第六十姉「絶対やだ。」
感想をいただきました。ありがとうございます。
今話を含め、あと3話で冒険者編を終えたら、まったりゆるゆるとした感じに戻る予定です。
自分で書いてみて、他の作者さんたちはよく冒険メインで書き続けられるものだと驚きました。すごい!
「みんなー!これからも私たち姉弟をよろしくねー!」
「「「「「「「「「「「「「姉弟なのかよ!?」」」」」」」」」」」」」」」
みんなビックリしていた。
そりゃそうだ。
いつのまにか、さきねぇは冒険者の人たちと楽しそうに話をしている。
コミュ力高いすなぁ・・・
「・・・・えっと、冒険者の指輪についての説明な「私がするからいい。」んですけど、わかりました・・・」
受付嬢から仕事を強奪するノエルさん。
さすが『破軍炎剣』やでぇ。
「ヒイロ、指輪をつけたまま、この金属の板に手を触れてみなさい。」
「これですか?指をピトッ?手のひらをペタッ?」
「指輪が触れなきゃいけないから、手のひらをペタッだな。」
言われたとおり、雑誌を開いたくらいの大きさの金属の板に手のひらをつける。
すると。
「おお!板に文字が浮かんできた!」
「この板を『真実の鏡』という。これで、名前だけでなく、どんな魔物をどれくらい倒したかなどがわかる。何も書かれていないのは、まだ冒険者の指輪をはめたまま戦ったことがないからだな。」
「いっぱい倒したらどうなるんです?」
「そのときは真実の鏡を、こう、指でなぞるんだ。」
「なるほど。」
ノエルさんが指を動かす。
タッチパネルを動かすのと同じ感覚っぽいな。
わかりやすくていい。
「あのー、そろそろ初級魔法使い試験を受けにいきたいと思うんですけど・・・」
「あ、はい。さきねぇー!試験受けにいくよー!さきねぇはどうするー!」
「私もいくー!みんなじゃあねー!」
後ろから『おう!』とか『またねー!』とか『さっきの約束忘れんなよ!』とか聞こえる。
カリスマ半端ないな。
そして思い出してしまった。
そうだね、試験開始5分で合格するっていっちゃったもんね(さきねぇが)。
マリーシアさんに付いていき、案内された部屋に入る。
「・・・けっこう広いですね。」
「ですよね。でも、これでも中級魔法使い試験までしか対応してないんですよ?」
「は~。」
勝手にドラマの射撃訓練で使われるような狭い部屋を想像してたが、弓道場のような広い感じだ。
奥の的に魔法を当てればいいのかな?
「やぁヒイロくん。こんにちは。」
そこにはギルド支部長であるラムサスさんの姿があった。
「こんにちはラムサスさん。いいんですか?こんなところで油売ってて。」
「ヒイロくんが魔法使いになる大切な日だ。ぜひ僕も一緒にいたいと思ってね。」
パチッとウインクするラムサスさん。
そっちの人にはたまらないんだろうが、あいにくシスコンなもんで・・・
すぐにさきねぇがミカエルくんを構えて前に出る。
そしてノエルさんは赤黒い短剣を構えている。
多分、すごやばいやつだ。それがわかる理由は簡単。
その短剣を見た瞬間から、冷や汗が止まらないからだ。
「へ、変な意味はないですよ!とゆーか、ノエル様!それ『鮮血の月』じゃないですか!そんな物騒なもの出さないでくださいよ!」
「へー、エルエル、いい短剣ねそれ。もらってあげてもいいわよ?」
「絶対やだ。」
さきねぇの上から目線の物言いを冷静に却下するノエルさん。
ナイスな判断だ。さきねぇにこんな元A級冒険者すら恐れる、伝説級っぽい危険物持たせられるかよ・・・
「今試験官の魔法使いの方を呼んでるところなので、少しま、あーきたきた。こっちですー!」
マリーシアさんが声をあげる方向を見ると、太ったおばちゃんがえっちらおっちらこっちへ向かって歩いてきていた。
「ふー、疲れた。急に呼び出さないでくださいよ。こっちにも予定があるんですから。」
「すいません、でもどうせ賭け事でしょ?いい年なんだからほどほどにね?」
「まだまだいけるわよ、ってあら。かっこいい若者じゃない。この子?」
ラムサスさんと対等に話すおばちゃんに声をかけられる。
「は、はい。ヒイロ・ウイヅキといいます。本日はよろしくお願いします!」
「はい、よろしく。なんだ、また小生意気なムカつくガキかと思ったら、まぁずいぶんとしっかりしてるじゃない。」
「ありがとうございます!」
こういうおばちゃんは礼儀正しい感じでいけば受けがいいのを知っている。
俺はなぜか一回り以上年が離れているおば様方からのみ絶大な人気を誇るのだ。
中学生の時ですでに『マダムキラー』とすら呼ばれていた。
うん、もちろん嬉しくないが。
「私はアメリア。そこの教会でシスターをやっている者よ。よろしくね。」
「え、し、シスターなんですか!?」
「そうよぉ?どうしたの?」
俺はその場でorzとひざをついた。
だって、異世界だよ?
若い美人でさ・・・金髪でさ・・・巨乳でさ・・・ニコニコ笑顔でさ・・・
そんなシスターを夢見てたっていいじゃない。
マインドブレイク・・・
「大丈夫、ヒロ?」
そんな優しい声とは裏腹に、俺の胸倉を掴み、宙に浮かせているさきねぇ。
こ、ころされる!
「だ、だいじょうぶ!だいじょうぶだからはなして!おれちきゅうじんだからじめんにあしがついてないとしんじゃうびょうきなの!」
「あら、そう?じゃあさっさと試験受かっちゃいましょうか?」
ドサッと落ろ(と)される俺。
うう、妄想する権利すらないなんて・・・
「ノエル様もお久しぶりです。いくつになってもかわいらしいままで、羨ましいですわ。」
「久しいなアメリア。いくつになっても威厳がでなくて困っているよ。」
「ふふ、今のままで十分ですよ、あなたは。」
お、ノエルさんの知り合いなのかこのおばちゃん。
「以前に知り合いの水魔法使いを紹介するといっただろう?アメリアがそうだ。実力は並だが、教えるのは上手くてな。魔法学校で講師を務めたこともある。」
「お褒めに預かり光栄です。でも、ちょっとビックリしました。先日お手紙をいただいたときは『ヒイロとムラサキという人間族の子供たちがかわいくて仕方がない』と仰っていたから、どんなかわいらしい子供がくるのかと思ったら・・・素敵な男性ではないですか。」
「こ、こら!アメリア!余計なことは言うな!」
顔を真っ赤にするノエルさん。
な、なんか照れるな。
「こほん。とりあえず、アメリアに試験官になってもらい初級魔法使い試験を受ける。その後、回復魔法の練習にはいるぞ。どんな依頼にせよ、回復があるのとないのとでは、全く難易度が異なるからな。」
「ねぇエルエル。お金持ちなら、回復魔法に頼らなくてもあの『地獄の黒ポ』買い込めばいいんじゃないの?」
回復ポーションに地獄とか物騒な接頭語をつけるな。
「ポーションは欠点があってな。一回服用すると同じ種類のポーションは、まぁモノにもよるが、数分から数時間は効かなくなるんだ。黒ポも一回飲んだら1時間は経たないと次の効果がでなくなる。」
「へー。じゃあポーションがぶ飲みで力押しとかできないんだ?」
「まぁ一番回復力の弱い緑ポだとすぐに使えるが、回復力も弱いからな。基本的に無理だ。その点回復魔法にそんな欠点はないからな。重宝されるわけだ。」
「なるへそー。」
ちょいちょい言葉が古いな。
『ナウなヤングにバカ受け』とか言った俺が言えることじゃないが。
アメリアさんが手をポンと鳴らす。
「さて、それではそろそろはじめましょうか。試験内容はわかる?」
「あの的に魔法を当てればいいだけ、ですよね?」
「ええ、そうよ。制限時間は30分だけど、大丈夫?できそう?」
「?魔法を当てるだけ、ですよね?」
「ええ、そうだけど・・・(手紙によると、魔法適正検査を受けたのは約一週間前。普通ならそんな短時間で魔法を創造できるわけない。でも、この自然体な感じはなんなのかしら。まるで『できて当然でしょ?』って顔してるわ。)」
「じゃあ問題ないです。時間が多すぎるから、なんか意味があるのかなって思って。」
「かっせかっせヒ・イ・ロー!300秒で支度しな!」
「了解、ボス!」
さーて、いっちょやったろうじゃないの!
大陸には2組の≪月火水木金土日≫の名を冠する、有名な14本の魔剣が存在します。
ですが、大戦時に消滅したり所有者が行方不明などで、現在所在確認がされている魔剣は6本しかありません。
ノエルさんはその6本の中の2本、≪月≫の『月光剣』と『鮮血の月』の両方を所有しています。
今話を書いているときに思いついた設定で、特に物語には関係ありません。
そんなんばっかり!




