第九十四姉「そういえば君はムラサキの実弟だったよね・・・久しぶりにその事実を思い出したわ・・・」
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感謝感激雨あられでございます。
この『あねおれ!』を読んで姉属性に目覚めてくれた方がいらっしゃれば幸いです。
「よし、次は私達が反撃する番ね!ヒロが考えた例の作戦、いくわよ!」
「うっし、やるか!でも、あくまで最終手段だからね。」
「わかってるって!」
意気揚々と出発する姉弟であった。
テクテクと牢屋にむかって歩いていく俺。
騎士役が俺に気づき捕縛体勢をとるが、関係なく近づく。
「えっと、牢屋ってここでいいんですよね?中入りまーす。」
有無を言わさず円陣の中に入り座りこむ。
「みんなお疲れちゃーん。」
「わ、若頭も捕まっちまったんですか?親分は!?」
「あーだいじょぶだいじょぶ。さきねぇはまだ健在です。俺たちは座してさきねぇの帰還を待つだけですよ。」
「落ち着いてますね若頭。俺らも見習わないとな。」
先に捕まっていたフィンガーファイブたちはウンウンと頷いている。
・・・見習うところなんてあったか?まぁいいや。
つーか、いつのまにか俺、若頭になってたのか。
もはや盗賊じゃなくてヤクザさんじゃないですか。ムラサキ組。
そのまま大人しく牢屋にはいった俺を見て、騎士たちも安心したようだ。
暴れるとでも思ったのか?失敬な。さきねぇじゃあるまいし。
「しかし、暇っすねー。」
「そうだね。なんかゲームでもやろうか。」
「ゲームって・・・なんも道具ないっすよ?」
「大丈夫、指スマだから指があればできるよ。」
「ユビスマ?なんすかそれ。」
「指スマ知らないか~。」
これが、文化の違いか・・・まぁトランプすらなかったしな。仕方ないか。
「えっとねー・・・」
~10分後~
「いっせーのー、5!」
「うわーやっちったー!」「若頭強いっすよー!」「そこで5いきます!?」
「いやーはっはっは。運だよ運。さぁあと一本やで~!」
ナイシーそっちのけで指スマを楽しんでる俺たちがいた。
後から捕まった盗賊たちだけでなく、牢屋番の騎士たちまで興味津々で俺たちの遊びを眺めている。
「けっこう人増えてきたから、グループ分けるか。えっとひ~ふ~み~・・・十四人か。じゃあ俺たちは2:2:2で分かれよう。で、5人組二つと4人組一つ作ってみんなでやろうか!慣れたら各班最強の一人を選出して決勝戦だ!」
「「「「「うっす!」」」」」
ばらけて周りのやつらを吸収する。
みんな興味をもっていたので、真剣に説明を聞いているようだ。
「よし、では第1回指スマ杯!始め!」
「「「「「「「「「「おぉ!」」」」」」」」」」
運命の一戦が始まった!
「第1回指スマ杯、優勝は~、俺ー!いぇー!」
「若頭強すぎっすよ・・・」「さすが発案者。」「ヒイロさん、頭良いんですね!」
口々に俺を褒め称えるみんな。
ごめんね、オリジナルじゃないの。しかも、マジで運が良かっただけで頭の出来関係ないの・・・
でも、この世界の住民は基本的に単純というか素直なためすぐにフェイントに反応してくれるので、こちらとしてはいじりがいがあって楽しいです。
「・・・えっと、ヒイロくん。何やってんの。」
「あ、ラムサスさん。牢屋生活が暇だったので暇つぶしをしてました。」
「この状況を見て、よくそんなこといえるね!」
辺りを見渡すと、ナイシー参加者だけでなくアルゼン住人たちもあちこちで指スマを行っている。
「平和でいいじゃないですか。」
「こんな老若男女誰でも参加できる簡単で面白いゲームがあるなら最初から提案してくれよ!ナイシー大会がおまけみたいになってるよ!」
「そんなことないっすよー楽しんでますよー?あ、次メンバーシャッフルね。」
「そういえば君はムラサキの実弟だったよね・・・久しぶりにその事実を思い出したわ・・・」
「何その思い出し方。」
確かに騎士の本拠地にも関わらず、みんな指スマやってるけどさ。
でも、冒険者とか住民とか関係なく楽しめてるみたいだから、当初の目標は達成してるのではないか?
「あー残り時間ってあとどれくらいですか?」
「あと15分だね。ちなみに残り一人。ムラサキさんだけ。」
「え!?もう二十三人も捕まってるの!?いつのまに!?」
「ほら、把握してない・・・」
「あ、あはは~。」
ジト目のラムサスさんから目を逸らす俺。
危ない危ない。
「みんなー!残り時間、あと15分だってー!いったん指スマやめてナイシーに戻るよー!」
「はーい!」「ういっす!」「了解です!」
俺の声に、捕まった盗賊たちだけでなく牢屋番からも返事があがる。
いや、牢屋番はちゃんとやってなきゃダメだろう。
残り時間は5分を切った。あたりは人の多さに反比例し、静寂を守っている。
なんだかんだいいながら、みんなナイシーの結末をドキドキしながら待っているようだ。
そして。
「ムラサキさん捕まえたー!」
遠くから、そんな言葉が響いた。
「なん、だと・・・?まさか、さきねぇが・・・?」
「親分が捕まった!?」「嘘だ!」「そんなはずねぇ!」「やつらは俺たちを騙そうとしている!」
一斉にざわつきだす盗賊たちと広場。
「ラムサスさん、一応カウントだけはとっておいたほうがいいんじゃないですか?」
「うん、そうだね。カウントゼロになってから広場に連れてこられたほうが小生意気なムラサキがさらし者、おっと。雰囲気が出るよね!」
「・・・・・・」
・・・クククク。
「では、ムラサキさんが来るまでにカウントを取りたいと思います!ひゃくー!きゅうじゅうきゅうー!きゅうじゅうはちー!・・・」
~以下略~
「じゅうさーん!じゅうにー!じゅういちー!残りはみなさんご一緒に!」
ひょいっと。
「じゅー!きゅうー!はーち!ななー!ろくー!ごー!よーん!さーん!にー!いーち!ゼロー!!!しゅうりょーーぅ!」
ワァァァァァァァァァァァァァァァァァ!
「あ、来たぞ!」
その声に皆が反応する。通りの向こうからはさきねぇを捕まえたであろう面々が堂々と歩いてきた。
・・・なんか、さきねぇを連行してる騎士たち全員、その辺のF級魔物と戦ったよりもはるかに大きなダメージを負ってるんですけど。さきねぇ何したんだ。
すると、こちらに顔面がボコボコのスレイがやってきた。マジで何したんだ!?
「ラムサス支部長!賊の大将を討ち取りました!」
「うむ、ご苦労!」
ガッチリと握手をかますラムサスさんとスレイ。
まわりも拍手で迎えている。
「お、親分!」「親分は頑張りました!「俺たちが情けないばっかりに・・・!」
一方の盗賊側は項垂れて顔を見せないさきねぇを見て男泣きだ。
ちょっと見ててむさ苦しいな。
「えーでは!第一回ナイシー大会!勝者はー、き「ちょっと待ってくださいなっと。」
ラムサスさんが騎士の勝利宣言をする前に音声拡張魔法具を奪う。
「ラムサス支部長?盗賊側の勝利条件はなんでしたっけ?」
「・・・え?捕まらずに時間外まで逃げ切ること、だろう?」
「ええ、そうですね。では、騎士さんたちに質問です。・・・私、ヒイロ・ウイヅキを直接捕まえた人、手を挙げてください!」
・・・・・・シーン・・・・・・
ざわざわざわざわ!
「くふふふふふ、あーっはっはっはっはっは!」
突然、さきねぇが顔を上げて大爆笑しだす。
「ま、そりゃそうですよね。だって俺、捕まってませんから。」
「「「「「「「「「「・・・・・・はぁ!?!?」」」」」」」」」」
騒然としだす広場。
「いや、だって牢屋に入ってたじゃないか!」
「『捕まっていない盗賊が牢屋に入ってはいけない』なんてルール、ありませんでしたよね?」
「・・・・・・い、いや、でも、牢屋に入っていたら捕まったのと同じじゃ!?」
「ちなみに、カウントダウン10秒前で牢屋からでてますよ私。ノエルさんが証人です。」
ふふふ、事前にノエルさんに俺の動きを見張っているようにお願いしておいたのだ。
ビックリしたラムサスさんが大会の終わり間近に広場に来ていたノエルさんを見る。
「ああ。ヒイロは確かにラスト10秒前でそこの円からでていたぞ。」
「・・・・・・・・・・・・」
ラムサスさん、絶句。
「捕まった盗賊は二十四人。そしてラストサムライが・・・この俺です。」
「つ~ま~り~?優勝は~?」
「「紫影旅団の勝ちー!」」
俺とさきねぇの万歳しながらの嬉しそうな宣言に、その場にいた全ての人間が唖然とする。
そして、誰もがこう思った。
『汚ねぇ!』と。
結局、獲得した賞金はこの場にいる全員で飲み食いしようと提案(足りない分は無利子無担保のニコニコノエルローン利用)し、『だったら、まぁいいか』的な流れになりドンチャン騒ぎとなった。
ただ、偽逮捕作戦や『攻撃じゃない、体がぶつかっただけ』という名目のさきねぇの殺人タックル、ゲーム外協力者の存在などの卑怯なやり口により、次回から俺たち初月姉弟は卑怯者対策でルール整備担当のゲームマスターとして登録され、ゲーム大会は出禁となった。
その後、指スマはなぜかアルゼン発祥の遊び『ヒイロ式ユービルスマッシュ=ヒロユビスマ』として後世まで長く語り継がれることになったが、それは俺の知るところではない。
ちゃんちゃん♪
これにて第九章の終了です。
最初は魔法少女ネタの時みたく三話程度で終わる、はずだったんですが・・・。
いつのまにかこんな長さに(笑
それと、書いてて思ったんですけど、指スマって今でもあるんですかね?
私が学生の頃は誰もが知ってる遊びだったんですけど、最近の学生さんは知ってるのかなとふと疑問に。
あと、ユービルスマッシュは語呂で適当に作った造語で非実在ネームです。




