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あねおれ!~姉と弟(おれ)の楽しい異世界生活~  作者: 藤原ロングウェイ
第九章 騎士と盗賊の終わらない円舞曲!編
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第八十八姉「大丈夫よ、すでに血祭りだから。」

累計900ポイント突破しました。これも読者の皆様のおかげでございます。

マリーシアさんも『わ、わたしの活躍も人気に貢献してますよね?いつごろメインヒロインに昇格するんですかね!?』とかほざいてました。

ねーよ。一生やや目立つモブだよ。

「わかったわかった!なら実力を見せてみろ。そこの二人と試合をして、その結果で決めようかの。」

「わかったわ!男に生まれたのを後悔するくらい痛めつけてやるわ!」

「「「「「「どこに何をする気 (だ)(じゃ)!!!」」」」」


 さきねぇの恐怖発言に、俺含むその場にいた全ての男性が悲鳴をあげた。

 突然指名された名も知らぬ男性職員二人よ・・・ご冥福をお祈りしております。




 すぐに修練場へ移動する。


「なんか久しぶり。」

「ヒロ、あんまこここないもんね。」


 さきねぇはけっこうここ利用するんだが、俺はあんまり使わないんだよな。

 理由は、危ないので強い魔法を使っちゃいけないから。

 まぁ流れ矢ならぬ流れ魔法で怪我負わせるのもアレだしね。

 そして魔法なしで普通に戦うとあんまり強くない俺。

 ちなみに、さきねぇが修練場を使う時はさきねぇ見たさに超満員になるので人数制限がかけられる。

 有名な冒険者ならまだしも、E級冒険者で人数制限はアルゼン初だそうだ。

 まぁさきねぇなら当然ですけどねー!ですけどねー!けどねー!どねー!ねー!

 そんな感じで脳内で一人エコーをかけていると、準備が整ったらしい。

 相手はそれなりにイケメンな優男職員Aだ。


「期待の大型新人と名高い鈍器姉弟ドンキーブラザーズとやれるとはね。よろしく頼むよ。」

「ええ、よろしく。」


 握手を求められたさきねぇはニコッと笑い、手を差し出す。

 そして。


「フンッ!」

「ガッ!?」


 握手することなく、職員のアゴにキレイなショートアッパーが入った。

 さらに。


「セイヤァッ!」

「グホッ!」

「一本!」


 ついつい一本勝ちを宣言してしまうくらい、見事な一本背負いだった。


「イエーィ!」「いえーぃ!」


 さきねぇとハイタッチをかます。

 周りの人間は唖然としていた。

 ラムサスさんが恐る恐るさきねぇに声をかける。


「えっと、なにやってるの?」

「何って・・・手合わせじゃなくて勝負でしょ?勝ち負け決めんのに握手なんて『○○ちゃんかわいい~♪やだー××ちゃんのほうがかわいいよ~♪』みたいなことやるバカいないでしょ。油断しすぎ。」

「まぁさっきガルじいは『試合』って言ってたけどね。」

「・・・・・・・・・まぁ、別によくね?」


 さきねぇは完全に気絶している職員Aをチラ見するも、『正直どうでもいい』という結論に落ち着いたらしい。

 さすが俺のお姉さま。冷静ですね。


「ふむ。いくら不意打ちとはいえ、E級冒険者にやられるとはの。全く情けない・・・次は少年じゃ。不意打ちはなしで頼むぞぃ。」

「了解です。」


 俺の相手は、明らかに前衛とわかるゴリラマッチョ職員Bだった。

 うーん、殺すだけなら≪水鋭刃アクアチャクラム≫で頚動脈かっさばけばいいだけだけど、試合となると魔法は使いづらいな。

 かといって魔法なしだと俺の戦闘技術じゃなー。

 そう考えていると職員Bは俺に近寄り、ボソッと声をかける。


「俺が勝ったら、お前のお姉さん紹介してもらうからな!」

「は?」


 笑いながら去っていく職員B。

 ・・・・・・・・・・・・・・・へぇ。


「では、試合開始!」

「先に一撃譲るぞ義弟よ!わっはっはっは!」

「・・・・・・・・・ありがとうございます。では。」


 さぁ。

 戦争をはじめよう。


「朝焼けよりも眩きもの、空の青より蒼きもの・・・」


 ブワァァァァァァァァァァ!

 俺を中心に魔力の渦が形成され、俺の目の前に大きな水の塊が現れる。


「聖言を告げる偉大なる汝の名において、弟、ここに姉に誓わん・・・」

「ちょ、ま、は!?なに!?」


 肉だるまが何か騒いでいる。うるさい黙れ。

 目の前の水の塊が分裂する。

 一つから二つ、二つから四つ、四つから八つ・・・


「我らの前に立ちふさがりし、全ての姉の敵どもに・・・」

「ヒ、ヒイロ!待て、落ち着け!な!?ちょっとそれ中断しよう!な!!」


 いくらノエルさんの頼みでもきけないな。

 六十四に分かれた水の塊が、十字架の形を取る。


「我と汝が力もて、等しく絶望を与えんことを・・・!」


 水の十字架全てが、ギチッと音を立てて、鋭い氷の槍刃となる。

 そして!


「≪聖氷槍雨ガブリエール≫!!!」


 六十四本もの聖なる氷槍が俺の敵に向かって殺到する。

 くたばれ邪悪!殺して解して並べて揃えて晒して嘆きの川に叩き落してやんよ!!

 しかし。


「≪黒闇門アバドンズゲート≫!」


 その声とともに、俺の敵の前に真っ黒な鏡のようなものが出現した。

 その鏡に命中し貫いたと思いきや、俺の氷槍は全てその中に吸い込まれる。

 ・・・静寂が訪れた。

 俺の敵は無事らしい。

 声のした方に顔を向けると、そこにはノエルさんの姿があった。

 ちくしょう、俺のほぼ全ての魔法力を込めた、現時点で最高威力の魔法だったんだけどなぁ・・・

 俺は、そう思うと、全身から力が抜けて、地面へと崩れ落ちたのだった。






「んん・・・」

「お、目ぇ覚めた?」

「うん・・・おはよう。」

「うん、おはよう。」


 頭の後ろが柔らかく、さきねぇの顔が逆さだ。

 膝枕してもらってんのか。

 あーなんか頭がクラクラする。

 膝をすりすり。


「もう、甘えんぼなんだから。よしよし。」


 頭を撫でられる。はぁ~幸せ~。


「・・・じゃないよ!さっきの試合どうなったの!?俺の勝ちだよね!?負けって言われたらさっきのやつ血祭りにあげるけども!」

「大丈夫よ、すでに血祭りだから。」


 さきねぇが顎で指した方向を見る。

 そこには顔面をボコボコにされた上で、土で出来た十字架に磔になってぐったりしている男の姿があった。

 ノエルさんが心配そうに俺を覗き込む。


「大丈夫かヒイロ。魔力切れなんて初めて起こしただろうから、急に動いたりせずゆっくりしなさい。」

「はい、ありがとうございます・・・すいません。」

「なに、そこのバカから事情は聞いた。仕方ないさ。私が代わりに仕置きしておいたからな?」

「ありがとうございます。」


 優しいなぁノエルさんは。


「そういえば、あれからどれくらい経ってます?」

「30分も経ってないわよ?」


 さきねぇが自慢の黒髪で俺の鼻をこしょこしょしながら答える。


「いっくし!・・・そっか。さて、起きないとね。・・・よっと。」


 反動をつけて立ち上がる。

 ちょっとフラフラするが、大丈夫だ。

 今日はさすがにもう魔法は控えよう。


「ヒ、ヒイロ?もう歩けるのか?」

「ええ、なんとか。さすがに魔法は使おうとは思えないですけどね。」

「そ、そうか・・・(あれだけの魔力を消費して、30分で動く?魔法を覚えて一年にも満たない見習いが?異大陸人はみんなこうなのか、それともこの姉弟が特別なのか・・・)」

「? どうしました?」

「あ?い、いや、なんでもない。他の面子は会議室に戻ってる。私達もいこうか。」


 右にさきねぇ、左にノエルさんとガッチリ脇を固められて会議室まで戻る。

 二人とも心配性やな。嬉しいけど。

 中に入ると、ラムサスさんとガルダじいとマリーシアさんしか残っていなかった。

 まぁ職員の皆さんもお仕事あるからね。


「おお、ヒイロくん!体は大丈夫かい!?大事な体なんだから無茶はしないでくれよ?」

「ヒイロさん大丈夫でしたか!?私、ヒイロさんが心配でお昼ご飯も喉を通らなくて・・・!」

「心配してくださってありがとうございます。感謝はしてますのであまり近づかないでください。」


 すごい勢いで俺のほうに近寄ってくるラムサスさんとマリーシアさん。

 怖いので姉ガードと義祖母ノエルさんガードを同時発動させると、二人はその勢いのまま席に戻っていった。

 そしてマリーシア。お前、なんかのソースが口のところについてんぞ。

 せめて簡単にバレない嘘をついてくれ。





ここまでお読みいただきありがとうございました。

ご意見、ご感想ありましたらよろしくお願いいたします。


聖氷槍雨ガブリエール≫はヒロくんの「ぼくがかんがえたさいきょうまほお」の一つです。また、わかる人にはわかると思いますが、あの呪文詠唱は某有名ファンタジーのリスペクトです。

単なるゲーム好きな小学生だった私は、あの作品でファンタジーに目覚めました。

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