第六十一姉「ヒロ!すごいじゃない!いつのまにあんな超必殺技みたいなのを作ったのよ!ゲージは一個しか消費しなさそうだったけど!」
更新時間しくじったぁぁぁぁ!
「かっせかっせヒ・イ・ロー!300秒で支度しな!」
「了解、ボス!」
さーて、いっちょやったろうじゃないの!
「向こうに的があるでしょ?あそこに三回当ててね。魔法が当たると赤く光るから。」
「了解しました!」
この程度の距離、ブラックサンダーさんと闘りあったあのバトルを思えば、テラワロスですよ。
「それでは・・・はじめ!」
その掛け声とともに目を閉じ、射の構えをとる。
目を開く。
当然のように俺の手の中にある≪水弓≫。
・・・いくぞ!
しゅ・・・・・・・・バシュ!
的が赤く染まる。
「きゃー!ヒロー!素敵ー!」「ふむ、当然だ。」「あら、まぁ・・・」「ほんとかよ・・・」「す、すごいですヒイロさん・・・!」
喜ぶな。まだ終わってない。雑音はカット。これからが本番なのだ。
次はちょいアレンジする。
観客もいるし、何よりさきねぇが見てる。
矢を三本放って『はい、終わり』にするつもりはない!
射の構えを取るが、番える水矢は一本ではなく、二本だ。
名付けて、≪水矢二連≫!
センスないのは知ってる。ほっといてくれ。
的を狙って、矢を放す。
シュ・・・・・・・・ババシュ!
一本は右に、もう一本は左に放物線を描きながら空を駆け、二本同時に正面の的に突き刺さる。
的は赤反応。よし、成功!
前方に障害物があっても、左右に迂回して敵を攻撃できるように開発した魔法だ。
最終的には十数本の矢を一斉に発射する『ミサイル全弾発射』的な感じにしたい。
やっぱ『全弾発射』は男のロマンでしょ。
そして、最後の一発は、ノエルさんにも秘密にしていた魔法だ。
俺は≪水弓≫を構える。
俺の属性が水でよかった。
『光』とか『闇』とか『雷』っていわれても、ピンとこないし。
でも、『氷』なら話は簡単だ。見たことも触ったこともあるし、作り方だって知ってるからな!
俺は水の矢を番えるが、そこで目を閉じる。
・・・凍れ。
その瞬間、俺の周囲から熱がなくなった。
本当にそうかもしれないし、錯覚かもしれない。
でも、問題ない。
俺はこの、全てが凍るような冷たさを求めたのだから!
目を開ける。
俺の手には、氷で出来た一組の弓矢があった。
・・・射。
いつのまにか、俺は手を離していた。
的に吸い込まれるように近づく氷の矢。
そして。
ガシャァァァァン!
氷が砕け、宙に舞う。キラキラ光って綺麗だな。
そんなことを思った。
おっと、残心を忘れてはいけない。意識ハ常ニ戦場ニアリ。
・・・・・・ふぅ、成功してよかった。
でも、砕けちゃったな。強度の創造に問題ありか。
まぁぶっつけ本番だし、致し方なし。
俺は構えを解き、後ろを振り返る。
「「「「「・・・・・・・・・・・・」」」」」
な、なんか見られてる。怖い。なに?
さきねぇが真っ先に駆け寄ってくる。
「ヒロ!すごいじゃない!いつのまにあんな超必殺技みたいなのを作ったのよ!ゲージは一個しか消費しなさそうだったけど!」
「え、それ褒めてる?」
確かに派手ではないけどさ・・・
「ち、違うって!めっちゃ褒めてるって!めちゃめちゃ!HO・ME・TE・RUー!よ!わかって私の姉心!」
「はいはい、わかってるから大丈夫だよ。」
「うそー、絶対わかってないー!・・・あ!こうしちゃいられないわ!あいつらに『私の弟が5分で試験受かったどー!』って自慢してこないと!」
ヒャッハー!と言いながら高速で部屋を出て行くさきねぇ。
そしてすぐに「受かったぞぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!」という大きな叫び声が廊下から聞こえ、遠ざかっていった。
こんな英検四級みたいな試験で受かった受かったって大騒ぎしても恥ずかしいんですけど。(英検四級は小学六年生で受かるレベルです。)
今度はノエルさんが走ってくる。
やば、前みたいに怒られるか?と思ったら、俺の胸に飛び込んできた。
「ヒ、ヒイロ!お前は!お前は!もう!全くもう!すごいぞヒイロ!こんな、あれだ、いつのまに!だ!このやろー!さすがは私のおとうt、いや、弟子だ!鼻が高いぞ!」
「あ、ありがとうございます!」
大魔法使いに褒められた!すげー嬉しい!
「まさか、複数同時操作だけでなく、上位魔法の『氷』まで扱えるとは・・・いつのまに練習したんだ?初めて見たぞ?」
「えへへ、驚かそうと思って、頭の中でずっと想像だけはしてたんですよ。ぶっつけでしたけど、なんとか形になってよかったです!」
「「「「・・・は?」」」」
「・・・え?」
ノエルさんだけでなく、集まってきたラムサスさんやマリーシアさん、アメリアさんまでもが凝視してくる。
真っ先に口を開いたのはアメリアさんだった。
「えっと、ノエル様?ヒイロくんの使った魔法はノエル様が教えたのでは?」
「い、いいや。私が教えたのは初級魔法だけだ。先ほどの魔法は今さっき初めて見た。」
マリーシアさんとラムサスさんもノエルさんに押しかける。
「じゃ、じゃあ、本当に適性検査を受けてから、たった一週間で魔法を覚えたんですか!?」
「しかも、話を聞く限り、ヒイロ君は自力で上位魔法と複数同時操作まで習得したということですよね!?」
「ヒイロくんはいったいどこでなにを」「どうやったらそんなことが可能」「ぜひヒイロ君にはアルゼン支部の専属魔法使いとして」
「うるさい!私だってよくわかってないんだ!!少し黙れ!!!」
「「「すいません・・・」」」
おーっとー、本人完全に蚊帳の外だぞー?
「んん、ヒイロ。では最初に聞きたいんだが、なぜ上位魔法の『氷』を扱えるんだ?」
「ああ、それはアレですよ。前に話した化学の関係で。」
「ああ、あの『カガク』というやつか。なるほどな。」
魔法特訓の時に話した内容だから納得してくれたようだ。まぁ顔には『後でkwsk!』って書いてあるが。
しかし、ノエルさん以外の人は聞き覚えのない言葉に困惑気味だ。
「ノエル様、『カガク』というの「答える必要はない。」は・・・はい。」
これぞまさしく、一刀両断!って感じだな。さすが『破軍炎剣』。
「では、次だ。二つの水矢を創造したところまではよいとしよう。一つが出来るんだ、二つ創造できないはずはない。ただ、それを同時に操作し、かつ複雑な動きで操ったな。あれはどうやった?」
「どうやったといわれても・・・そんな複雑ですか、あれ?」
操ったも何も、標的定めて弾道決めて発射すれば、あとはオートホーミングなんだけど・・・
その疑問にアメリアさんが答える。
「少なくとも、冒険者ランクD級程度の魔法使いじゃできないわね。だって、『魔法の複数創造・同時操作』って中級魔法使い試験の内容だもの。」
「え!?じゃあ俺もう中級魔法使いなんですか!?」
びっくりド○キー!
「いえ、今回はあくまで『初級魔法使い試験』だから。的だって動かないでしょ?中級は試験時間も短いし、的も動くから。」
「ああ、なるほど。そりゃそうですよね。魔法使いとしての実戦だって今日初めてだったのに、いきなり中級とか言われたらどうしようかと・・・」
「「「実戦が今日初めて!?」」」
三人がノエルさんを見る。
「ああ、本当だ。私もムラサキもなしで、一人でアルゼンまで来させようとした。途中でブラックサンダーにも遭遇して勝ったしな。」
「「「ブラックサンダー!?」」」
さっきからハモってんなー。いいことでもあったのかい?
「ああ、そういえばまだ言ってなかったな。ヒイロが単独でブラックサンダーを退治したぞ。これが証拠だ。」
そう言うと、魔法袋からブラックサンダーの死体を取り出す。
ラムサスさんが目を見開いて
「こ、こいつをヒイロ君がやったのかい?しかも、一人で?」
「ま、まぁラッキーでしたけどね。」
「いや、ラッキーで勝てる相手じゃないよこいつは。特にソロの魔法使いなんてD級冒険者でもこいつとタイマン張ろうとはしないよ。」
「そ、そうなんですか?」
マジかよ、そんな強敵だったのかブラックサンダーさん・・・
どこからか『ルーキー!自分の力で勝ったんじゃねーぞ。魔法のおかげだという事を忘れるな!』と声が聞こえたような気がした。
ありがとう、肝に銘じておくよ・・・安らかに眠れ。
俺は、散った強敵に心の中で敬礼を送った。
二週間休みなし(その後一日休みでまた一週間連続勤務)の死の行進が始まってしまいました。
今後の展開や作中でやりたいこともまとめなければいけないため、次話で5章の終了と同時に、一度お休みさせていただこうと思います。
更新再開は1週間~2週間後を目安に考えております。
より明るく楽しい姉弟話を書きたいと思っていますので、お待ちいただけたら嬉しいです。




