろを見ると、姉の姿が見えなくなっていた。
・・・あの女、逃げやがった!
「? どうしたんだ?君は召使か?とりあえず『破軍炎剣』に会いたいんだが。」
「召使というか、ノエルさんちに居候させてもらってるものです。あと、ノエルさんは今でかけてますよ。そのうち戻るとは思いますけど。」
「そのうちとはいつだ。」
「え。だからそのうちですけど。今日中には。」
「だから!そのうちとはあとどれくらいの時間だと聞いている!」
めんどくせぇぇぇぇぇぇ!!
なんなのこの典型的な『融通の利かないダメ上司』みたいなの!
「いや、わかんないですよそんなの。本人が『早く戻るよ』っていってただけだし。」
「全く、主の帰宅時間もわからないとはダメな召使だなキミは。もう少し頭の回転を早くしたまえ。優しい私の忠告だ。ありがたく受け取れ。」
うわぁぁぁぁぁぁぁめんどくさいよぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!
頭の回転がもっと早くなってもノエルさんの帰宅時間を正確に当てるとかできないYO!
それできたらもうそいつエスパーじゃないですかー!
しかも『ふふん、下々の者相手に優しい言葉をかけるボク、かっこいい』みたいな顔してるんですけど。
なんかもう、ムカツクとかじゃなくて早く帰ってほしいわ。
「とりあえず、家の中に入らせてもらうぞ。」
「え、無理です。」
とりあえず、通せんぼする。
「・・・入らせてもらうぞ。」
「無理ですって。」
クリスくんが右にずれたので、俺も右に移動する。
「・・・入らせてもらうぞ!」
「無理。」
今後は左にずれたので、俺も左に移動する。
「なんなんだキミは!邪魔だ!どきたまえ!」
「いや、いきなりやってきた知らない人を家に入れるはずないじゃないですか。」
「だから!ボクはクリフレッド家の人間だと「だから知らないですって。しつこいですね、警察呼びますよ?」
「ケ、ケイサツ?」
あ、この世界、警察ないんだった。アルゼンにいけば警備の人がいるけど。
「とにかく、知らない人を家に入れるはずないでしょ。」
「ならボクはどうしたらいいんだ!」
「知らんがな。」
「このボクがどれだけ苦労してここまで来たと「それはお疲れ様です。では。」
バタン。ドアを閉める。ガチャ。鍵、OK。
直後にドンドンドン!とドアが激しい音を立てる。
「ま、待て!開けろ!ボクを誰だと思っているんだ!?」
「現時点では正体不明の不審者だと思ってます。近くに警備兵がいたら『おまわりさんあの人です!』って言うレベルの。」
「ふ、不審者!?このボクが!?クリフレッド家の人間を不審者扱いとは無礼すぎるぞ!」
「はぁ・・・じゃあ聞きますけど、あなたは自称貴族の見知らぬ人間がいきなり家にやってきて『家に入れろ』と言ってきたら入れるんですか?」
「・・・入れないな。」
「でしょう。そういうことです。」
わかってくれたようで何よりだ。よかったよかった、めでたしめでたし。
「ま、待ってくれ!確かにキミの言うことにも一理ある!だが、それはキミがクリフレッド家を知らないからだ!クリフレッド家は今から遡ること100年以上前に初代クリフレッド家当主~」
一理どころか二理も三理もあるっていうか、むしろ真理っていうか。
つーか、いきなりお家自慢始めやがったなにこのひとこわい。
ロビーに戻り、お茶を飲む俺。
「終わった~?」
隣の部屋からにょきっと顔を出すさきねぇ。裏切り者め。
「玄関でお経唱えだした。」
「完全に変質者じゃない。呪われてるんじゃないの?シャ○クでも使ってあげれば?」
「・・・シャ○ク!」
「ちょっと待てなんで今私に使った。」
「こうかはいまひとつのようだ。」
「効くか。つーかマジでなんだったの?」
一連の出来事を説明する。
「めんどくさ!なにそいつめんどくさ!」
「その怪人めんどくさ二号が今玄関で『我が家の歴史』を語ってるんだよ。」
「興味ね~。つーか怪人めんどくさ一号は誰なの?」
「・・・」
そっと目を逸らす俺だった。
ドンドン!
激しくドアを叩く音が聞こえる。
「おい!聞いているのか!感動しただろう!」
「「聞いてま~す。感動しました~。」」
「よし、では次に~」
次!?次に移っちゃったよ!?
「・・・どうする?」
「・・・・・・」
さきねぇは無言で席を立ち、ドアに向かって歩いていく。
何をする気だ・・・。
そして。
「その時に国王へい「近所迷惑!!」がっ!?」
さきねぇが全力でドアを開ける。というか、ぶちかましをかける。
お、男らしい!さすが俺のお姉さまや!
ガンッ!という音がして、次にドサッ!という音が聞こえた。
そして聞こえなくなるクリスくんの声。
そぉ~っと見に行く。
少し離れたところに仰向けで倒れているクリスくんの姿が。
顔が赤くなっているし鼻血もでてるし、目が(☆ω☆)って感じでチカチカしてる。
こんな漫画みたいな人、いるんだな。初めて見た。
写メがあったら確実にてぃろり~ん!している。
少しでも話を聞かせようと、ドアの目の前に立っていたのが運の尽きだったなクリスくん・・・。
さすがにそのままではかわいそうなので、木陰に連れて行く。
風邪をひかないように毛布をかけてあげる俺、優しい。
「ヒロー、≪聖杯水≫ちょうだーい!」
「あいよー。」
そのまま家に戻り、お茶を楽しむ俺たち姉弟だった。
ここまでお読みいただきありがとうございました。
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