第六十八姉「このくらいで勘弁してやろうかしらね!バーカバーカ!」
前回の話でブクマがいつもよりちょっと増えました(笑)
『熊と遭遇してギャアァァァ!』は当初から考えていた展開だったので、なんか嬉しかったです。
熊さんが大きな口を開く。
そして。
「グオォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォ!!!」
「「ギャアァァァァァァァァァーーーーーーーー!!!」」
さきねぇと俺は、グリーンハーブを放置し、全力で駆け出していた。
「くま!くま!くま!くま!クマー!」
「わかってるから走れ!」
全力で走っているが、熊がドスンドスンと巨体を揺らしながら追いかけてくる。
「おかしくない!?なんでダンゴムシとかうさぎの次が熊なのよ!?どうせならハチミツ大好きな感じのやつ出しなさいよ!」
「知らないよ!つーかあいつ、明らかに殺る気まんまんなんですけど!」
そうこうしてる間も、後ろからはグシャ!とかメキメキ!とか音がする。
「ふっ、ふっ、さきねぇ、どうする!?」
「はっ、はっ、どうするって、いっても、はっ、ヒロ、魔法でなんとかできない!?」
「魔法でって、いっても!」
走りながらチラリと後ろを振り向く。
うん、くまさん、お目目が真っ赤に充血して、涎を垂らしながら走ってるね!
完全にバーサク状態だ。
何が言いたいかというと、ちょうこわい!
「無理!≪円水斬≫使えば、なんとか、なるかもしれんけど!走りながらじゃ、無理!一分くらい、足止め、できる!?」
「一分!?あれと!?無理でしょ!そんなん、できたら、熊牧場で働いてるわ!」
別に熊牧場で働いてるからって、熊と戦えるわけじゃないけどな!
どのくらい走っただろうか。数分?数十分?
いやーノエルさんの特訓を受けておいてよかった!
体力だけでなく、森での移動の仕方とかも教えてもらったからな!
熊の足音も聞こえなくなっていた。
逃げ切ったか・・・
「ふふふふ・・・」「へへへへ・・・」
「「わっはっはっはっはははははははは!!!」」
「このくらいで勘弁してやろうかしらね!バーカバーカ!」
「そうですね姉上!獣風情が人間様に勝てると思ったか!」
「「あっはっはっはっは!」」
「・・・・・・・・・・・・グォォォ・・・ォォォ・・・・・」
「「・・・・・・・」」
ダッシュ!
走る走る俺たち。流れる汗もそのままだ。
「・・・はっ!?緊急回避!」
突然さきねぇがマリオジャンプをしだした。
「なに、がぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?!?」
落ちる落ちる俺。流れる冷や汗もそのままだ。
どうやら落とし穴があったらしい。
落下中。
ジャボォォォン!
落下終了。
そんな深くないし、下が水で助かった。
それでも普通なら大怪我だな。異世界補正さまさまやわ。
「ヒロー!!!だいじょぶー!?緊急回避しないからー!」
「だいじょぶー!怪我もなーし!俺地球防衛する軍人じゃないからー!」
さて、どうするか。でも、こんなときこそ俺の用意周到さが光るよね!
ふっふっふ、じゃじゃーん!ロープー!
こんなこともあろうかと、アウトドアに必要そうなものは大体魔法袋に突っ込んでおいたのだ。
これを≪水矢≫にくくりつけて上に飛ばして、さきねぇにキャッチしてもらえば余裕っすよ!
「ひぃぃぃろぉぉぉぉぉぉぉ!うけとめてぇぇぇぇ!」
「えぇ!?マジっすか!?」
お前も落ちてくんのかよ!?
びっくりしすぎてマ○オさんみたいな驚き方をしてしまった。
仕方ない、落下してくる姉を迎え撃つ!
予想着弾地点に到達!さぁいつでもこい!
ひゅーーー
「ないすきゃ」
ジャボォォォォォォォン!
ぶくぶくぶくぶく・・・
「「ぷはぁ!」」
「・・・ちょっとヒロどういうこと!?お姉ちゃんの愛を受け止められないの!?」
「いつも受け止めてるじゃん!つーかミカエルくん持ったまま落ちてくんな!」
姉さんの愛ならどれだけ重くても受け止めてみせるけど、物理的な重さはさすがに無理だよ!
「まったく、だらしないわねぇ。お姉ちゃんの寛大な愛に感謝なさい?」
「えーそんな感じっすか。まぁいいけど。」
あたりを見渡す。
どうやら雨水か地下水かわからんけど、洞窟の中に小さな湖が出来上がっているようだ。
といっても、俺の腰ほどの深さしかないからほんと小さいが。
上に開いている穴から光が漏れて入ってくるだけで、かなり暗い。
魔法袋から中光石(第十三姉参照)を取り出す。これで明るさについては問題ない。
それなりに広い空間だ。テニスコートくらいはありそうだな。
奥には人が通れるくらいの穴があいている。
さて、どうする。
「向こうの穴から風が吹いてるってことは、どっかと繋がってるってことかな?」
「その可能性はありそうね。・・・上には戻れるかしら?」
「多分できるよ。俺が氷のはしご作ってそれを登ればいいだけだから。ただ、『氷のはしご』なんて初めて創造するから、魔法量がどうなるかわからないけど。最悪、登りきったら魔力空っぽでぶっ倒れる可能性もゼロじゃない。」
「なるほどねー・・・じゃあ、A!私たちは氷の柱を作り、上に登った!18ページへ!B!私たちは洞穴を進んだ!31ページへ!」
「ここでまさかのゲームブック方式登場!懐かしすぎる!」
まさかリアルでゲームブックを体験することになろうとは・・・
「ちなみに、お姉ちゃん的にはBね。」
「その根拠は?」
「勘。」
「勘か。ならそうしよう。上に登って熊さんに遭遇してもやばいしね。」
「あら、てっきり文句言われるかと思ったけど。信頼してくれてるのね!」
「そりゃね。」
「・・・実は、好奇心もある。」
さきねぇがちょっと恥ずかしそうに呟く。
「やっぱり。まぁいいよ。正直いえば、こんな状況だけどちょっと楽しんでる俺がいる。」
「あーやっぱり男の子ねー。仕方ない、付き合ってあげましょ!い、いっておくけど、付き合ってあげるってそういう意味なんだからね!勘違いしてよね!」
「しねーよ。なんだそのエセツンデレ。」
とりあえず、さきねぇのクソ重いミカエルくんを魔法袋にしまわせる。
さきねぇの魔法袋は超重たいものでも入る代わりに、三つしか入れられないというピーキーな性能だ。さすが魔法量G(-)。
横穴を目指してザブザブと歩く。
さっきまで全力疾走してたから水が気持ちいいな。
「・・・この『悲恋湖』には伝説があってね。愛し合う姉弟が駆け落ちしハックション!・・・えっと、最終的に金の斧を売って幸せに暮らしたらしいわ。」
「悲恋は!?つーか途中はしょりすぎだろ!」
くしゃみした瞬間に考えたストーリー忘れたか、勢いで話始めたから内容考えてなかったかのどっちかだな。
・・・くしゃみってことは寒いのか。仕方ないな。
おれはさきねぇをお姫様抱っこで抱える。
「これでどうですか姫様。」
「うむ、よきにはからえ!」
横穴にはいる。
そのまま少し歩くと、一段高いちょっとした崖があった。
「さきねぇ。」
「おうよ!」
そういうと、さきねぇは俺の腕から降り、後ろに回る。同時に俺はその場で屈む。
ブクブク。
さきねぇが俺の肩に足をかける。
俺は肩に乗ったさきねぇの両足を掴むと、ゆっくり立ち上がった。
合体完了!いやらしい意味はない!
「さきねえ、どう?届きそう?」
「いけるいける。ちょいまち・・・ほっ!」
さきねぇが崖の淵に手をかけ、登り始める。
一気に肩の重みがなくなり軽くなる。
・・・別にさきねぇが重いといっているわけではない。念のため。
今上を向いたら、アレだよね。下着的なもの見えちゃうよね。
別に見たってよくない?だって俺弟だし?
決心し、上を向く。
すでに崖の上に登り終えたさきねぇとばっちり目が合った。
すげーニヤニヤしてる。
「ぃよう!暇か!?」
「・・・別に暇じゃないですよ課長。さっさとひっぱりあげてください。」
「ダメですねぇタートル君。行動は迅速に行わないと。『兵は神速を尊ぶ』ですよ。」
「わかってます!早くひっぱってくださいよライトさん!」
「あひゃひゃひゃひゃ!」
また弱みを握られてしまった・・・
俺のほうこそ『エロいことする気ね!?エロ同人みたいに!?』って言いたいわ。
ここまでお読みいただきありがとうございました。
ご意見、ご感想ありましたらよろしくお願いいたします。
10代の読者さんはゲームブックとかわかるんだろうか・・・
 




