第六姉 「よ、よくありますよ!大丈夫です!俺は気にしてませんから!」
「無駄シリアスなんざいらねー」といいつつ、今回の後半がすごいシリアスになってて書いてる自分がびっくりしました。
もちろんすぐボツにして書き直しましたが。
いちゃいちゃほのぼのギャグコメディのみで書くのって難しい。
「いえ、日本ですが・・・」
「ニホン? いや、私は国の名前を聞いているのだが。」
「え、だから日本です。」
「・・・え?」
「・・・え?」
話がかみ合ってないぞ?
同じ言語で話しているように見えて、全く別の言語と会話しているのだろうか?
津軽弁とフランス語みたいな。
気まずい雰囲気が流れる。
こういう時は話題転換だ!
「あ、そうだ! あなたのお名前を伺ってもよろしいですか?」
「あ、ああ。まだ名乗ってなかったな。すまない。私の名はノエル・エルメリア。見てのとおり、エルフだ。人間族の若者なら【破軍炎剣】と言ったほうがわかりやすいかな?」
「・・・ばーにんぐ、ぴあす、ですか。えっと、その」
うわぁ、すごいドヤ顔だよ。
『おお、あなたが、あの!』とか反応したほうがいいんだろうか。
でも俺の中に流れる正直者の血がそれを許さないんだよな・・・
「ははは、信じられないか? まぁそうだろうな。いきなり『私が破軍炎剣です』と名乗られても困るよな。証拠を見せるにしても、ここでは大火災が発生してしまうしな。困ったものだ。」
「えっと、その、すいません、わからないです・・・ごめんなさい。」
俺が気まずそうに頭を下げると、狼狽えだす美少女。
「え? バ、【破軍炎剣】だよ? 教科書なんかにも載ってたりするんだが・・・え? もしかして、今の教科書には載ってないのか? 私はすでに過去の遺物なのか?」
「・・・・・・・・すいません。」
「・・・・・・・・い、いや、私のほうこそすまない。」
破軍炎剣さんは顔が赤い。
それもそうだろう。自分では隠れ有名人のつもりだったのに、いざ正体をバラしたら『誰?』と言われたのだ。俺なら恥ずかしくて走って逃げ出しているだろう。
「・・・ぷ」
あ、やばい。
「ぶわはははははははははははは!もー無理死んじゃう! 誰か助けて! あたしを助けて! ペルソナー! ぶわっはっはっはっはっはっは!」
やりやがった・・・
破軍炎剣さんの顔をチラ見したが、顔が真っ赤だった。
体もプルプルしてる。そりゃそうだよな・・・
な、なんとかフォローしてやりたいが・・・フォローの仕方がわからん。
『かっこいいですね破軍炎剣って名前!』
・・・心をさらにえぐるだけだな。
『わっはっはっは! うっけるー!』
・・・俺なら泣くな。
『よくありますよ。大丈夫です!』
ねーよ。
・・・あ、ダメだ、破軍炎剣さんが今にも泣きそうだ!
仕方ない、南無三!
「よ、よくありますよ! 大丈夫です! 俺は気にしてませんから!」
言ってしまった。しかし、これは無理だろう。
発言した俺が言うのもなんだが、全くないし、何がどうなって大丈夫なのかさっぱりわからない。
恐る恐る少女に目をやる。
「・・・そ、そうか?」
大丈夫だったー!
びっくり!
え、なにこの子、ちょろすぎて今まで以上にかわいく見えてきた!
この俺が年下に萌える時がこようとは・・・
しかし、泣かれると情報が聞けないどころか、無邪気な幼女を泣かせた二人組みというレッテルを貼られてしまう。
しかも、恐ろしいことに冤罪ではない。
このまま宥める方向で
「あるあrねーよ! 何がどうなって大丈夫なのかさっぱりわからないよ! ぶわっはっはっはっは!」
この、バカ姉・・・
姉に悪気はない。悪気はないのだ。
ただただ、自分に対して素直で正直なだけなのだ。
あーもーめんどくせーなーどうすっかなー。
なんて思っていたら急激にあたりが明るくなり、熱くなった。
目の前には顔を真っ赤にした破軍炎剣さんと。
真っ赤に燃える巨大な火の玉があった。
「「は?」」
え、なにこれ。
え、熱い。
え、でかい。
ゴゴゴゴゴゴとかいってる。
「・・・うるさいから黙れ小娘。死にたいなら笑え。」
少女の声には迫力があった。
迫力というより、『本当に殺される』と思えるほどのなにか。
これが本物の『殺気』というやつなのかもしれない。
「申し訳ありませんでした!」
俺はすぐにその場で土下座した。
逃げるのは無理だろう。
なら、俺にできることは、せめて謝罪して許してもらうことだけだ。
最悪、俺を殺して少女に罪悪感が生まれれば、姉だけは助けてもらえるかもしれない。
可能性としてはゼロに近いが、やるしかない。
「・・・・・・・・・・・」
「俺はどうなっても構いません!焼き殺してくれて結構です!ですから、どうか姉だけは助けてください!お願いします!」
必死に土下座し謝罪する俺の横を、さきねぇが通り過ぎていった。
「・・・黙れ小娘、ってことは私が対象なのよね。あんだけ大笑いしたんだから当然だけど。・・・謝ります。すいませんでした。もし許せないのであれば、私を殺してもいいです。ただ、弟の安全だけは保障してください。お願いします。」
俺は顔を上げる。
見えるのは、俺を守ろうとする、姉の後姿。
その向こうには、宙に火の玉を浮かべつつ、困った顔をしている少女の姿。
『やっべ、どうしよう』って感じの顔だ。
先ほど感じた殺気は全くなくなっている。
・・・これはいける!
「いや、あの「さきねぇ! ダメだ! やめてくれ! さきねぇが死んでまで生きていたいとは思わない! 俺はいい! さきねぇはダメだ! 絶対!」
さきねぇが振り向く。めっちゃいい笑顔だ。
その顔が『任せろ、やってやるぜ!』と語っている。
「いや、だか「私のほうがお姉ちゃんなんだから。弟を守るのはお姉ちゃんの役目よ。・・・大丈夫、何があってもヒロだけはおねえちゃんが守るから。」
「あのな、その「弟だけど男だ! 姉で女の子のために命を懸けるのに、それ以外の理由がいるか!」
「えっと、はなしを「ヒロ・・・でも、これだけは譲れないわ。例え相討ちになったとしても、ヒロは私が守る!」
「さきね「私が悪かった! 頼むから話を聞いてくれ!」
少女が泣きそうになりながら叫ぶ。
「「聞きましょう!」」
いい感じに姉弟の声がハモって響いた。
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