第二十姉 「・・・私の名を言ってみろ。」
なんか、アホな会話ばっかりでいちゃラブしてない気がしてきた・・・どうしてこうなった。
頑張っていちゃラブ回を作りたいと思います。
そして結局、半分近くをあーんで食べさせっこした。
残りはノエルさんが魔法袋に保管してくれた。
おやつ、ゲットだぜ!
「魔物はみんな食べれんの?おいしい?」
「いや、食べられるものもいるし、まずかったり毒を持っていたりで食べれないものもいる。」
「へー、それはどうやって判断するんですか?」
「いや、食べるんだよ。食べれるかどうかそれで判断する。」
食べれるかどうかを食べて判断するっておかしくねーか?俺がおかしいのか?
「・・・毒を持ってるやつもいるんですよね。それは?」
「食べるよ。だから新種の魔物を狩ってきた時なんか、お祭りだよ。命知らずがみんなの前で毒見をするんだ。盛り上がるぞ!」
うわーやめてよそういうの。絶対俺の役目になるから。
「そりゃ姉さんに食べさせる位なら俺が喜んで食べるけどさ!」
そりゃ姉さんに食べさせる位なら俺が喜んで食べるけどさ。
・・・ちょっと待て、先読みすんな姉。
「えへへー、ヒロなら絶対こう思ってるなって思って♪」
「さすがですね姉上。ならわかってますね。危険なことはしない、させない、寄り付かない、ですよ。」
「前向きに善処いたします!」
「・・・お前たちは仲がいいのか悪いのかわからない時があるな。」
不思議な感じのノエルさん。
まぁなんだかんだいっても、いざという時は絶対に俺を死守しようとするからな、姉さんは。
この世界で頑張ったら、姉さんの負担にならない、いや、背中を預けあうような位置までたどり着けるだろうか。
なってみせる。
姉さんは俺が守る。
何があっても、何を犠牲にしようとも、だ。
そんな俺を、姉はニコニコと笑顔で見守っていた。
それから建物に向かってまっすぐ歩いて30分弱、ついに異世界タウン『アルゼン』へ到達した。
電柱くらいある高さの壁が並んでいて、そこに大きな門がある。
壁に囲まれた中に街があるのか。
たしか昔の中国なんかは大体こんな都市だったみたいだな。
三国志の知識だが。
三人で門を通ろうとすると、声をかけられた。
「ちょっと止まってくれ・・・見慣れない顔だな。どこからきたんだ?身分証明はできるか?」
どうやら門番さんらしい。
身分証明なんてもちろんできない。
ここは大戦の英雄『破軍炎剣』様にお力添えをお願いしよう。
姉と二人でキラキラした目でノエルさんを見つめる。
その視線×2を受けて、ノエルさんはニヤリと笑う。
「お勤めご苦労。下がっていいぞ。この二人は私の友人だ。」
おお、大物っぽくてかっこいい!
しかもノエルさんから友人発言が。
そう思ってくれてたのか。嬉しいな。
さきねぇもそう思ったらしい。
見つめ合って微笑みあう。
「・・・お嬢ちゃん、君の友人だったとしても、身分証明は必要だよ?もちろん君の分もね。」
ノエルさんがビシッと音を立てて固まる。
・・・なんか雲行きが怪しくなってきたぞ。
「ヒソヒソ(なぁ、もしかしてさ、自分が有名だと思ってるの、ノエルさんだけなのかな?)」
「ヒソヒソ(奇遇ねヒロ。私も今そう思ったわ。最悪ボケてる可能性も視野にいれたほうがいいわね。なんたって168歳だし。)」
「わ、わたしの名前は、ノエル・エルメリアなんだが・・・?」
ノエルさんの頬が引きつっている。
『あなた、誰?パート2』を食らってしまったのだ。
当然といえば当然かもしれない。
「はぁ、そういうこと言う人多いんだよね。『私はノエル・エルメリアだ。これを安く売れ』とか『酒代をつけにしろ』とかさ。ほとんどの人が本人と会ったことないから、それで通じると思ってるのかね?ちょっと詰め所まできてもらおうかな?」
「・・・・・・」
ノエルさんの持ちネタ、『真っ赤なお顔でぷるぷる震える』だ。
やっぱり一日に一回は見たいね。
「ヒソヒソ(もしかして自分が英雄だと思い込んでる系だったりするのかしら?やばくない?)」
「ヒソヒソ(でも恩人には違いないんだし。もしもの時は俺たちが成年後見人として市役所に届け出よう。)」
ちなみに、ノエルさんが本物であることを俺たち姉弟はちゃんとわかっている。
わかっている上での発言だ。
ノエルさんには悪いが、この状況が面白いのでもうちょっと見ていたい。
大事にはならんだろー。
しかし、門番の一言で事態は一変した。
「君たちさ、妹の面倒くらいちゃんとみてくれよ。こっちもこんな子供のままごとに付き合えるほど暇じゃないんだからさー。」
はいバカ約一名はっけーん。
ノエルさんを上から目線で子供扱いなんて、無知って怖いな。
そう思ったとき、ノエルさんの体から得体の知れないナニカがあふれ出した。
あ、これ、火球の時と同じ感じだ。
つーかあの時以上のパワーが渦巻いている。
そして。
「・・・来い、『火炎王蛇』。」
辺りが急に熱くなった。陽炎が揺らめくほどだ。
そして、そこには、門と同じ位の大きさの炎の蛇がとぐろを巻いていた。
姉と俺はすでにダッシュでノエルさんの後方に逃げている。
門番さんは棒立ちだ。ぼーっと炎の蛇を見上げている。
きっと頭がこの事態に追いついていないんだろう。
まさかあんな美少幼女がこんな化け物を呼び出すとは、いったい誰が思うのか。
「・・・私は、この二人を連れて、街に入る。これは確定事項だ。素直に通すか。灰になるか。選べ。」
大事になったぁーーーーーーー!?
え、あの人すごいとは思ってたけど、こんなすごかったの!?
そして、あの甘さと優しさと心強さは俺たちに対してだけだったの!?
あ、門番さん、座り込んだ。
腰が抜けたんだろうな。涙目だ。
これはちょっとシャレにならんな。
「あ、あのーノエルさん、ちょっと落ち着きましょうよ。ね?深呼吸ですよ深呼吸。」
「エルエル、さっきのグミ食べましょうよグミ。美味しかったし!ね!」
「・・・大丈夫だ。絶対にこの街で二人に買い物をさせてやるからな・・・!」
炎の蛇が『キシャーーーー!』と雄たけびをあげる。
嬉しいよ。嬉しいけど落ち着いて!モルダー、あなた、疲れてるのよ!
その時、門の向こうから兵隊っぽい人たちを連れた、隊長っぽい人がやってきた。
「何事だ!?・・・あ!ノ、ノエル様!いったいどうなされたのですか!?」
「・・・私の名を言ってみろ。」
「は?」
「私の名を言ってみろ!」
「キシャーーーーー!」
炎の蛇が大きな口を開けて威嚇する。
「ひぃ!ノ、ノエル・エルメリア様です!た、大戦の英雄!『破軍炎剣』のノエル様です!」
「・・・私は街に入る。後ろの二人もだ。異論はあるか?」
「い、いえ!ありません!どうぞお入りください!」
「・・・・・・ふぅ、二人とも、待たせたな。私の名前のおかげで!許可も下りた。さぁ街に入って買い物をしようか!」
やり遂げた顔のノエルさん。
いや、ありがたいんですけど、とりあえず蛇さんしまいましょうよ。
ここまでお読みいただきありがとうございました。
ご意見、ご感想ありましたらよろしくお願いいたします。
全く関係ないですが、紫さんの「さっきのグミ食べましょうよグミ。」ってセリフがかわいくてお気に入りです。自分で書いたんですけど。




