第四姉 「じゃあずっと一緒ね。お姉ちゃん命令です。」
ま、まぁ? 俺のさきねぇに比べれば? ちょっと美少女ランク下がっちゃうけどね? 悪いな少女よ。
そんなことを考えていると、少女とばっちり目が合った。
少女は釣竿を置くと、こちらの方向に小走りに走り出した。
「おーおー、なんか必死に走ってます感バリバリだなー。」
俺は姉の影響で女性にがっつくことはなく、さらに年下なんぞ興味もないが、ロリコンだったらあの少女は理想の天使なんだろうなーなんて思っていた。
走る姿かわいい。姪っ子的な意味で。
そんなことを思っていると、目の前の水面に気泡がぶくぶくと溢れてきた。
え、なになに?
困惑してそれを凝視した瞬間、水が盛り上がり何かが姿を現した!
「ぅわぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
真っ黒い物体が目の前に生えてきた。さらに暴れている。
そしてその黒い物体が俺の手を掴んできた!
「ぎゃあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
「・・・ぷは! ちょ、ま、うるさ「う、うわ!うわぁぁぁぁぁ!」
「黙れ。」
「はい黙ります。」
ついつい言うことを聞いて黙ってしまう。
・・・はっ!? このプレッシャー! まさか!
「くっそ、ギリギリ足がつかねぇ。掴まらせなさい。」
「御意。」
「・・・ヒロ? ヒロよね?」
「む、紫お姉さまですか? 長いお髪が水を吸って大変な感じになっておりますが・・・」
「・・・ヒローーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!」
「お、おう? どうした?」
「わ、わたし、も、もうあえないんじゃないかって、それで、こわくて、でも、ヒロがいて、ヒロがいてぇぇぇぇぇぇえーーーーーーーーーーーーん!」
何が起こったのかわからん。池にダイブしてから5分も経ってないんだが。
でも目の前に全力で泣いてる姉がいる。
ならば、することは一つ。
力強く、ぎゅっと抱きしめる。
「俺はちゃんとここにいるよ。さきねぇに何も言わないでいなくなるはずないだろ?」
「・・・わたしのきょかなしでいなくなっちゃだめ。」
「じゃあ、許可がでたらいなくなっていいの?」
「だめ。ぜったいきょかなんてださない。いっしょうださない。しんでもださない。」
「・・・了解しましたお姉さま。」
「・・・ヒロ、私のこと、好き?」
「好きだよ。」
「大好き?」
「大好きだよ。」
「・・・ずっと一緒?」
「・・・君がそれ望むなら。」
「じゃあずっと一緒ね。お姉ちゃん命令です。」
「じゃあずっと一緒だな。お姉ちゃん命令には逆らえません。」
いつまで一緒にいられるかはわからないけど。
せめてさきねぇが望む間は傍にいようと思う。
最悪結婚できなくてもいいし。姉弟二人でアホみたいに暮らしていくのも悪くない。
「もっと、ぎゅー!」
「はいはい、ぎゅー!」
「・・・ずっとこのままでいれたらいいのに。」
「さすがにそれはきつくね? 風邪ひくぞ。」
「それはそれであり。ヒロに看病してもらえるし。」
「え、それは遠まわしに『お前はバカだから風邪ひかないだろう』ってディスってる?」
「そんなこといってないでしょ。まったく、バカなんだから。」
「あーほら今バカっていったー。激おこー。俺激おこー。風邪ひいてもみかんの缶詰の封印とかないー。ヨーグルトのみー。」
「え、ちょっとそれは協定違反でしょ?『汝、病人にはみかんの缶詰の封印を解くべし』ってマリア様も仰って「あー、そろそろ話しかけても大丈夫だろうか?」
「「え?」」
完全に忘れてた。
美少女がこっちに向かって走ってきてたんだった。
つーか外見に似合わず、ずいぶんおとなっぽい口調だな。
「あ、ごめんねー。お兄ちゃんたち変だよねー? いつものことだから気にし「いいところなんだから邪魔するなクソガキ。」
え、マジで? そういうこといっちゃうの?
ほら、美少女もいらっとした顔で見てるよ。
「おいおい紫さん、相手が誰であろうとそういう言葉遣いは弟的にちょっと好きじゃないなー。」
「・・・この美少幼女の肩もつの?」
やめてくれよすげー目つき怖いよ。なんで子供にまでやきもちやくんだよ。
やきもちは嫌いじゃない、というよりむしろ嬉しいけど。
俺はあんたの教育で年下は女性として対象外になったんじゃねーか。
つーか美少幼女ってなんだよ。美幼女と美少女の中間ってこと? 言いにくくない?
「と、とりあえず上がりません? さすがに寒くなってきたし。お姉ちゃんの体が冷えたら大変だよ!」
「むぅ・・・仕方ないわね。むふふ、残念でしょ? おねえちゃんの柔らかいおっぱいが離れちゃって。」
抱きしめあってたから、ずっとおっぱいくっついてたんだよね。
俺の鋼鉄の自制心を持ってすれば、エロい気分にはならないが。
すげー柔らかい! すげー! 神秘!という感想。
そして当然のように姉をお姫様抱っこして移動を開始する。
「あ、さっきの美少幼女っていうのは、美幼女と美少女の中間を意味する私オリジナルの言葉よ。センスの光るいい言葉ね! 自分の才能が怖いわ! あ、使いたかったらヒロも使っていいわよ? ヒロにだけ特別だからね?」
「あ、はい、わかりました。」
人差し指を立てウインクするさきねぇに素の反応を返す俺。
とりあえず、絶対使わないであろう言葉の使用権をもらいながらも池(?)を移動し、岸に上がる。
あらためて辺りを見渡すが、やっぱ森!って感じがひしひしと。
そして目の前には、不信な目でこちらを見つめる美少幼女の姿があった。
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