第六十六姉「いやん、もっとお姉ちゃんにかまってぷりーず!」
感想いただきました。
ヒロくんが『さきねぇが欲しければ、俺を(ボンバーマンで)倒してからにしろ!』っていってました。
家についてから、さすがにノエルさんにはしゃぎすぎだと怒られた。
反省。
ほわんほわんほわんほわん。
回想終了!
というようなことがあったのだ。
ルーキーにも関わらず、酔っていたとはいえD級冒険者を一撃で半殺しにした『ハンマー使いのムラサキ』と、弱っていたD級冒険者をタコ殴りにしたり、姉に近づく冒険者に襲い掛かる『棍棒使いのヒイロ』として名前が広まり、二人とも鈍器使いということでいつのまにか『鈍器姉弟』と呼ばれるようになってしまった。
棍棒使いとかいわれても、俺、本業水魔法使いなんですけど・・・
そして、あれから数日。今日は記念すべき初依頼を受ける日だ。
しかし、俺たちの戦闘力はD級冒険者以上とはいえ、経験値はほぼゼロのようなものだ。
慎重に安全な依頼を選んで、コツコツこなしていこうと思う。
そして選ばれた初依頼は・・・
「「これだ!」」
さきねぇと二人で依頼表を見せ合う。
俺・・・『グリーンポーションの原料になるグリーンハーブの採取・難易度F』
さきねぇ・・・『ゴブリンの巣を発見、殲滅せよ!・難易度D』
「バカなの!?」「地味すぎぃぃぃぃ!」
姉弟の叫びがギルド内に響く。
完全に保守派VS改革派みたいな構図になっている。
冒険者たちも集まってきて、俺たちの依頼表を覗く。
『これは弟が正しいだろ』
『でもこいつらならいけそうな気もするな』
『ムラサキさん、いくらなんでもそれは・・・』
『面白そうだからやらせてみろよ』
『さすがにそれで死なれたら寝覚めが悪ぃよ』
『そもそも新米のF級冒険者のくせにD級依頼受けられるはずねーだろ』
『でも絶対無理とは言い切れないところがこいつらのすげぇところだよな』
先輩方からさまざまな反応が返ってくる。
驚きなのが、『やらせてみてもいいんじゃね?』みたいな反応もゼロじゃないことだ。
俺たち姉弟の力を評価してくれてるのか、それともただ適当に言ってるだけなのか・・・
多分後者だよな。くそが。
「な、なんの騒ぎですか!?問題を起こすなら私がいない日にしてくださいってあれほど、ってヒイロさん!と・・・ムラサキさん、じゃないですか・・・・どうされたんですか?」
「そのヒロと私へのテンションの違いは何かしら?虫歯?・・・抜いてあげようか?」
「む、虫歯じゃないですよ!?抜くって、なんですかそれ!怖いからやめてください!」
さきねぇ、虫歯を抜く話なのに、なぜナイフを取り出し刃をなめるんだ・・・どこの殺人鬼だよ。
俺は両手で口を隠しているマリーシアさんに事の経緯を説明した。
「それはヒイロさんが正しいですよ。というより、話聞いてました?お二人の冒険者ランクはF!F級です!冒険者ランク以下の依頼しか受けられませんよ!」
「ダメ?」
「だ、ダメですよ!一職員として、暴力には屈しませんよ!」
なんかかっこいいこといってるけど、あなた、この前の宴会の時、ぐったりしてたラウルとかいう冒険者を私怨で放置したあげく、指差して爆笑してましたよね。
「わたしが、こんなに、おねがい、してるのに?」
「だ、だめ、だ、だ、だだだだだだだだだ」
ついに狂ったか・・・さらばマリーシアさん。
そしてさきねぇが魔界からきた探偵に見えてきたぜ。
「はぁ、いったい何事かと思ったら、君たちか・・・問題は起こすなとノエル様からも言われてるだろうに。」
「だだだだだだだ、はっ!支部長!お願いします!」
ラムサスさんが来たことによりマリーシアさんが復活し、そそくさと後ろに隠れる。
しかし、ちょくちょく姿見せるなこの人。暇なんだろうか。
「実はですね・・・」
「ふんふん・・・」
ラムサスさんにも騒ぎの原因を説明をする。
「あのね、確かに君たちの戦闘能力は高いよ。それでもF級冒険者はF級以下の依頼しか受けられません。例えノエル様の弟子であろうとも、です。まずは経験を積みなさい。なに、二人ならすぐに上に上がれるから。」
「つまんなーい!所詮ゴブリンでしょ~?」
「所詮とかいったって、そもそもゴブリンと戦ったことないでしょ!メッ!」
「ゴブリン自体はE級魔物なんだけど、これは『ゴブリンの巣の捜索と殲滅』でしょ?難易度が全然違うよ。戦う以前に、君たちに発見できるとは思えない。」
いってやれいってやれ!ゲームじゃないんだから安全思考でいくのが一番っすよ。
「ボソッ(それに、ノエル様から『自分の留守の間に君らに何かあったら街ごと消し飛ばすぞ!』って言われてるの。わかる?僕だけじゃないの。街ごとなの。お願いだから安全な依頼にしてくれよ。)」
そうなのだ。実はノエルさんは今お出かけ中なのだ。
どんなに遅くても一週間程度で帰ってくるそうだが、さきねぇが我慢できなかったのだ。
そこで『安全そうな依頼を受ける』ことを条件に、外出許可をもらったのだった。
「ほら、ノエルさんも自分がいない間はラムサスさんの指示に従うようにって言ってたでしょ!地味でもいいの!某狩りゲーだって採取クエストからでしょ!」
「私は恐竜もどきからだったわ!」
そうだった、この姉、天才だった。
「採取クエなんて地味でいやー!討伐がいいー!」
「・・・じゃあ俺いかない。一人で行「ごめんなさい採取クエ最高!やっぱ採取よね!お姉ちゃん、グリーンハーブいっぱいとっちゃうぞー?」
「というわけで、このグリーンハーブ採取でお願いします。」
「承りましたー!」
ふぅ、なんとか説得できたな。これが効かなかったらどうしようかと思ったぜ。
「さすがヒイロくんだね。ムラサキさんも、駄々をこねてヒイロくんを困らせないの。」
「・・・ダダをこねるって、ウルトラマン世代からすると恐怖よね。」
「ソーダネー。」
「いやん、もっとお姉ちゃんにかまってぷりーず!」
「・・・(なんなんだこいつら)」
受付にいって依頼受諾のサインをする。
「あ、二階の資料スペースに森の魔物とか薬草の形とかが載ってる本がありますから!それを読んでいったほうがいいですよ!案内します!私が!この私が!あ、受付交代お願いしまーす!」
「攻略本もあるのか。さすがチュートリアルの街・アルゼン。」
マリーシアさんがナイス情報をくれる。
よくやった。褒めて遣わす。デートはしないが。
「さきねぇ、見てからいくよ。説明書読まない派閥のさきねぇにはかわいそうだけど、ここで待ってる?」
「そうね。一緒にいくけど、我が子房に任せるわ。」
「お、お任せを!」
えへへ、我が子房だって。
俺は上機嫌で二階へと上がったのだった。(注 簡単にいうと、賢い実力者であり、信頼している側近中の側近に使う言葉です。)
「こーこーかーなーっと。失礼しまーす。」
「・・・誰もいないわね。」
「文字も読めないバカが多いですからね。賢いヒイロさんと違って。きゃ♪」
「「・・・(なんだこいつ)」」
温度差のあるトライアングラーだった。
マリーシアさんが本を差し出しながら説明してくれる。
「グリーンハーブの採取ならここから東にあるセレナーデの森ですね。奥にいかなければF級の雑魚ばっかりですよ。」
「あ?F級が雑魚?私たちディスってんの?ちょっと裏庭いく?」
「ちちちち違いますよ!魔物!魔物のF級ですよ!ほんとそういう言いがかりやめてください怖いから!」
「まぁまぁ。えっと、奥にいったらやばいですか?」
「奥にいくとE級が大半で、極稀にD級の魔物が出るくらいですね。木々が黒ずんだり枯れたりしてきたら奥に入ったってことですから、すぐに引き返してください。」
「了解です。いろいろありがとうございます。」
ニコッと笑う。ヒイロスマイル!
「めっちゃ好感度アップしとるー!やったー!玉の輿に一歩前進やでー!(いえいえ、これが私の仕事ですから。)」
「ぼそっ(ねぇ、マリすけってさ・・・)」
「ぼそっ(しっ!言わないの!優しく見守ってあげよう。)」
ここまでお読みいただきありがとうございました。
ご意見、ご感想ありましたらよろしくお願いいたします。




