第五姉 「この私に対して上から目線? あんたどこ小よ?」
とりあえず、絶対使わないであろう言葉の使用権をもらいながらも池(?)を移動し、岸に上がる。
あらためて辺りを見渡すが、やっぱ森!って感じがひしひしと。
そして目の前には、不信な目でこちらを見つめる美少幼女の姿があった。
「で、そろそろお前たちに話しかけてもいいのかな?」
呆れと不審を混ぜ合わせたような視線を送りつつ、少女はそう言った、のだが・・・
「この私に対して上から目線? あんたどこ小よ?」
「は? ドコショウが何を指す言葉か知らないが、目上の者には敬意を払えと教わらなかったのか?」
なんで我が姉はこんなに喧嘩ごしなんだろうか。
いくら無法者の姉とはいえ、ここまで敵意を剥き出しにすることなんて・・・あったな。
俺に関係することのみだけど。
「そもそも目上の者に敬意をっつーなら、まず年上である私に敬語使いなさいよ。話はそれからだ。」
「私は168歳だが、お前は何歳だ?」
「え・・・!? えっと、あれよ、天才よ!」
「意味がわからん!」
いくらなんでも何歳って聞かれて天才はないだろ・・・子供か。
会話を切り上げてさきねぇがこっちに寄ってくる。
「ひそひそ(ヒロ、まずいわ。まさか美少幼女にタイムラグなしであんな素晴らしい切り返しをされるとは思わなかったわ。さっきの私の返し、どうだった? 勝ってた?)」
「ひそひそ(いや、普通に負けてると思う。人として失礼すぎる点も含めて。それより、むこうが年上ぶりたいお年頃ならそれに付き合ってやればいいんだよ。ちょっと待ってろ)」
俺は呆れと不審に怒りを混ぜ合わせたような視線を向ける少女に近寄る。
「姉が失礼を致しました。姉は頭の病気を患っており、ちょっと頭がアレなのです。年長者に対しての数々の無礼、お許しください。」
俺は少女に向かって頭を下げる。
声をかけられるまで、頭を下げ続ける。
ここまでされて許さない、といえる人は少ない。
話し方も大人を真似るくらいに年上を気取るのであればなおさらだろう。
「・・・ふぅ、頭がアレならば仕方ないか。君に免じて許そう。」
「ありがとうございます。」
「ねぇ、待って? さっきから頭がアレとかちょっとひどくない? 紫親方から物言いがはいりま「姉さん、ちょっと黙っててもらえる?」
「はいわかりました。黙ります。」
俺は姉のことを『さきねぇ』『姉』『姉上』『姉さま』『お姉ちゃん』と色々な呼び方で呼ぶが、姉のことを『姉さん』と呼ぶときは真剣な時だけだ。
姉もそれがわかっているため素直に黙る。
「しかし珍しいな。人間族は普通、私の姿を見たら先ほどのように見下してかかるか、バカにするものだが。」
「(人間族?)いえ、目上の方に対して敬意を払うのは当然のことです。初対面ならなおさらでしょう?」
「ほぅ・・・いい心がけだ。好きだぞ、そういう若者は。よく見れば顔立ちも悪くないしな。」
「ありがとうございます。あなたの美しさには敵いませんが。」
あ、後ろからすごい殺気を感じるぞー。
うちのお姉ちゃんは弟が他の女を褒めると機嫌が悪くなるのだ。
姉とはそういうものだ。
しかし、ここは仕方ない。我慢してもらわねば。
王佐の才を持つ俺の策力を全開にする時なのだ。
作戦を説明する!
まず、女性で容姿を褒められて嬉しくない者はいない。
さらに、目の前の少女は確かに美少女だが、幼さが残るため、他人からの褒め言葉はほぼ全て『かわいいー!』だろう。
そこであえて『美しい』を使うのだ。
ここまでの美少女だと、かわいいと褒められすぎて『またそれかよ』と感じてしまう(に違いない)。
だが、言われ慣れない『美しい』を言われることにより、俺に対する好感度がアップする(に違いない)!
そうすると会話が円滑に行われるようになり、情報も引き出しやすくなるのだ。
作戦説明終了!
「う、美しいか・・・なにかむずむずするな。」
照れながら満更ではない顔をしている少女。かかった!
「申し訳ありません。私の少ない語彙ではそれしかでてきませんでした。もっと知識があれば、あなたの美しさを表現するのにふさわしい言葉があるのでしょうが・・・」
「も、もういい。そんなにおだてるな!恥ずかしくなってきた・・・」
よし、これで機嫌は治ったな。円滑に会話をすすめられる。
王佐の才の面目躍如だ!
そして俺の後ろには『なんで私以外の女を褒めてるの?』『なんで私を褒めないの?』という姉の愛と怒りと悲しみの不機嫌オーラが吹き荒れていた。
あなたの後始末です、王よ・・・
「さ、さて・・・聞きたいことは色々あるが、まずは一つずつ尋ねさせてもらう。お前たちは何者だ?」
「申し遅れました。私は初月緋色、こちらは私の姉の初月紫と申します。学生です。」
「ウイヅキヒイロ? 変わった名前だな。出身地はどこだ?」
「いえ、初月が苗字で緋色が名前です。出身は千葉県です。ディズニーランドとかあるとこです。」
俺の言葉を聞いて美少女の片眉が釣り上がる。
「む、ではヒイロ・ウイヅキか。ふむ、チバケン・・・私も旅をして長いが、聞いたことのない地名だ。ディズニーランドというのもよくわからないな。どの国のどこらへんなんだ? 私が知らないとなると、イルドアム王国あたりか?」
「イルドアム王国?」
どこだそれ。日本史専攻だからマイナーな国名言われても全然わかんねーよ・・・
「いえ、日本ですが・・・」
「ニホン? いや、私は国の名前を聞いているのだが。」
「え、だから日本です。」
「・・・え?」
「・・・え?」
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