第三十四姉 「ヒロ!落ち着いて!そんな時はひっひっふーよ、ひっひっふー!」
「や、やだなぁ!冗談ですよ冗談!初対面だからジョークで場を和ませようとしたんです!」
「さぁ、一刻も早く適性検査を受けて、さっさと帰りましょう!」
「そうだな。」「同感ね。」「あ、あはははは・・・」
異世界に来て、一番の恐怖体験でした。
「適性検査っていっても、何やるんだろうな?」
「やっぱ水見式とかじゃない?」
「マジかよ。そしたら大先生は休載中に異世界で取材してた可能性があるな。」
「私は普段は強化系だが、『弟のことを思い続ける間、特質系となる』!」
「持続時間エターナルじゃないですか。」
そして歩くこと数分、ある部屋に通された。
「ここが適性検査を行う部屋だ。」
なんのヘンテツもない、普通の部屋だ。
部屋の中央に、白いシーツを被せられた何かがあること以外は、だが。
「ここでやるんですか?」
「そうだ。そこにある魔法具を使って、な。」
何かを指差すノエルさん。
くっそ、もったいぶるなーほんと!
ドキドキワクワク感がレッドゾーンですよ!
「ちょっと、エルエル!早く見せてよ!びびってんの!?びびってんの!?」
「・・・なぜ私がびびらなくてはならんのだ。そもそもクソエルフどもが作った魔法具だから知り尽くしているわ。」
ラムサスさん(カツラとウホッ!疑惑)とマリーシアさん(受付のお姉さんの名前)は『こいつ、怖いもの知らずにも程があるだろ・・・殺されるぞ・・・』といった表情だ。
聖属性のノエルさんをなんだと思ってるんだこいつら。失礼な。
しかし、クソエルフどもとは…薄々気付いてはいたが、ノエルさんはエルフが嫌いらしい。
168歳ともなれば、色々あったんだろうな。
「それではお見せしよう。これが!魔法適性検査装置だ!」
シーツがバッ!ととられる。
そこには!
「「・・・・・・・・・・・・・・・」」
え、なにこれ。
すごい見たことある。
そこには、箱があった。
両横に穴があいており、中に手を突っ込めるようになっている。
あれだ、バラエティー番組によくあるやつだ。
芸人が箱の中に手を入れて、何が入っているかをあてるやつ。
「これが『魔法適性検査装置・ミズミシキー』だ!」
「え、ノ、ノエル様?適性検査装置に名前なんてありましたっけ?」
「あ?」
「ヒィ!な、なんでもありません黙ります!」
真っ青になるマリーシアさん。
ノエルさん、俺たちの話聞いてやがったな・・・。
「えっと、とりあえずミズミシキーくんの中に手を突っ込めばいいですかね?」
「なんの説明もしてないのによくわかったな。さすがヒイロだ。」
「いや、わかるでしょ普通。んで、これの中身はなんなの?ぬるぬるぐちょぐちょ系?」
「ぬる・・・?いや、魔力が詰まってる。害はない。」
害はないといわれても・・・じゃあなんで中身隠すんだよ。こえーよ。
「中に手を入れて、中にあるものに触れるんだ。熱いと感じたら火属性、冷たいと感じたら水属性、柔らかいと感じたら風属性、硬いと感じたら土属性の適正があるとわかるんだ。」
「「へぇ~」」
けっこうあいまいなんだな。
何も感じなかったり、よくわからない感じがしたらどうすればいいんだろうか。
「・・・とりあえず、まずはヒロがチャレンジするわ。」
「おい。ここは公平にジャンケンじゃないですかお姉さま。」
「やっぱり?ヒロが?ナンバーワン?やっぱり!ヒロが!ナンバーワン!」
「おいおい、俺がそんなんで「やっぱり!ヒロが!ナンバーワン!やっぱり!ヒロが!ナンバーワン!」俺に任せろー!」
俺はボディビルポーズをとる。ムキッ!
ズンズン進み、箱の前に立つ。
ノエルさんから『ヒイロ・・・いくらなんでもチョロすぎるだろ・・・』とのつぶやきが聞こえる。
いいの、これが俺なの!
まぁ最初から俺がいこうと思ってたけどね。
こんなあやしげなものに姉の手を入れさせようとは思わない。
「よし、では、いきます!・・・ハァ!」
いっきに手を突っ込む。あ、なんか触った!
すぐに手をひっこめる。
「どうだった!?どうだった!?どうだった!?」
「なんかいた!なんかいた!なんか触った!」
「まったく、そんなすぐに手を出したら感覚なんて掴めないぞ?もう一度だ。」
ごくり・・・
俺は意を決して再度手を突っ込む。
またなんか触った!
俺は、はわわ顔でさきねぇを見る。
「ヒロ!落ち着いて!そんな時はひっひっふーよ、ひっひっふー!」
「ひっひっふー!ひっひっふー!」
「ノエル様、こいつら頭大丈夫ですか?」
「いや、かなりやばいのは出会った当初から知っている。大目に見てやってくれ。」
失敬な。仲がよろしいだけだ。
俺は中にあるモノを掴む。
うおっ!
またもすぐに手を引っ込める。
「つめた!なんかしらんけどつめた!」
「冷たいっていうことは、水属性に適正があるということですね!」
マリーシアさんから尊敬の視線が送られる。
水属性か。悪くないな。水分摂取に困らないというのは、冒険者にとってかなり重要なのではないだろうか。
「やったなヒイロ!魔法使いになれる可能性があるぞ!それに、水属性は土属性の次に人気のある属性だ!よかったじゃないか!」
・・・・え?今なんか、聞き捨てならない言葉があったぞ。
『土属性の次に人気』?
土属性ってゴル兄さん四天王所属のスカルなんとかさんを代表するように、マイナーで不人気属性ナンバーワンと称されるあれですよね。
その次に人気ってことは、つまり、不人気オブ不人気ってことなんじゃ・・・?
俺が絶句していると、さきねぇの姿が目に入る。
顔は俯き、両手で口を押さえ、肩が震えている。
口からは時折『クッ』とか『ウッ』とか漏れてくる。
・・・ああ、俺と同じ感想にたどり着いたんだな。
大声を上げて、人を指差して、アホみたいに大爆笑しなくなっただけでも成長したな。
弟は嬉しいよ。
そして『おめでとう!』という感じでニコニコしているノエルさんの優しさが痛い。
いいんだよ!どんな不人気属性であろうと愛してみせるよ!
「よし、じゃあ次はムラサキだな。もし適正を持っていなかったら、ヒイロにずいぶん遅れをとるぞ?」
「ふぅー、ふぅー、ふぅー、よし、もう大丈夫!そしてエルエル、私が魔法適正持ってないはずがないでしょ!」
ニヤニヤ顔のノエルさんに、何を馬鹿なことを、といった風に返事をするさきねぇ。
うん、俺もさきねぇの意見に賛成だわ。
だってさきねぇだし。
「よーし、何がでるかな~何が出るかな~?」
さきねぇが箱の前に立つ。
が、いっこうに手を入れる気配がない。
「さきねぇ?」
「ヒロ、どんな感じだった?ぬちょってぐにょってた?」
「ん~、なんていったらいいかわかんないわ。変な感じ?」
「もう、エルエルと揃ってケチね!」
そんなこと言われても困りますわ・・・
「ふー・・・竜神○、キングス○ッシャー、マグナ○エース、F○1、私に力を貸して!はぁ!」
なぜか俺たちが子供のころ大好きだったロボアニメの主人公機を名を呼び、手をつっこむさきねぇ。
意味がわからん。しかもマグナ○エースだけ畑が違うだろ。
ここまでお読みいただきありがとうございました。
『やっぱり!○○(←大学名)が!ナンバーワン!』は私の大学時代に飲み会で使われていたコールのひとつです。
多分うちの大学の一部の人しか使ってなかったでしょうけどw
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というより、『姉もの』として読んでくれてるのか『コメディ』として読んでくれてるのかが気になります(笑)




