第三十二姉 「あ、お姉さま!そこ見て!すっごい美少女がいる!・・・あ、よく見たら鏡に映ったお姉さまだったわー。」
あらすじ修正したら、ちょっとアクセス数が増えました(笑)
やはりわかりづらかったのか・・・友人にお酒でも奢ることにします。
「・・・嵐のような連中だな。しかし、ああして見ると、どこにでもいる仲の良い家族のようだ。ここ十数年、ノエル様のお話をとんと聞かなくなったが、ノエル様が幸せそうでよかった・・・」
そんなつぶやきがぽつりと漏れた。
ギルドに向かいルンルン気分で歩く姉と俺。
スキップしたいくらいだわ。
「そういえば、魔法の基本知識みたいなのは教えてもらいましたけど、使い方はまだですよね?」
「だから適性検査が終わったらだといってるだろうに。落ち着きなさい。」
「もぅ、もったいぶるわね~!そんなだからモテないのよ?」
「バ、ババババババカ!私はモテないわけではな、ないわ!何いってんだか!何いってんだか!」
動揺しとる。
こんだけかわいいんだから、浮いた話の一つや二つあってもおかしくないと思うが。
まぁうちのお姉さんみたいに、告白してきた100人以上の男を一瞬で全滅させた『人斬り抜刀斎』『ミスジェノサイド』『全改造ビルバイン』など、数々の異名を持つ女もいるしな。
いや、うちのお姉さんは例外中の例外か。
「何が出るかな、何が出るかな・・・エルエルの~、コイバナ~!」
「あ、ヒイロ、あそこにいるひげもじゃがドワーフ族だぞ~?ちっちゃいな~?」
とんでもない話のそらし方だな。
いや、アルゴスさん見てるからドワーフくらいわかるよ。
しかもあんたよりはおっきいよ。
だが、俺も『一人ずつコイバナ披露ー!』『イェーイ!』みたいな合コンノリは好きじゃない。
ここは助け舟をだしますか。
「わ、本当だ~。ちっちゃいですね~?」
「な~?ちっちゃいな~?」
あ、めっちゃ睨まれてる。
聞こえてしまったらしい。
ごめんなさい、ディスる気はなかったんです!
・・・あれ、急に目をそらしたぞ?
ノエルさんに視線をやる。
「ん?どうしたヒイロ?他にも何か聞きたいことがあったか?」
「えっと、いいえ、なんでもありません。」
一瞬、ドワーフに向けるノエルさんの視線が『見てんじゃねーよ?コロスぞ!?』的な、マガジンに出てくるヤンキーのような殺気走った目をしていた気が・・・いや、きっと気のせいだろう。
こんなどうみても聖属性をもってそうな美エルフ少女がそんな、ね?
「ちょっとちょっとちょっとちょっと!私も会話に混ぜなさいよ!なんで仲間はずれなの?おかしくない!?たとえ私が許しても、私が決して許さないわよ!」
どっちなんだよ。
「あ、お姉さま!そこ見て!すっごい美少女がいる!・・・あ、よく見たら鏡に映ったお姉さまだったわー。」
「あら、もうヒロってば~。このお姉ちゃん大好きっこめ~?」
おでこを人差し指でツンと突かれる。
もうご機嫌状態だ。ちょろかわいい。
なんか、ノエルさんも羨ましそうな顔でじーっと見ている。
しかし、ここは気づかないふりで。
ごめんなさいノエルさん、今やったら姉の機嫌がさっきの倍は悪くなるので怖いんです。
フォローすんの結局俺だし。
そんな感じで歩いていると、ギルドが見えてきた。
最初は特に思わなかったけど、想像以上にでかいし立派だな。
学校の体育館よりでかそうだな。
イメージとして、酒場みたいなとこでカウンターに人がいて・・・みたいな感じだと勝手に思ってた。
「ノエルさん、なんか冒険者ギルドでかくないですか?こんなもんなんですか?」
「ん?ああ、ここは他の町に比べてかなり大きいほうだ。」
「なんで?ここってそんな重要な街なの?それなりには賑わってるけど・・・」
さきねぇの疑問ももっともだ。
「重要といえば重要だな。ここいらは、出現する魔物が弱い割りに数が多いのが特徴だ。それに、そう遠くない場所に草原、森、山、荒地に砂地に小規模なダンジョンと、冒険者として生活するならば避けては通れない、様々な地形が存在する。つまり、駆け出し冒険者の修行場として人気なのさ。」
「なるほど。新米冒険者の研修先として極めて有用である、と。じゃあギルドのこの広さは訓練スペース込みってことなんですね。」
「そういうことだ。さすがに道端で武器を振り回すわけにもいかないだろう?」
うちのお姉さんが目を輝かせながらノエルさんに迫る。
「つーかダンジョンあるの!?やっぱり入るごとに毎回構造が変わったりするのかしら!腐ったパンとか落ちてたり!」
「腐ったパン・・・?いや、ダンジョンにパンなんか落ちてないだろ。あったとしても、そんな怪しげな食べ物に手を出すバカはいない。」
俺たちの世界の2次元商人は食べますけどね!
「基本的に食料は自分で持っていくか、中で魔物を食べるかのどっちかだ。それと、高難度のダンジョンでは構造が変化するものもあるな。まぁそのレベルになると、ほんとに魔境のほうにいかないとないが。」
死んでも1000回生き返れるならまだしも、一発アウトなこの状況でダンジョンとか潜りたくないわ~。
でもさきねぇは『ダンジョンにカチコミましょう!』とかいいだしちゃうんだろうな・・・
保護者さん同伴とか許されるのかな?
そんなこんなで冒険者ギルドの入り口についた。
ちょっと緊張するな。ついに冒険者デビューか・・・
いや、違った。魔法適正検査にきただけだった。
はやとちりしちゃったぜ。
「これで、ついに冒険者ね!」
「だから適正検査にきただけだと何度言えば!話を聞け!」
「まったくです。しっかりしてください姉上。」
セーーーフ!
口に出さなくてよかったー!
そして、ノエルさんが扉を開けてギルドの中に入る。
それに続き、中に入る俺たち。
中はこんな感じなんかー。
感想を一言で言うなら『地方の市役所?』って感じだった。
薄汚れた壁や『トイレはこちら』と書かれたくたびれた感じの看板など、あるある感が強い。
ノエルさんが肩で風を切ってカウンターへ向かうので、まわりをキョロキョロ見ながらついていく。
やっぱ人間族が多い。ちらほらドワーフや獣人もいるが。
エルフは・・・いないな。
顔や装備からして明らかに『新人です!』といった人もいる。
「ねぇ、なんかめっちゃ見られてない?」
「あ、やっぱ思った?」
理由を考えると、すぐに思い至った。
・なぜかベテランオーラを醸し出すエルフの美少女
・でかいハンマーを担いでいる人間族の美少女
・かばんからバットがはみ出ている高校球児もどき
これらがいっぺんに入ってきたのだ。
そりゃ見るわ。
「おまえら全員手をあ「ここでそれをやるのはさすがにまずい!」
俺はすぐに姉の口を手で塞ぐ。
お願いだから最初くらいはTPOをわきまえてくれ!
あ、手を舐めるな!
「お前たちは1時間ごとに何か問題を起こさないと死んでしまう病気にでもかかっているのか・・・?」
「そうです!」
「騒がしくして大変申し訳ありません・・・」
呆れ顔のノエルさんと、ドヤ顔のさきねぇと、まわりにペコペコ頭を下げている俺だった。
ここまでお読みいただきありがとうございました。
ノエルさんは年齢=彼氏いない暦で全くモテません。というのも
・大森林時代=キチ○イ扱い
・冒険者時代=狂犬扱い
・大戦以降=英雄扱い
・大陸安定以降=賢者扱い
なので簡単に人が近寄ってこない上、ノエルさん自身がチャラ男が嫌いなため、ナンパされたら「死ね。消えろ。」、手でも触れられようものなら謎の人体発火現象だったからです。
ただ、毎年行われるギルド非公式『この冒険者がかわいい!トップ10』でランクインから今まで数十年間ランキング落ちしたことがなく、その中でも32年間連続一位キープし、殿堂入りを果たした超人気者でもあります。
また、本人非公式(つーか知らない)ノエル様ファンクラブは現在は会員数こそ少ないものの、設立60年超というギルド最古参ファンクラブであり、会員は各国や各種族のVIP、歴代のA級冒険者、ギルド役員など絶大な力を持つものばかりです。
つまり、ノエルさんは大陸のアイドルだったのです!
という設定を今考え付きました。
本編とちょっと関係させられたらいいな。
ご意見、ご感想ありましたらよろしくお願いいたします。




