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あねおれ!~姉と弟(おれ)の楽しい異世界生活~  作者: 藤原ロングウェイ
第五章 異世界で冒険者になろう!編
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第五十五姉「このクソブタがぁぁぁぁ!かかってこいやぁぁぁぁ!」

ヒイロ、大地に立つ!

異世界も盛者必衰・弱肉強食・るかられるかの世界なのです。

 でも、以前にノエルさんは言っていた。

『このあたりで俺たち姉弟の脅威になる魔物なんて存在しない』と。

 つまり、この程度で怖気づいているようじゃ、姉さんの隣を歩く資格はないってことだ。

 いいじゃねーか、やってやるよ!




 一人で森を歩く。

 森の中はノエルさんの結界が張ってある。

 恐れることは何もないのだ。

 草原エリアに入ったら要注意だけど。

 その時、突然茂みから何かが飛び出した!


「ファロファロファロファロ!」

「ぅおっ!?」


 やけにカラフルな鳥だった。

 なんだよ、ファロファロ鳥(命名さきねぇ)かよ。

 びっくりしたぁー。

 結界が張ってあるから平気だとわかってても、やはり怖いものは怖い。

 大丈夫だ、落ち着け。俺はやれば出来る子だ。

 今は一人なんだ。警戒はしすぎても損はない、はずだ。

 それに一年戦争を生き延びたあの人だって『臆病すぎるくらいがちょうどいい』って言ってた。

 そんな警戒心で大丈夫か?大丈夫だ、問題ない。



 最初はそんな感じだったが、10分もすれば慣れてきた。

 鼻歌だって口ずさんじゃうぜ。

 ベルを持って踊り隊、出撃!


「ふんふーん、ふーふふーんふん、ふーんふーんふんふんふふんー♪ヒイロ・ウイヅキ、水魔法使い、出撃るぞ!」


 テンションも高くなってきた。

 気分はエースパイロットだ。魔法使い暦一週間の新米だが。

 そんな一人遊びに熱中していると、ついに森の出口、つまり、魔物の出現する草原の入り口に着いた。


「・・・ついに、来たな。」


 ここから約30分歩けばアルゼンの街だ。

 だが、たったそれだけの道のりでも、俺にとっては試練の道だ。

 気合いれていくぞ!おぅ!

 スマート棍棒の柄を魔法袋から取り出し、いつでも抜刀(?)できるようにする。


「俺は駆け抜けるぜ!この果てしない冒険者坂をよ!」



 そして、歩くこと数分。

 ゴロゴロゴロゴロ・・・

 む、エンカウントか!しかもこの音は・・・やはりレッドだんごむし!

 しかも3匹同時だと?生意気な。

 貴様に腹パンを食らったときの俺と思うなよ!

 射の構えを取る。

 集中・・・≪水弓アクアボウ≫!

 俺の手の中に水の弓矢が出現する。

 ダンゴムシの一匹を、ロボアクションゲーのようにロックオン(した気分に)する。

 引き絞って・・・放つ!

 シュ・・・・・・・・・・・・・・・ドシュ!


「っし!」


 当たった!目標、完全に沈黙!

 でも、まだ2匹いる。落ち着いて・・・放つ!

 シュ・・・・・・・・ドシュ!

 俺天才!アカネイア一の弓使いとは俺のことだ!

 ラストはあえて引き付ける。

 そして。

 親指に思いっきり力をこめて、弾く!

 パァン!

 だんごむしが数メートル吹っ飛び、動かなくなる。


「我が≪水弾アクアバレット≫の威力、思い知ったか・・・」


 ・・・ふふ。


「くくくく・・・あっはっはっはっは!強いじゃん!俺強いじゃん!やった、やったぞ!」


 いや、落ち着け、俺。

 やつらは所詮最下級戦士、喜ぶところではない。やって当然なのだ。

 目指すはノーダメージクリアだ。

 そのために、警戒アンテナは常時張り巡らす。

 さーちあんどですとろいの精神だ!

 待っててくれ姉さん、すぐにそちらに向かいます!

 あなたの弟が、初月緋色が参ります!

 とりあえず、だんごむしを回収回収っと。



 それからは快進撃だった。

 グミーを蹴散らし、ホーンラビットを屠り、芋虫をなぎ倒す。

 まさに向かうところ敵なしだ。

 ゲームだったら3くらいはレベルがあがってることだろう。

 たまに魔石を砕いてしまったものもあったが、大体は死体も回収できた。

 大漁じゃー!

 ・・・む!?二時の方向に大きく揺れる草むらあり!正体アンノウン!

 すぐに近くにあった木の後ろにさっと隠れる。

 ダサい?いや、違うね。

 隠密行動をしている元特殊部隊の蛇さんをダサいというものはいるだろうか?

 いないだろう?そういうことだ。

 じっと見ていると、草むらから黒くてでかい猪が出てきた。

 あれはもしや、話に聞いたワイルドイノシシか?

 アルゼンの街でワイルドイノシシのシチューを食べたことがある。おいしかった。

 実物は初めて見たな。森や山に生息していると聞いたが・・・お!走り出した!

 水溜りにダイブした!ゴロゴロしだした!ちょっとかわいい!

 ・・・なんか、某狩りゲーにあんなやついたな。


「・・・りますか?」


 俺は心の中のさきねぇに問う。


「(今夜はスキヤキよ!)」

「イエス、ボス。」


 さすが俺の脳内さきねぇ。

 本物がいたら絶対返ってくるであろう答えが返ってきちゃった。

 距離はそこそこある。

 確かワイルドイノシシはE級の魔物だとノエルさんは言っていた。倒せない相手じゃない。

 射の構え!

 狙って・・・ゲッ!?こっちに向かって走り出した!?


「だが、俺の間合いだ!」


 キリキリと弓の弦から音がする(気がするだけだが。水だし。)

 シュ!・・・・・・・・・・・・ドシュ!命中!

 あ、あれ?

 そこには、顔面から血をダラダラ流しながら走ってくる猪さんの姿が!

たまったるぞゴラァァァァァァ!』という表情だ!怖い!


「うわ、どうしよ、どうしよ!」


 俺は木を見上げると、すぐに行動に移る。

 ほっはっよっと!

 野生児であるさきねぇに付き合ってればこの程度の木登り、わけもないぜ!

 べ、別に『付き合う』っていってもそういう意味じゃないんだからね!ほんとなんだからね!


「はっはっはっはっは!獣ごときにこの高さは克服できまい!ね~ら~い~う~ち~!いけーいけーかっとばっせよー!」


 さぁ、どう料理してやろうか、って突っ込んでくる!?マジっすか!?


 ドガァァァァァン!


 ひぃ!木がすごい揺れてる!魔物怖すぎワラエナイ!

 あれでE級とかマジかよ・・・素人が作ったRPGツ○ールの難易度みたいになってんぞ!

 やつがバックし、距離をとり始める。

 また突っ込んでくる気か!

 あ?なんだあの顔?

『へい、びびってんのかルーキー!?さっさとおうちに帰って、ママのおっぱいでもしゃぶってな!この腰抜けが!』

 といっている(ように見える)。

 ・・・今、未来に戻っちゃう名作の主人公の気持ちが、本当の意味で理解できたわ。

 誰にも、腰抜けなんて、言わせない!


「このクソブタがぁぁぁぁ!かかってこいやぁぁぁぁ!」


 俺はやつに向かって言い放つ。

 むろん、木の上からだ。

 ふ、勇敢と蛮勇は違うのさ。


「・・・『この世をば、姉の世とぞ思ふ、望月の、欠けたることも、なしと思へば』!」


 俺は両手を合わせ、呪文を唱える。

 もちろん内容に意味は無い。

 好きなの。雰囲気が出るかなって思っただけです。

 そして、手を離す。


「≪円水斬アクアベズソウ≫!」


 今回は最初からそれなりの形を伴って創造できた。

 そして、今度はギザギザではなく、『サメのヒレ』をイメージする。

 削り取るのではなく、真っ二つにしてやるぜぇぇぇぇ!

 あとは、マワレマワレマワレマワレマワレマワレマワレマワレマワレ!

 突進してきていた猪が、急ブレーキをかけた。

 まるで『バカな、あいつは懸賞金3000万程度のはずだ・・・!?』みたいな顔をしてやがる。

 攻めるか退くか迷っているようだ。


「どうする、さきねぇ?」


 目を閉じ、心の中のさきねぇに問いかける。


「(さーちあんどですとろい☆さーちあんどですとろいよ、ヒロ!私はオーダーを下したわ!何も変わらない!)」


 猪はくるりと背を向け逃げ出そうとしている。


「ですよね!・・・判決を言い渡すぞ猪!敵前逃亡許すまじ(ただし、さきねぇと俺は除く)!士道不覚悟にて、死刑(ただし、さきねぇと俺は除く)!!」


円水斬アクアベズソウ≫を投げつける。

 猪は走り出すところだったが、遅い!

 逃げる早さを上回る速度で迫った≪円水斬アクアベズソウ≫が、一瞬振り向いたヤツの首をギロチンのように刎ねた。

 ドサッと猪の首が落ち、体も少し先までゴロゴロ転がって止まった。


「・・・死して屍、拾うものなし。」


 俺は刀を鞘に納める(フリをする)。

 ・・・ふ、決まった!

 まぁ拾うんだけどね、屍。




ここまでお読みいただきありがとうございました。


まさかのヒロくん無双!(多分最初で最後だと思います・・・ほめてやってください。)

それと、今回はちょっと難産で二回ほど書き直しました。

やっぱりムラサキさんあっての『あねおれ』ですね。


ヒロくんの魔法命中率の高さは、ヒロくんの「魔法って敵を指定して発動したら勝手にダメージを与えるものでしょ?」というRPG脳と「ロックオンしたら追尾するものでしょ?」というロボアクション脳のおかげで、ある程度自動追尾する仕様になっているからです。

でなければ、たった一ヶ月弓道の練習した位で『矢がまっすぐ飛んで的に当たる』なんて無理ゲーです。弓道はほんと難しいです。

妄想力と思い込みで発動する魔法は便利ですね!(いろんな意味で)


ご意見、ご感想ありましたらよろしくお願いいたします。

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