第三十三姉 「すいません、話しかけないでもらえますか?ハゲが移るので。」
「お前たちは1時間ごとに何か問題を起こさないと死んでしまう病気にでもかかっているのか・・・?」
「そうです!」
「騒がしくして大変申し訳ありません・・・」
呆れ顔のノエルさんと、ドヤ顔のさきねぇと、まわりにペコペコ頭を下げている俺だった。
「私だ。支部長を呼んでくれ。」
受付のお姉さんに話しかけるノエルさん。
やっちゃったよ・・・また『あなた、誰?マークスリー』で顔真っ赤なんだろ?
次は何が出てくるんだ?イフリート召喚か?
ほら、受け付けのお姉さんも『は?』って顔を・・・してない?
「もしや、あなたは、『破軍炎剣』のノエル・エルメリア様では!?お会いできて光栄です!握手してください!」
「まぁ、握手くらいなら構わないよ?」
なん、だと・・・?どういうことだ?周りもざわついてるぞ?
耳を澄ましてみる。
『嘘だろ…?』『え、あれ、本物?』『初めて見たわ!すげぇかわいいな!』
『あれが伝説の…』『俺ロリコンじゃないけどあれはいける。ロリコンじゃないけど。』
なんという好印象な反応!これが顔真っ赤病少女、いや、ノエル・エルメリアの本来の実力なのか…
「ひそひそ(ノエルさんすげーな!完全に破軍炎剣なめてたわ!)」
「ん~・・・」
ノエルさんの長い耳がすごい勢いでピクピク動いてる。
「ひそひそ(あれだな、一般人はほとんど知らないけど、その道の人は皆知ってる感じなんだな!PCパーツメーカーでいえばASUSみたいな!)」
「ひそひそ(なんでそこをチョイスしたのかわかんないけど、なんか、臭いわね。怪しい臭いがぷんぷんするわ。)」
ノエルさんの長い耳の動きがピタッと止まった。
「ひそひそ(どゆこと?)」
「ひそひそ(私のニュータイプの勘が、ナニカがおかしいって囁いてるのよ。例えるなら『あれ?ID違うけど、もしかして同一人物なんじゃねーの?』みたいな)」
「ひそひそ(え!?つまり、ジサクジエーンってやつですか!?)」
「ひそひそ(可能性はあるわね。事前に『いついつに私がいくからこういう対応をしろ、でないとなにをするかわからないぞ!』みたいな・・・)」
ノエルさんの長い耳がすごい勢いで震えだした。
後姿だからどんな顔してるかわからないけど、なんか地面にポタポタ雫が落ちてるぞ。
受付のお姉さんも明らかに恐怖で引きつった顔をしている気がする。
「ひそひそ(もしくは、金ね。冒険者たちに金を渡して、私を褒め称えろって依頼を出したとしか思えな「金は渡してない!!!!!」
「「「・・・・・・・・・・・・」」」
「・・・あの、ノエ「ラムサァァァァァァァァァス!!!私が来ているのにいつまで待たせるつもりだぁぁぁぁぁぁ!!!!!!」
のえるは おたけびを あげた !
ひいろは すくみあがって うごけない !
むらさきは へいぜんと しているようにみえて じつは すくみあがって うごけない !
うけつけの おねえさんは すくみあがって うごけない !
ぼうけんしゃたちは すくみあがって うごけない !
すると。
ダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダ!
「はぁ、はぁ、はぁ、ノエルさま、はぁ、はぁ、もうしわけ、はぁ、ありません、はぁ、はぁ、おくれました・・・はぁ、はぁ」
息も絶え絶えといった感じでダンディなおじさまが走ってきた。
誰だこのおじさま。
その時、受付のお姉さんの目が漫画みたいにグルグルしてたが、やっと治ったようだ。
「・・・・・・はっ!し、支部長!お疲れ様です!」
「はぁ、はぁ、君も、お疲れ様。頑張ったね・・・はぁ、はぁ、ふぅ~」
支部長と呼ばれたおじさまがこちらに振り返り、スマイル。
「やぁ、はじめまして。冒険者ギルド・アルゼン支部の支部長をさせてもらっているラムサス・クラブというものだ。よろしく。」
「あ、はじめまして。ヒイロ・ウイヅキと申します。ノエルさんにはいつもお世話になってます。」
「ムラサキ・ウイヅキでーす。コンゴトモヨロシク・・・」
「ム、ムラサキ?え、本名?マスクネームとかじゃなくて?すごい名前だね・・・よろしく。」
「ラムサスはこれでも元A級冒険者でな。そこそこには強い。」
「ははは・・・ありがとうございます・・・」
元とはいえA級をそこそこ扱いか・・・しかラムサスさん自身が否定しないとなると、ノエルさんは本当にすごいんだな。
「差し支えなければなんですけど、支部長はノエルさんとどういったご関係か、お聞きしてもよろしいですか?」
「・・・ずいぶん丁寧な態度と言葉遣いだけど、君は、元貴族か何かかい?」
「はい?いえ、一般庶民ですけど?」
「そ、そうか。そうだよな、ノエル様が貴族のガキなんて保護するはずないしな。えっと、ノエル様との関係は「昔調子にのって私にケンカを売ってきてね。ボコボコにしてあげたんだ。」・・・そんな感じだね。」
「はぁ・・・命知らずですね。」
「今から考えると本当にそう思うよ。ついでに世間知らずでもあった。」
「まぁエルエルと対等に戦えるのは私くらいでしょ?」
なぜか姉が見栄を張る。
「エルエルって・・・ノエル様のこと!?君頭おかしいんじゃないの!?地獄を見るぞ!?」
「「どういう意味だ。」」
さきねぇとノエルさんからダブルツッコミが入る。
この人、うっかりやさんだな。そのうちツープラトン喰らって死ぬぞ。
「と、とりあえず適性検査しましょうか?用意もできてるんで。」
「「よろしくお願いしまーす!」」
ラムサスさんと受付のお姉さん、俺たち三人の5人で歩き出す。
なんかラムサスさんいい人っぽいな。
支部長ってことはここのトップなのに、偉ぶってる感じもしないし。
仲良くできそうだ。
「しかし、ウイヅキくんはすごく素敵だね。良かったら今度食事でも一緒にどう?」
前言撤回。
こいつは敵だ。死ね。
「すいません、話しかけないでもらえますか?ハゲが移るので。」
「ハハハハハハハゲちゃうわ!」
強く髪を抑えるラムサス。
ざまぁ!
うちの紫お姉さまにちょっかいかけっからそういうことになんだよ。
バカが!
「というより!ムラサキさん?だっけ?きみに言ったんじゃないんだけど。」
「「え・・・?」」
「ヒイロくんっていい名前だよね。好きな食べ物は?よかったら奢るよ?」
キャァァァァァァァァァァァァァァ!
そういう人でしたかぁーーーーーー!
俺はすぐにさきねぇとノエルさんの後ろに隠れる。
「ラムサス、ヒイロに手を出してみろ。あの時の三つ目のバジリスクと同じ目に合わせてやるぞ。」
「おいハゲ、ヒイロに手を出してみろ。ダメージ率999%のピカ○ュウと同じ目に合わせてやるぞ。」
ノエルさんは腕に黒龍破みたいな炎を巻きつけている。
一方、さきねぇはハンマーを担ぎ、いつでも『ピカピィィカァァァァ・・・・キラン☆』ってできる状態だ。
「や、やだなぁ!冗談ですよ冗談!初対面だからジョークで場を和ませようとしたんです!」
「さぁ、一刻も早く適性検査を受けて、さっさと帰りましょう!」
「そうだな。」「同感ね。」「あ、あはははは・・・」
異世界に来て、一番の恐怖体験でした。
ここまでお読みいただきありがとうございました。
あの時の三つ目のバジリスクがどんな目にあったか
・バジリスクの口の中に手を突っ込みます。
・全力で黒龍破を使います。
・体中の穴という穴から黒い炎が噴出します。
・死にます。
ご意見、ご感想ありましたらよろしくお願いいたします。




