第五十一姉 「お!何それ!エルエルちょっときてー!ヒロが地味にいい仕事してるー!いい意味の地味だけどー!」
感想いただきました。ありがとうございます。
姉弟ものに関係なく、ただ『面白い』といっていただいて、とても嬉しかったです。
今後も「姉」と「いちゃいちゃ」しながら「アホかというくらいに明るく」「無駄なシリアスで暗くならない」お話を書き続けたいと思います。
「第五章 異世界で冒険者になろう編」の開始です。
やっとここまで来ました・・・紫さんはすぐにボケるし、ノエルさんはすぐに顔真っ赤になるしで進行速度の遅いこと遅いこと。
ずっとこの調子だと、読者さんも飽きちゃうよな・・・と思いつつ、多分今後もこの調子で書き続けると思います。
かぽーん
「い~いゆ~だ~な~にゃにゃにゃん!い~いゆ~だ~な~ワワワン!」
あ、どうもこんにちわ。初月緋色です。
せっかくの入浴シーンなのに、さきねぇじゃなくてすいませんね!
いやーあれから大変だったんですよ色々と。
だから朝風呂とかもいいかなって。なんていうの、癒し?っていうの?
大事だよね。
え?何があったのかって?
では、ここ一週間の記憶を辿ってみましょう。
では、回想シーン、レッツスタート!
ほわんほわんほわんほわん
「朝だぞー朝食食べて特訓するぞー。」
『さきねぇ大爆発!アフロにならなくてよかったね事件』の次の日は、ノエルさんのその一言から始まった。
「うぅ・・・ふぁあああぁ・・・はい。」「んん、あと5光年・・・」
それ時間じゃないよ。距離だよ。
どれだけ眠るつもりかわからないが、すごい寝たいということだけは伝わった。
それでも無理やりさきねぇを起こして、いちゃいちゃしながら服を着替える。
そして、いつものように鏡の前へ。
「お客さん、今日はどうします?」
「そうねぇ、なんか特訓とかいってたから、動きやすい髪形がいいわね。」
「オーダー!動きやすい髪形!」
といっても、長く美しい黒髪を紐で結うだけなんだけどね。
アクセントに赤いリボンをちょこんとつけて、と。
かわいいし、紐も隠れてグッド!
「こんなもんでいかがっすか?」
「ありがとうさぎー。」
両手を頭の後ろにやり、うさ耳のように動かすさきねぇ。
くっそ、めちゃくちゃかわいいな!
もしこれを他の女がやったら『は?何それ。意味わかんないけど』と冷徹に返すところだが、うちのお姉さまがやるとかわいすぎてやばい。
いちゃいちゃしながら食卓に向かうと、いい匂いが空腹を刺激した。
今日はコッペパンみたいなパンにサラダとチーズをはさんだサンドイッチだ。
コーンスープのようなものと、なんかの卵を使った目玉焼き、よくわからないデザートもある。
「では、精霊王様に祈りを捧げよう。」
「「「・・・・・・」」」
正直、いまだに精霊王って何?っていうか、そもそも存在自体信じていないが、郷に入っては郷に従え、だ。
現地の人たちの信仰をないがしろにするつもりも、貶めるつもりもない。
インディアン、嘘つかないのだ。
しかし、どうせ異世界なんだから『姉神様』とかいればいいのに。
めっちゃお布施しますよ?
精霊王様に姉とかいないのかな。
そしたらすごい親近感沸くんだけど。
『今から宣託を告げる。まずは・・・』
『(ガチャ)あ、精霊王ー。この漫画の続きどこにあるー?』
『ちょ、姉ちゃん今宣託やってっからちょっと静かにしてよ!』
『あ、ほんとに?ごめんね。で、漫画の続きどこ?』
みたいな。
「では、いただきます。」
「「いただきまーす!」」
もぐもぐ。おいしいわ。
でも、パン食もいいが白米も食べたいな。
この世界にもあるにはあるんだが、日本と比べると格段に味が落ちるし、自炊するとなると炊飯器なんてないから大変なのだ。
異世界にくることがわかってれば、農業の本とか色々持ち込んだのにな。
さすがに普通に生きてたら書籍なしで内政チートは無理だ。
学生に何を期待してるのって話だ。
あ、でも和傘くらいなら作れるかも。和風総○家でやってたし。
江戸時代に貧乏侍が作ってたくらいだ、俺たちでも作れるだろう。
そしたらノエルさんにプレゼントしようか。喜んでくれるかな。
『和傘を手に持って喜ぶ銀髪の美少女』・・・アリだと思います!
「ごちそうさまでしたー!」
「さきねぇ、ちゃんと自分のお皿は台所に持っていってね。」
「あいよー。」
俺とノエルさんはよく噛んで食べる派なので食が遅い。
さきねぇから10分ほど遅れて完食する。
「ごちそうさまでした。今日もおいしかったです。」
「そう言ってもらえると嬉しいな。」
お皿を持って台所へ。
食器洗いは俺の担当だ。
いつまでも超ニート人ではさすがに悪いからな。
先日から家事手伝いにクラスチェンジしたのだ!
さて、川に行って水を汲んで・・・待てよ?
水魔法が使えるなら・・・
むむむむ・・・!
俺は牛の乳絞りをするように空気を握り締める。
そして。
「・・・≪水道≫!」
握り締めた手の隙間から、蛇口を全開にしたような勢いで水が流れ出る。
握る力を弱めると、水の勢いも弱くなる。
わっはっは!何これ面白い!超便利!
さきねぇが何事かと覗き込んできた。
「お!何それ!エルエルちょっときてー!ヒロが地味にいい仕事してるー!いい意味の地味だけどー!」
だからいい意味の地味ってなんやねん。
ノエルさんもこちらに近づいてくる。
「おお、もう魔法を使いこなしているのか!昨日初めて魔法を覚えた者には見えんな!・・・しかし、面白い使い方だな。普通は≪水球≫で水を貯めるものだが、少量なら調節が出来る分、こちらのほうが使い勝手がよさそうだ。」
「えへへ、ありがとうございます。」
「でもエルエル、魔法をこんなくだらないことに使っていいの?」
「魔法を使って人を傷つけるより、よっぽど有意義な使い方だと思うが?」
「・・・そんな感じなわけね。」
桶に水を貯めて・・・あ、また閃いた!
「≪水球≫!」
水の塊が現れる。
これに皿を突っ込んで高速回転させたら魔法食洗機にならないかな?無理かな?
やってみるべ!
皿を水の塊の中に入れて・・・あ、だめだ。落ちそうになった。重力ぇ・・・
「おお、なるほど!そういうことか!」
ノエルさんが皿を持ち、≪水球≫の中に突っ込む。
そして≪水球≫の中で皿をジャブジャブとシェイクして取り出す。
見事な白さに!
「これで皿洗いがかなり楽になるな!」
「多分、本来の使い道とは違うと思うけど、エルエルが喜んでるからよしとしましょうか。」
「てへ、あざーす!」
皿洗いを終えると、ついに特訓開始のようだった。
「とりあえず、あとで庭に集合だ。体力を見たいのでランニングをする。」
「ランニングか・・・きついな」
「ヒロ短距離型だもんね?私は万能型ー!メ○ドラー!」
「え、そういう区分なの?ア、ア○ラオー!」
「準備運動はしっかりな!トイレにもいっておくように!」
ノエルさんのスルー力もついてきたようだ。
庭に出て準備運動をする。
準備運動をするノエルさんは『運動会に張り切る小学生』のようでほっこりした。
そして三人で『ノエルの森(仮)ランニングツアー』にでかける。
ほっこりした気分のまま、ノエルさんの後に続いて走り出した、のはいいが、速くね?
途中で脱落しそうな予感が・・・
その俺の横をお姉さまは歌を歌いながら走っていた。
えぇい、初月の紫は化け物か!?
「ふぅ、ふぅ、ふぅ、ふぅ・・・」
そんな感じで森の中をぐるっと駆け巡り、やっと終了のようだ。
さきねぇの歌の曲数と走行速度から考えて、少なくとも10キロは走ったっぽいな。
俺はへばっているが、ノエルさんとさきねぇは数回深呼吸すると、もう涼しい顔をしている。
俺だけ息荒くて変態みたいじゃねーか。
「よし、では戦闘訓練にはいる。私と組み手をするが、ヒイロは少し休んでいなさい。先に元気の有り余っているムラサキとやろう。」
「私はいいけど、大丈夫?リーチも全然違うけど・・・」
「おいおい、私を誰だと思っている?・・・なめるなよ小娘。」
その瞬間、背筋が凍るような感覚に襲われる。
すげぇプレッシャーだ。
「よーし、言ったな!ボッコボコにしてやんよ!」
「やってみろ!」
言うや否や、返事を待たずに異常な速度でノエルさんに接近するさきねぇ。
超高速の不意打ちか。さすがさきねぇ!
そして、さきねぇの高速ボディブローがノエルさんの横っ腹に突き刺さった。
さきねぇは『しまった、やっちゃった!』という顔をしていた。
さきねぇの異世界強化は半端じゃなく、考古学者の博士を追ってくる大岩程度なら受け止められるであろうくらいに力が強化されている。
その全力パンチが思い切り脇に入ったのだ。
俺もさすがにやばいと思った。
だが。
次の瞬間、攻撃を仕掛けたはずのさきねぇが吹っ飛んで地面に倒れた。
倒れた際に地面に頭を打ったのか、『うおぉぉぉぉ・・・』とか言いながら頭を抑えて地面を右に左にゴロゴロ転がっている。
よく見ると、ノエルさんの両手がカメ○メ波のように突き出されていた。
あれで体を押されただけで、あんなに吹っ飛ぶのかよ・・・
そして、涼しい顔で一言。
「今、何かしたか?」
正直濡れました。
ここまでお読みいただきありがとうございました。
訓練は次話でさっと終わります。
私は「強い魔法で敵をなぎ倒していく」のを考えるより、≪水道≫のように「こういう魔法があって生活で使えたらすごい便利だよなぁ」と考えるほうが好きです。
ご意見、ご感想ありましたらよろしくお願いいたします。




