第三十八姉 「どこの世界も公務員志向か。世知辛い世の中ねー。」
そういえば、姉でオンリーワンヒロインものってみたことないですね。
もし漫画・ラノベ・ゲームでそういった作品お知りの方、いらっしゃったら教えてくださると嬉しいです。
そして、幸運にも第一回ライブに参加できた者たちは、約一名(実の弟)を除き、何が起こったのか理解できず、呆然としていた。
そりゃそうだ。
「あ~!ら~あ~あ~!らああ~あ~!ら~あ~!ら~あ~あ~~!あ~あ~~~!ら~う~う~う~わぁ~~~・・・・・・」
「ぶらぼぉぉぉぉぉぉぉぉ!むっらっさきー!むっらっさきー!」
さきねぇの歌が終わると同時に、俺の声援が響き渡る。
異世界組三人もパチパチと拍手をしている。
結局、やつらもうちの姉の魅力に取り憑かれたようだな。
弟として、マネージャーとして、ファン第一号として、体を張って姉を守らなければ!
「ふぅ・・・みんな、ありがとー!では、次の曲は~「「まだ続くの!?」」
異世界組から驚きの声があがる。
ちっ、なんだよ、これからいよいよ盛り上がってくるころなのに。
ノエルさんが、おそるおそる声を掛けてくる。
「あ、あのな?二人が仲直り?したのは嬉しいんだが、魔法力測定の結果とか、魔法量計測とか、な?押してるからさ。歌を歌うのは、家に帰ってからにしよう?いいこだから。な?」
「ふむ、それもそうね。聞かせてもらいましょうか、私の結果とやらを!」
「う、うむ。ムラサキは、私も信じられないんだが、私と同じ魔法力Sだ。」
「はぁーっはっはっはっは!では次の曲は~!「だから落ち着け!」
さきねぇのテンションはMAXだ。
まぁ天才魔法使いのノエルさんから同じ位の魔法力だと伝えられれば、それも当然だ。
・・・いいな。
おっと、いけないいけない。
今は魔法力Dだって、成長すればもっと強くなるはずだ。
ノエルさんだって最初はBだったのだ。
頑張って強くなろう。
「最初からSなど見たことも聞いたこともないからな。装置の故障かとも思ったが・・・」
ノエルさんが計測用ハンマーを持って、スイッチを叩く。
ファンファーレが鳴りメーターは一瞬で真っ赤に染まるが、さきねぇと違い一番上ではなく、95%くらいで止まっている。
「正常なんだ。やはり魔法の使い方を教えなくてよかった。もし間違ってヒイロに向けて魔法を使ったら、一瞬で灰も残らないほどに焼き尽くされていたぞ。」
それを聞いてゾッとする。
もし地球に魔力があったら、お姉さまはリビングでベギ○マではなく、ベギ○ゴンを放っていたことになる。
『この女、危険につき』で収容所送りでもおかしくはない。
異世界でよかった。
「さて、これで魔法力検査も終了です。ムラサキさんがSでヒイロくんがDという、驚くべき結果になって私たちも嬉しいよ。冒険者の魔法使い不足は深刻だからね。」
「そんなにいないんですか?」
とても嬉しそうな顔のラムサスさん。
魔法使えたら、魔物を遠くから狙撃すればいいんだから、かなり楽に稼げると思うんだけどな?
「ああ、魔法使いの大半は魔法学校にいってしまうんだよ。」
「マジで魔法学校あんの?ツンデレチョロイン系の生徒会長も?」
「すまない、ムラサキさんが何語を話しているのか理解できない。」
お願いだから、ひっぱらないでくれ。
黒歴史を暴露されているようで居心地が悪すぎる。
「すいません、気にしないでください。魔法学校にいってしまうと、何か不都合でも?」
「あ、ああ。そのまま王国軍や貴族のお抱えとして就職してしまうんだよ。金は入るかもしれないが、死ぬ危険性が大きく、B級以上にならないと名誉もない冒険者と、大きな戦いの気配もなく、適当に訓練してでかい顔していればそれなりの給料が支払われる王国軍。どっちにいくかって話になると・・・」
「・・・そりゃあ宮仕えにいきますよね。」
「どこの世界も公務員志向か。世知辛い世の中ねー。」
「・・・ちなみに、君たちは、冒険者になってくれるんだよね?ノエル様の弟子だものな?」
いつのまにか『ノエルさんの弟子』になっている。
勘違いだろうが、このまま通そう。
ノエルさんには申し訳ないが、『世界最強クラスの魔法使いが俺たちのバックにいる』となると、色々やりやすそうだしな。
「ん~私は冒険者編でも学園編でもどっちでもOKよ?ヒロはどうしたい?」
「とりあえず、冒険者をやってみたいかな。」
「あら、就職先の第一志望が『公務員』だったヒロにしては珍しい言葉。理由は?」
「うん、理由は四つ。まず、せっかくのファンタジーな異世界にきたんだしっていうのが一つ。もし依頼を受けるごとに毎回死にそうな目に会ってやばいようなら、途中から学校でもいいんじゃないかなって。学費とかもあるだろうしさ。」
ちらっとラムサスさんを見る。
暗に『変な依頼持ってくんなよ。もしやばい依頼でも押し付けてきたら、すぐに冒険者やめて魔法学校いった上で、ノエルさんにチクるぞ』と伝える。
ちゃんと伝わったのか、ラムサスさんはうんうんと頷いている。
「まぁ妥当ね。二つ目は?」
「二つ目は、俺たちみたいなどこの馬の骨とも知れないやつらが魔法学校に入学した時に、まわりのやつらはどういう反応をするかわからないってこと。」
「ああ、魔法使いの卵は『俺たちは選ばれた者たちだ!』みたいな選民思考が強いからね。魔法使いや貴族、金持ちの子供も多いし。庶民はすごい大変らしいよ。」
「私も学校はお勧めしないな。たいした魔法も使えないくせに、ふんぞり返ってるクソガキどもが多すぎる。何度燃やしてやろうかと思ったことか。」
ラムサスさんとノエルさんからアドバイスがはいる。
やはりか。
「そんなの全員叩き潰して従えちゃえばいいじゃない。YOU初月王国築いちゃいなYO!」
「三つ目がそれ。絶対さきねぇが暴れて、俺の胃がマッハでやばいことになりそうだから。地球と違って、気に入らないやつを暗殺!とかだってあり得ない話じゃない世界だよ?危険すぎる。まだ魔物相手のほうが楽だよ。」
「一番怖いのは結局人間ってことね。最後の一つは?」
「最後は・・・単なる独占欲。さきねぇに変なやつらが近寄ってくるのが嫌なだけ。ストーカーとかいても警察なんてないし、警備の人間なんてどこまで助けてくれるかわかったもんじゃないし。それに貴族がさきねぇに『俺の妾になれ!』とか言ってちょっかいをかけてきたら、自分を抑える自信がない。最悪、全員殺すよ。」
ノエルさんやラムサスさんが『ヒイロ(くん)が殺すなんて言葉を!?』と言った、ギョッとした顔で俺を見る。
まぁ俺は基本的に『親切で誠実で優しい、いい人』を心がけてるからな。
だが、実はさきねぇに関することでケンカを売られたり、売ったりして暴力には多少慣れている。
そして、この世界は地球の日本ではなく、俺には身体能力の強化と魔法が使える。
『力』があるのだ。
一片の慈悲も容赦もなく、姉と俺のために力を振るうことに、ためらいはない。
たとえ、人を殺すことになろうとも、だ。
「はいはいはいはい、怖い顔しないの!お姉ちゃん、怖い顔してるヒロは好きくないな~?」
「・・・例えば、の話だよ。それに、もしさきねぇが相手を好きなら、やらないよ。」
「それこそまさか、でしょ。ヒロ以外の男をを好きになってる私なんて、全並行世界探してもいないわよ!」
ほっぺたにちゅーされる。
お返しに、俺もほっぺたにちゅーをする。
ノエルさんは顔を赤くしながら、ラムサスさんは『え!?姉弟じゃなかった!?』というビックリ顔で、マリーシアさんは顔を青白くしながらそれを見ていた。
・・・ん?顔を青白く?
よく見るとマリーシアさんはずっと息を止めていたかのような、死にそうな顔をしていた。
「マ、マリーシアさぁぁぁぁぁぁん!」
さきねぇにしゃべるなと脅されてから、呼吸を抑えていたらしい。
そんなに怖かったのか。
完全に俺のせいですほんとうにごめんなさい。
ここまでお読みいただきありがとうございました。
ムラサキさんが歌っているのはこの物語のオープニングソングです(笑)
それと、『YOU初月王国築いちゃいなYO!』はまじぽんリスペクトです。知ってる人はいないかもしれませんがw
ご意見、ご感想ありましたらよろしくお願いいたします




