第二姉 「・・・押すなよ? 絶対押すなよ? フリじゃないからね? ほんとに怒るからね?」
書き溜めてから投稿するつもりが、手違いで第一話を投稿してしまいました。真夜中に。さっさと消そうと思い小説を確認すると、すでにお気に入り登録をしてくださった方が!感激!
結論として、池が光ってた。あと渦巻いてた。
「・・・いつのまにこんな素敵ギミックを搭載したのかしら。デートスポットにいいんじゃない? それか町おこし狙ってみる? 『千葉県にバ○ジの大渦が存在した! ここで修行すればあなたも獣王に!』とか。」
姉のそんな言葉につい噴いてしまった。深く不覚。
「いやいやいや、無理があるだろ。深さなんて膝くらいしかねーぞ。そもそも渦一個しかないですやん。・・・しかしこの池、排水溝なんてあったのか。排水シーンなんて初めて見たわ。貴重なワンシーンですね。」
ふと姉の顔を見ると、真剣な表情で何かを考えている。うむ、我が姉ながら凛々かわいいな。ときめいてしまう。弟的な意味で。
「排水シーンってなんか響きがエロいわね。でちゃうぅぅぅぅって感じで。」
「ちょっと黙って。」
俺のときめきを返せ。
ちなみに俺はシャイなピュアボーイなので自分からシモネタを振るのは苦手だ。だって恥ずかしいじゃん?
逆に姉は一人でシモネタを言って一人で爆笑するようなおっさんくさいところがある。そこもまたいとおかし。
「しかしこの池をライトアップなんてして誰得なのかね? この時間にここにくるやつなんていないと思うが・・・」
「え? いるじゃん。ここに。」
「・・・前言撤回。俺たちくらいでしょ。金の無駄に感じるけどね。」
「いい、ヒロ。世の中にはね、無駄なことなんてなにもないのよ? りょーちんもそういってたわ。」
「いや、そういうちょっといい話的なことじゃなくてね? つーかりょーちんそんなこといってたっけ? 記憶にないな。」
全巻持ってるんだけどな。
「うん、まぁ諸葛亮のことだからね。」
「ざけんな。孔明のことりょーちん呼ばわりするやつ初めて会ったわ。つーかそんなの絶対いってないでしょ。捏造はダメ!絶対!」
と、そんなバカな話をしながら俺はしゃがみこんで水面を見つめる。
俺の記憶が正しければこの池に排水溝なんてなかったはずだが・・・それにこんなに光ってるのに、ライトがどこにも見当たらない。
ここでふと俺のオールドタイプの勘がキラーンという音をたてた。
「・・・押すなよ? 絶対押すなよ? フリじゃないからね? ほんとに怒るからね?」
「お、おおおおおおお押すはずないでしょ! 何馬鹿なこといってるのかしら! 今日はあなたの16歳の誕生日よ! 王様がお呼びだから、早くお城にいかないと!」
どこの勇者だ。
しかし危なかった。この感じだと、あと数秒遅かったら俺は最愛の姉の手によってこの光る池にダイブさせられるところだった。最高の相棒にして最大の敵、姉!恐るべし!
そんな時だ。音が聞こえてきたのは。
『聞こえますか、勇者よ』
ではない。
『ヴーン』だ。
耳元でそんな音が聞こえたと思ったら、ナニカが俺の耳に張り付いた。
「ぅわぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
パニックになった俺は足を滑らせ、光る池にダイブした。
(くそ、まさか落ちるとは・・・さっきのはなんだ?感触的にカナブンあたりか?ちくしょう、無駄に硬い装甲を纏いやがって・・・)
俺は水中でそんなことを考えていた。
『水中でそんな落ち着いてられるわけないだろ?』だって?
俺を誰だと思ってるの? むしろ俺の姉が誰だと思ってるの?
川に行けば背後から川へ叩き落され。
海に行けば突然スープレックスで海に放り投げられ。
ザリガニのいるドブ川にいけば『あそこにいるでかいザリガニを釣りたいんだけど、釣竿が届かないのよね。ちょっといって手で捕まえてきて。で、私の目の前に沈めて。それ釣るから』と言われ。
幼少より水に慣れ親しんだ(?)俺にとって、突然水の中に叩き込まれたとしても、どうリアクションをとったら面白いかと考えられるくらいに落ち着くことができるのだ。ビークールだ。
・・・完全に調教されてるなー俺。
とりあえず水面にあがるか。いくらきれいな池だといっても、所詮池だ。
いつまでも潜っていたいとは思わない。
だが、気付く。冷静だからこそ、気付いてしまった。
おかしい。
ここは子供のころから遊んでいた池だ。
さっき自分でいったとおり、ここの深さは膝くらいまでしかないはずなのだ。
いってみれば子供用のビニールプールにダイブしたようなものだ。
にもかかわらず、水面が遠い。
俺の体は完全に水中に埋もれていた。
やばい。
なにかわからないが、やばい。
何が起こっているのかさっぱり理解できないが、やばい。
さすがの俺もあせりのためか苦しくなってきた。
酸素を吸わなければ。
急いで俺は水面を目指した。
「ぶはぁ!」
俺はなんとか水面に顔を出すことができた。
とりあえず、思いっきり息を吸った。深呼吸をして心を落ち着かせる。
あれ。足がつくぞ?
あれだけ遠いと思った水面は、なんのことはない、俺の首くらいまでしかなかった。
しかし、あの池の深さが身長178cmを自称する俺(実際は175cmだ)の首まであるわけがない。
そんな深い池に子供を遊びに行かせるバカな親はいないだろう。
酸素を補給し、冷静さを取り戻した俺は辺りを見渡す。
どこを見ても木、木、木。
つまり森の中のような感じだ。
この池(?)の大きさも200mトラックよりは大きく、400mトラックよりは小さいといった感じだ。
なぜトラック換算したかというと、俺は元陸上部だからだ。
陸上部以外にはわかりずらくてすまん。
ふと、池(?)の向こうにキラキラ光るものを発見する。なんだあれ。
目を凝らすと、その発生源は少女だった。
光るものは日の光を受けた少女の銀色の髪が光り輝いているようだ。
池(?)の淵に座り、釣竿を握った少女が目を丸くしてこちらを見ている。
つーかすげー美少女だなあれ。それに銀色の髪ってなんやねん。
驚きのあまりに、ついつい関西弁が出てしまった。千葉県生まれの千葉県育ちだが。
ま、まぁ?俺のさきねぇに比べれば?ちょっと美少女ランク下がっちゃうけどね?悪いな少女よ。
そんなことを考えていると、少女とばっちり目が合った。
少女は釣竿を置くと、こちらの方向に小走りに走り出した。
ここまでお読みいただきありがとうございました。
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