第七十一姉「「お前じゃ話にならん!一番偉いやつを呼んで来い!!」」
まぁそうだよね。さきねぇ的には当然だよね。
とりあえず俺たちは指輪が動いた方向へ歩き出した。
「ふんふふんふんふんふんふんふーん、ふんふふんふんふんふんふんふふーん、ふんふふーんふんふふふふふーんふん、キャベツはどうしたぁぁぁぁ!」
「ぅお!?いきなり大声だすなよびっくりしたなぁ・・・」
歩き始めてそれなりに経つが、『最愛の弟と二人っきりで森をピクニック(?)』という状況からか、テンションがかなり高い。
陽気に歌いながら、でっかいトカゲや二足歩行するキノコをミカエルくんでガンガン屠っていくさきねぇからは頼もしさしか感じない。心強いぜ!
やはり森の奥地ということで草原よりも強い魔物ばかりだが、所詮E級。俺たち姉弟の敵ではないな。
状態異常系攻撃には気をつけなければいけないが、回復アイテムもあるし≪聖杯水≫もある。
問題がなさすぎて緊張感を持てないのが問題か。
「ピッチャーびびってる、へいへいへい!なんでもバッチこーい!」
「とかいってて、またくまさんが出てきたらどうするよ。」
「倒して仲間にしましょう。馬の代わりに熊に乗るとかちょうおもしろかっこよくない!?」
「いや、おもしろかっこいいけど、無理だろ。見てないでしょあいつの目。やばかった。」
「そっか~。どっかそのへんの草むらに『怪我を治したら仲間になったりするフラグ』とか落ちてないかしらね?」
「入手しても熊に使うのもったいなくて、結局ラスボスまで道具袋に放置系だな。」
そんな会話をしながら歩くこと数時間、特に危険もなく森を抜けた。
ゲームとか漫画だと、普通はなんかイベント起こるよな…
アニメじゃない、ほんとのことだからいいのか。
「やっと抜けたー!あ、あっちに見える石造りの壁ってアルゼンじゃね?」
「あー多分そうね。どうせならアルゼンにいきましょうか。熊について、マリすけから話を聞きたいしね・・・!」
マリーシアさん、今のうちに逃げてくれ!
心の中でトンツーで危機を知らせる俺だった。
まぁシンクロ率が低いから伝わらないだろうけど。
義理は果たしたって感じで。
「!? おーい!お前らー!無事だったかー!」
アルゼンの門までくると、タイチョーが手を振っていた。
俺たちも手を振りながら笑顔で挨拶する。
「お疲れ様です。」「おっつーおっつー。」
「お、おお!・・・いや、ちょっと待て!普通すぎるだろ!?」
「え、何が?」
「セレナーデの森でグリーンハーブ採取なんて日帰りでやるもんなんだよ!にも関わらず、一日経ってもお前らが受付にこないもんだからラムサス支部長がパニックになってて大変だぞ!?」
顔を見合わせる初月姉弟。
「「そんなおおげさな~?」」
「なぜ踊る!?」
フラダンスを踊りながら答える俺たちに驚愕しているタイチョーさん。
特に意味はないんですけどね。
「じゃあすぐギルドに向かいます。教えてくださってありがとうございました。」
「タイチョーありがとんくす!」
「おお、早くいってやれ!」
「・・・その前に焼きラビット食べていかない?」
「「すぐいくの!」」
「そ、そんなハモんなくてもいいじゃない。冗談よじょ・う・だ・ん!いきます、いきますよ。」
はいダウト~。いいよっていったら絶対串焼き屋のおっちゃんのとこにいく気だったぞ。
さきねぇをひっぱりギルドへ向かう。
はい到着。
中に入ると受付にマリーシアさんの姿があった。
「あの「まぁぁぁりぃぃぃすぅぅぅけぇぇぇぇぇぇぇぇ!」
「!? ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!ムラサキさんのアンデッドォォォォォォ!?あ、悪霊退散!」
ダッシュで詰め寄るさきねぇに向けて、腕を十字に組むマリーシアさん。
ウル○ラマンみたいだな。ぷっ。
「あ!ヒ、ヒイロさん!無事だったんですね!良かった、ヒイロさんになにかあったら、わたし・・・」
「『せっかく玉の輿狙って頑張ってたのに、時間の無駄になっちゃうじゃないデスカー!』」
「そうですよ、時間の無駄に、って違いますよ!勝手に人の声色真似しないでくださいよムラサキさん!それじゃ私、ものすごい嫌なやつじゃないですか!」
でも、多分本音だよね。
これだから三次元の女は・・・やはり女は姉か二次元だな。
「で、でもどうしたんですか?森の採取依頼なんて、早ければ2時間、遅くても3、4時間で終わる日帰りクエストですよ?なのに帰ってこないから支部長が『二人に何かあったら、ノエル様に殺される・・・!』って怯えてましたよ?」
「いや、大変だったんですよ!凶暴な熊に襲われて!」
「熊?もしかして『キューティーベアー』のことですか?うわーラッキーですね!数年に一回しか目撃されない激レア魔物ですよ?」
顔を見合わせる俺たち。
なんかお互いの顔ばっか見てるな。
「もしかして、あの熊弱かったのかしら?なんかかわいい名前だし。」
「俺たちが勝手にびびっただけだったのか。」
「「わはははははははははは!」」
幽霊の正体見たり枯れ尾花ってやつか。
本当はじゃれつきたいだけだったのかもな。
「いえ、キューティーベアーはC級に限りなく近いD級魔物ですよ?単体ならアルゼン近辺で最強です。」
「「おいっっっ!!!」」
絶叫をあげるさきねぇと俺。冗談じゃねぇぞ!
「そんな危険生物にかわいい名前つけてんじゃないわよ!?」「どこがラッキーなんですか!?」
「めっちゃ血走った目で涎ダラダラ垂らしながら追いかけられたっつーの!」「そういう魔物がいるならちゃんと事前に教えてくださいよ!公務員みたいなもんでしょあんたら!?仕事しろ!」
「「お前じゃ話にならん!一番偉いやつを呼んで来い!!」」
「ひぃ!い、今支部長を呼んできます!」
そんな問答をしていると、ギルドの奥から争う声が聞こえてくる。なんだ?
「ノエル様、落ち着いてください!なんですかその装備!戦闘装備じゃなくて戦争装備じゃないですか!?」
「これくらいはしないと≪暴君炎龍≫を十全に扱えないだろうが。」
「フ、≪暴君炎龍≫!?森がなくなりますよ!?」
「それがどうした?二人の命に比べれば、森の一つや二十、全焼しようがどうでもいいわ。」
あの声は、ノエルさんとラムサスさんか。なにケンカしてんだ?
「に、二十!?あんたエルフでしょ!?森を大事に!それ以前に二人とも死にますよ!!」
「あの二人なら大丈夫だ。貧弱なお前と一緒にするな。」
「根拠は!?最近ムラサキに似てきましたよノエル様!?」
「私は征く。邪魔をするなラムサス。それ以上私の邪魔をするなら、お前を敵性因子とみなす。」
「・・・で、ですが「エルエル声でかーい。もっとおしとやかにできないもんかしらね?私みたいに!」
「お前に言われたくはないわ!ってムラサキ!?ヒイロも!無事だったのか!!」
走り寄り、俺たち姉弟を抱きしめるノエルさん。
なぜ感動の再会風味?
ノエルさんとラムサスさんに事情を話す。
「キューティーベアーに会ったのかい!?よく生きてたね・・・」
「え、やっぱそんな危険なやつなんですか?」
「ああ、個体数が極めて少ないのと、満腹なら人を襲わないからD級に認定されているけど、戦闘力自体はC級だ。ブラックサンダーよりも凶悪だよ。」
お、おそろしあ・・・俺の戦友よりも強いのかよ。
戦わなくてよかった!
ここまでお読みいただきありがとうございました。
ご意見、ご感想ありましたらよろしくお願いいたします。
≪暴君炎龍≫はドラゴンの姿をした巨大なゴーレムに炎をまとわせる火土の合成魔法で、鈍重で小回りも利かないですが、堅さと大きさで敵を踏み潰し焼き尽くすノエルさんの切り札の一つです。
ノエルさん自身、人生で3回しか使ったことが無い為に手加減が利かない恐ろしい決戦兵器であり、巻き込まれて死に掛けたラムサスさんには嫌な思い出しかありません。
こういった中二設定を考えるのも好きです。




