第七十二姉「ちょ、バカ!早い!バカ!!はやい!!」
いつのまにか累計700ポイント突破していました。
これもひとえに皆様の好意と姉好きの方々の支援のおかげでございます。
これからもあねおれをよろしくお願いいたします。
モンスター文庫大賞というものが始まったようなので応募してみました。
ファンタジー姉弟日常ものは一般受けしないであろうジャンルですが、ブラコン姉普及のためにもこういうところからコツコツと頑張ります(笑)
お、おそろしあ・・・俺の戦友よりも強いのかよ。
戦わなくてよかった!
「なんでキューティーベアーなんてかわいい名前なのよ。頭おかしくない?」
「お前に言われたくない・・・やつは賢くてね。ちょっとした広場に食料や薬草なんかを大量に置いておいて、獲物がくるのを待ち構えるんだよ。そのエサに夢中な獲物を背後から・・・」
「キューティーってそっちの意味かよ、ふざけんな・・・」(注 キューティーは『かわいい』という意味以外に、『ずるがしこい』『策略家』といった意味もあります。)
さきねぇが発見した大量のグリーンハーブって、もしかして・・・
まんまと釣られたクマー!ってとこか。
「しかし、そうするとキューティーベアーに追いかけられて、逃げるうちに迷子になったということかな?」
「いえ、なんか落とし穴に落ちて、底が洞窟と繋がっていたんで探検をしました。出口は森の奥地に繋がってましたね。空飛ぶ魚とかいましたよ。」
「「落とし穴の先に洞窟?」」
ハモるノエルさんとラムサスさん。
そんなおかしなこといったか俺?
「セレナーデの森にそんなものがあるなんて、ノエル様、聞いたことありますか?」
「いや、ない・・・もしかして。ヒイロ、その洞窟の中はどうなっていた?迷路のようになっていなかったか?」
「あ、はい。かなりの迷路でしたよ。異常な勘のよさと運のよさを持つさきねぇがいなかったらまず出れなかったと思います。」
「やはり・・・」
「ノエル様、心当たりがあるのですか?」
さすが大陸の生き字引。委員長もびっくりの博識っぷりだ。
「昔、獣人族の中でも珍しい地獣族がこのあたりに存在していたという話を聞いたことがあるな。しかし、それらしい住居なども見つからなかったので単なるデマカセ扱いだったが・・・」
「も、もしそれが本当なら大変なことですよ!?」
「そうなの?」
さきねぇはすごい興味なさそう。
「そうだよ!アルゼンは『攻略率120%』なんていわれて、新人以外は寄り付かない街だからね。そこから未発見の遺跡やダンジョンが見つかったなんて話になったらアルゼンはおろか、色んな街で再調査が開始されることになるかもしれない!」
「「へ~」」
あまりすごさがわからない姉弟だった。
「そうと決まったら、さっそく調査チームを組んで・・・あ、道案内だけ頼めるかな?場所がわからないとどうにもできないし。参加は勘弁してね?発見の名誉は二人のものだから、せめて中の調査は他の冒険者たちに譲ってね?あ、中はどうだった?長さはどんな感じ?魔物は?あとは」
「ラムサス、うるさい!二人は初めてのクエストでほぼC級魔物と戦って、夜営をして、道もわからずに頑張って帰ってきたんだぞ!・・・二人とも疲れただろう?よし、今日は奮発しておいしいご飯でも食べようか!」
「あの、その前にノエルさん、着替えませんかそれ?」
ノエルさんはどれ一つとってもすさまじい魔力を放つ魔法具を全身に身に着けていた。
正直怖い。
「ちょっとエルエルー!うちの弟が怯えちゃってるでしょー?さっさと着替えてきなさい。10秒ね!10秒経ったら私がその場で、剥く!」
「剥く!?」
その言葉に、俺やラムサスさんだけでなく、その場に居合わせた冒険者たちが一斉に反応を示す。
このロリコンどもめ!
「い~ち、に~い、さ~へっくし!じゅ~う!それいけー!」
「ちょ、バカ!早い!バカ!!はやい!!」
ギルド内を走り回るさきねぇとノエルさん。
絶対後で『騒いで怒られる』→『子ども扱いされる』→『顔真っ赤でぷるぷる』のコンボだろうな。
「・・・しかし、ムラサキさんはよくノエル様をからかえるね。普通は恐れ多くてそんなこと、とてもじゃないができないよ。」
「お互いに通じるところがあるんでしょうね。二人とも天才ですから。数少ない『ふざけあえる仲間』なんじゃないですか?」
「なるほどね。僕らみたいな凡人にはわからない領域か。」
「そういうことです。」
しみじみと頷く俺とラムサスさん。
・・・あんた、昔のあだ名『天才剣士』だろうが。ノエルさんから聞いてるんだぞ。ザ・普通の俺と一緒にすんなボケ。
まぁあの二人に比べれば誰でも凡人か。
「あ、森で採ったやつとか魔石とか見てもらえます?」
「ああ、じゃあカウンターへいこうか。」
「けっこう大量ですよ?」
「ああ、そう?じゃあとりあえず鑑定部屋でやろうか。」
ラムサスさんと一緒に鑑定専門の大部屋へ向かう。
「これなんですけど・・・」
「お、魔法袋を持ってるのか。そうだよな、ノエル様の弟子だものな。で、どれどれ・・・って、これは!?」
俺が取り出したのは、大量のキノコだった。
いろんな色があって面白いと、さきねぇが乱獲したのだ。
「・・・どうせ毒ばっかりですよね。どう処分すれば?」
「いや、毒も大量にあるが、希少なレアキノコもいっぱいある。専門家でもここまで採ってこれないよ。つくづく規格外だね、君たちは・・・」
「君たちっていうか、主にさきねぇですけどね。」
「ムラサキさんも、そのムラサキさんとずっと一緒にいる君も、だよ。」
そんな話をしていると、遠くから悲鳴と『おっきな炎の蛇がー!』という叫び声が聞こえる。
「「・・・はぁ」」
同時にためいきをつく俺とラムサスさんだった。
後日、ノエルさんを団長とした調査チームが組まれ、洞窟の調査が始まった。
キューティーベアーどころか、ラムサス支部長ですら勝てない伝説の冒険者がリーダーということに異論が出るはずもなく、むしろ異常な士気の高さだった。
俺たちは案内のみで、入り口で待機組だった。
森の奥地ということで緊張する冒険者も多い中、さきねぇと俺はいつもどおりキャッキャウフフといちゃついていた。
結局大発見はなかったようだが、ラムサスさんが言っていたとおり『まだ未発見の遺跡やダンジョンがあるんじゃないか!?』と各地で調査ブームが起こったらしい。
冒険者全体に漂っていた『もうどこ探したって、超危険な魔境以外に新しい発見なんてないよ・・・』という倦怠感を払拭したとして、冒険者ギルド本部(!)から感謝状まで贈られた。
今回の一件から、俺たち姉弟は『F級冒険者のくせにD級冒険者を半殺しにした』『ラムサス支部長すら二人を(色んな意味で)恐れた』『初クエストで新遺跡を発見した』『森の奥地で乳繰り合っていた』といった事実から『キューティーベアーすら裸足で逃げ出した』『あのS級冒険者ノエル・エルメリアが一から育て上げた殺人人形である』『いや、ノエル様の孫だ』『実は王族の隠し子らしい』などの出所のわからない噂まで広がってしまい、鈍器姉弟の異名をさらに轟かせる結果となった。
まぁさきねぇが目立たないことなんてありえないから、注目を集めるのも自然なことなんだけどね。
ただ、E級・F級冒険者の先輩方から『ムラサキさん』『ヒイロさん』と敬語で話されるようになってしまったのは勘弁してほしい・・・なんでやねん。
ちゃんちゃん♪
ここまでお読みいただきありがとうございました。
ご意見、ご感想ありましたらよろしくお願いいたします。
これにて第六章の終了です。
これで予定していた駆け出し冒険者イベントは全て消化しましたので、冒険したり魔物が登場する事は少なくなる、と思います。
次回にビックリするほど本編と関係がない番外編を挟んで、第七章「敵か味方か!?やつの名は・・・!編」が始まります。
が、単発アホイベントなので三話で終わります(笑)




