第二十二姉 「よ-し、お姉ちゃんにお任せだゾっ☆」
累計5000PV突破しました。ありがとうございます。
このお話を読んでくださった皆様が楽しんでいただけたら幸いです。
最初は気にも留めてなかったんですけど、こうやって『読んでくださっている方々がいる』というのは嬉しい限りです。
「・・・すごい親バカだなあの人。あの戦いの凄まじさからは想像できんな・・・」
なんて会話があったらしいが、今は知る由もない。
武器は買わなかった。まぁ当然だわな。
そもそも剣なんか持ったことないしね。
冒険者ギルドでそういった人向けの『その人に向いた戦い方教室』みたいなのがあるらしいから、そこで色々試してみてからにしようということになった。
「よし、じゃあ冒険者ギルドにいきましょうか!」
「了解です姉上!」
「・・・え?買い物では?」
そうだった。
武器屋のせいでテンションがアゲアゲになってしまっていた。
「そうですよ姉上!自分勝手に行動しないでください!全く!」
「おぉっと、ここでまさかの裏切り!?・・・からの?」
「・・・冒険者ギルドに~?」
「「いく~?」」
「だから買い物にきたの!」
某お笑い芸人のネタを披露するも、受けなかったようだ。残念。
また歩き出すと、少しいったことろに武器屋の何倍もある大きさの店を発見した。
看板には『ユリシロ アルゼン支店』という文字と服の絵が書かれている。
「ここだ。新品の服がそれなりに安く買える。」
「・・・なんだろう、この懐かしい感じは。」
「やっぱヒロも思った?」
とりあえず店内に入る。
もちろん自動ドアではないので手で開ける。
「いらっしゃいませー!何をお探しですか?」
すぐに笑顔の店員に捕まる。
俺、店員苦手なんだよね・・・。
「ああ、後ろの二人が普段着る服を何着か買いたいんだ。」
「・・・かしこまりました。ではどのような服をお求めでいらっしゃいますか?」
「もうめんどくさいから、そこの端から端まで全部ちょうだい、でいいんじゃない?」
「それもそうだな。そこの端からは「待ってぇーーーーーーーーーー!」
大絶叫スマッシュブラザー!
「ねぇ話聞いてました?お金を借・り・て!服を買うの。わかる?返済義務が生じるの。わかる?最初は必要最低限って話したよね。わかる?・・・ちょっと、頭冷やそうか・・・?」
「「すいませんでした・・・」」
まったく、うちのお姉さんは買い物が豪快すぎて困る。
まぁ俺は冗談でもあんなこと言えないから、ちょっと憧れはするけどね。
さすが俺の姉、かっこいい。
そして二人は『エルエルが悪ノリするから私が弟に怒られたじゃない!』『そもそも言いだしっぺはムラサキだろうが!罪を擦り付けるな!』と罪を擦り付けあっていた。
人とは醜いものだ・・・。
俺は笑顔で困っている店員に話しかける。
「あー、こっちで勝手に選びますから大丈夫です。ありがとうございます。」
「・・・はい?えっと、あの、はぁ。わかりました。失礼いたします・・・。」
軽く頭を下げ営業スマイルで追い返すと、なぜか店員はビックリしていた。はて?
「なんか驚いてませんでした?」
「この店にくるのは大体それなりに金を持ってる上流市民や貧乏貴族、金のある冒険者たちだからな。態度がでかいやつが多いんだ。ヒイロのように笑顔で礼を言って、頭を下げる人間族などそうそういないよ。」
「はぁ、そんなもんですか。」
「そんなもんだ。しかし、ヒイロはいつ見ても礼儀正しいし物腰が穏やかだな。素晴らしい。他の人間族もヒイロを見習ってほしいものだ。」
「まぁねまぁねまぁねまぁね!あたしの愛しい弟だからね!あたしの!」
鼻高々といった感じのお姉さまが会話に乱入してくる。
それからさきねぇによる『私の弟はどれくらい素敵でいい子で姉思いでお姉ちゃん大好きか』という演説が始まった。
エルエルは感心したようにフンフンとか頷きながら聞いてるし、店内にいた人たちも何事かと集まってきて話を聞いていた。
「・・・というわけで、私の弟はお姉ちゃん大好きなわけですよ!!!みなさん、ご清聴ありがとうございました!これからもうちの弟をよろしくお願いします!」
ワァー!パチパチパチパチパチパチパチ!
まわりの観客(?)からは『よかったよー!』『いい弟さんね!』『面白かったわ!』と大絶賛されている。
演説開始からすでに30分が経過している。
その間、俺は一人で服を選んでいた。
なぜなら店員含め、店内の全ての人が姉の演説に聞き惚れていたからだ。
あの人には異常なカリスマがあるんだよな。
見知らぬ他人の弟自慢とか聞いてて楽しいんだろうか。
ちなみに、姉の弟演説にたいして、恥ずかしさなどはあまりない。
慣れているということもあるし、俺自身、同じことをしろ(姉について素晴らしさを語れ)と言われれば、30分程度余裕で語れるからだ。
故に、俺たちの友人たちは姉弟自慢や思い出話を聞かされすぎて、『3歳の時、緋色が紫に結婚を申し込んだ』だとか『同じ布団の中で二人同時に盛大なオネショをして溺れかけた』など、俺たち姉弟の過去について相当詳しく知っている。
「ふぃー、しゃべったしゃべったー。ヒロー、お姉ちゃんの愛を感じたかい?」
「うん、かなり昔っからものっっすごいレベルで感じてるから大丈夫だよ?」
「いやん、もうヒロったら~♪こんなところでプロポーズ~?」
「どこにそんな要素が!?」
周囲からは『ひゅーひゅー!』だの『ふーふ!ふーふ!』だの冷やかしが聞こえる。
小学生か。
「ほら、もうわかったから服買おうぜ服。選んでよ。」
「よ-し、お姉ちゃんにお任せだゾっ☆」
なんかキャラがおかしいぞ。
まぁいつものことか。
ちなみに、俺の持っている服は全て姉チョイスだ。
残念なことに、俺のセンスはやばいらしい。
中学生の時、俺のセンスを試すために柏で人気の店にいった時のことだ。
姉と店員さんから三着の服を見せられ、一つ選べと言われた。
俺はこれが一番いいかな~と選んだ服は
『それだけはありえないわ』『それだけはありえないっすね』
とフルボッコだった。
それ以来、俺の服は全て姉が選んでいる。
「これとこれなんかいいんじゃない?こっちのと組み合わせることも出来るし。」
「じゃあそれで。」
「あと、これは?いつもと違う感じがするけど、せっかく異世界なんだしカラーチェンジを狙うのも手だと思うのよ、おねーちゃんとしては。」
「じゃあそれも。」
こんな感じ。
俺の服を選び終えると、次はスーパーお姉ちゃんタイムだ。
「ねぇヒロ、こっちとこっち、どっちがいいと思う?」
「うーん、俺はこっちのほうが好きかなー?」
「やっぱなー、ヒロはこういうほうが好きだと思った。じゃあこれにしようっと。次はこれとー、これ!」
「難しいな、どっちもかわいいと思うよ。まぁさきねぇが着たら何でもかわいいんだけどさ。」
「もうヒロってヴァー!このお姉ちゃん大好きっ子めー!」
「やーめーろーよー!」
抱きついてくる姉にそういいつつも、楽しいし嬉しい俺。
そんな俺を抱きしめて喜ぶ姉。
最高にWIN-WINな関係といえよう。
ただ、いちゃいちゃしすぎてノエルさんが
『あ、あのー、私にはどっちが似合うかな?』と言っていたが、完全に耳にはいっていない俺たちだった。
ノエルさんはしょんぼりしていた。もちろん後でみんなで選んだけどね!
ここまでお読みいただきありがとうございました。
いちゃいちゃの定番『服の選びっこ』です。
いちゃいちゃ服選びするだけで一話いこうかと思いましたが、とりあえず短くしときました。
いちゃラブ好きにはたまらないでしょうが、それ以外の方には受け入れられないと思ったので・・・
ちなみに、この世界の一般市民は古着が普通です。
ご意見、ご感想ありましたらよろしくお願いいたします。




