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あねおれ!~姉と弟(おれ)の楽しい異世界生活~  作者: 藤原ロングウェイ
第二章 異世界の町にいってみよう!編
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第二十一姉 「きっと、みんな照れ屋なんだろう。」

 やり遂げた顔のノエルさん。

 いや、ありがたいんですけど、とりあえず蛇さんしまいましょうよ。




 結局、さっきの隊長さんはノエルさんを知っていたみたいで、DOGEZAをして平謝りしていた。

 最初は激おこぷんぷん丸だったノエルさんだが、姉と俺が口々に褒め称えると、コロッと機嫌が直った。


「しっかし、さっきのやつすごかったわね!キシャー!って!あれは召喚魔法とかなのかしら?」

「いや、あれは火魔法だよ。蛇の形をした炎を作り出しただけだ。意思をもってるわけではない。」

「でも、めっちゃでかかったですね。びびりましたよ。」

「・・・怖ろしいか?」


 まるで何かに怯えたように聞くノエルさん。

 姉と見つめ合う。

 そして。


「「全然。」」

「だってエルエルよ?真っ赤になってプルプルしてるイメージのほうが強くて、とてもじゃないけど、その、『破軍炎剣バーニングピアス』っていうより『ばにぴあ!』っていったほうが適切っていうか。」

「どんな強い力を持っていたとしても、ノエルさんは俺たち姉弟を助けてくれた、恩人のノエルさんですよ。」

「そ、そうか・・・ありがとう。」


 ちょっと涙ぐんでるノエルさん。

 まぁ知らない人からしたら、伝説の英雄で、あんな炎を操れるって知ったら、逃げ出すか媚を売るかだよな。

 俺たちにとっては親切でかわいい幼女だ。

 これからも仲良くやっていきたいな。




 そんなこんなで蛇さんをしまい、三人で街に入る。

 街中は予想と違っていた。

 RPGによくある風景を考えていたが、なんといえばいいのか、『旅番組でよくでてくるヨーロッパの田舎町』みたいな印象だ。

 まぁ当然だよな。RPGの町なんて、家の数が明らか少ないもんな。

 しかし・・・


「なんか、めっちゃ見られてますね。」

「しかも、目を合わせるとすぐ俯かれるわね。」

「きっと、みんな照れ屋なんだろう。」


 絶対違うと思うよ。

 確実にさっきの炎の蛇さんだよ。


 通る過ぎる街の人たちを見る。

 なんか普通だな。民族衣装みたいなのを着てる人もいれば、初期のユニ○ロみたいな原色のTシャツみたいなのを着てる人もいる。


「お姉さま、この世界の技術、けっこうすごくないですか?赤とか青とか黄色とか、服のカラーリングめっちゃ豊富なんですけど。」

「確かに。染料が流行りだしたのって江戸時代くらいからだっけ?異世界も油断ならないわね。」

「ん?服の色はグミーで付けてるんだぞ?」

「「またグミーかよ!」」


 グミー万能すぎるだろ。

 そのうち回復に使う薬草とかポーションも『原料はグミーです!』とか言い出さないだろうな。


「グミーを倒して、それを水の入った桶に入れてかき回すんだ。そうするとグミーの色に応じた染料ができる。けっこうな時間かき回さなきゃいけないので、大変だけどね。」

「はぁ。だから単色ばっかで複雑な色使いがないのか。」

「そのグミー桶に服ぶっこむだけだもんね。つまり、凝ってる色使いのやつは高いってことね・・・高いやつ買おう。」


 グミー談義をしながら歩いていると、ある看板が目に付いた。

 アレは、まさか・・・!


「姉上、武器屋を発見したでござる!」

「なんですって!?BUKIYA!?」

「あ!おい!急に走るな!」


 そんな言葉もなんのその、二人仲良く手を繋いでダッシュする。


「ここがあの武器屋のハウスね!」

「圧巻ですね姉上!」


 石造りの店に『アルゴスノブキヤ』という文字と、剣の絵が書かれた看板。

 まさしく武器屋!

 入店料なんて取られないだろうし、早速入ろう!


「おじゃましまーす。」


 一応声をかけてから中に入る。

 すげぇ!

 壁に掛けられた大きな斧!

 棚に並べられた剣や短剣!

 矢のいっぱい入った筒と大小様々な弓!

 明らかに『頑固です!』といった感じの厳ついちっちゃいおっさん!

 世界よ、これが『BUKIYA』だ!


「・・・おい、冷やかしなら帰んなガキども。」


 キター!予想どおりの職人っぽい発言!

 冒険者になったらここを贔屓にしよう!


「大丈夫よ!今は無一文だけど、私たちが冒険者になったらここで武器を買うわ!だから客よ!未来の!」

「・・・・・・そうか。」


 さすが紫お姉さま!暗に買わないって言っちゃった!

 おっちゃんも、うちの姉から危険な臭いを嗅ぎ取ったのだろう。

 それだけ言うと、また武器の手入れに戻った。


「二人とも!急に走るな!迷子になったらどうするんだ!」


 お母さんみたいなことを言いながらノエルさんが店に入ってきた。

 すると、おっちゃんの動きが止まった。

 目をこれでもかというほど大きく開き、ブルブル震えている。


「もしや、あなた様は、ノエル様ではありませんか・・・?」

「ん?そうだが・・・面識があったかな?記憶にないが?」

「やはり!やはりノエル様!お久しぶりでございます!精霊王よ!この導きに感謝します!」


 なんだ?昔なじみなのか?ノエルさんは知らないっぽいが。


「どこかで会ったことがあるのかな?」

「はい、大戦時に一度。『アルゼン荒野の戦い』で命を救われた者の一人です。」

「!そうか、あの時の市民の一人か・・・。助けられたのなら良かった。」


 大戦時って、今から約90年くらい前の話だろ?

 このおっちゃん、何者だ?




 話を聞くと、このおっちゃんはドワーフだった。

 昔の大戦のときに、この街の近くで激しい戦いがあったらしい。

 その時の戦いでノエルさんに命を救われたようだ。

 なんでも、千匹近くのアンデッドの群れを、ノエルさん一人で壊滅させたらしい。

 ノエルさんパねぇ。

 本人は『大げさに伝わってるだけだ。私が活躍したのは本当だが、みんなで戦った結果だよ』とのこと。

 いつか、本人からその話を聞きたいものだ。


「ノエル様、この人間族の子供たちは?」

「ああ、私の友人だ。まだ冒険者登録もしていないが、そのうちするだろう。優しくしてもらえると助かる。」

「そうでしたか。わかりました。何かあれば私に声をおかけください。ご協力させていただきます!」


 こうして、街での知り合い第一号が出来たのだった。




「コソコソ(そのうち、この二人がいくらかの金を持ってこの店に武器を買いに来る。その時に、さりげなく店で一番良い武器を渡してやってくれ。料金はあとで通常の倍支払う。)」

「コソコソ(それは構いませんが、なぜそんなことをするんです?)」

「コソコソ(バカモノ!二人が初めて自分でする買い物だぞ!良い武器を選んだなって褒めてやらないといけないだろう!気が利かんやつだな!)」

「コソコソ(も、申し訳ありません!)」

「では、頼んだぞ。」

「はい!お任せください!」



「・・・すごい親バカだなあの人。あの戦いの凄まじさからは想像できんな・・・」


 なんて会話があったらしいが、今は知る由もない。



ここまでお読みいただきありがとうございました。

ご意見、ご感想ありましたらよろしくお願いいたします。


ノエルさん、寿命の短い人間族には忘れられがちですが、他種族からは未だに尊敬と畏怖の念を集めています。

ノエルさんが大活躍して魔物をぶっ殺しまくった大戦は約90年前なので仕方ないといえば仕方ない、のかも?

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